しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年7月16日(木)

主張

20年版「防衛白書」

コロナ禍で軍拡を続けるのか

 防衛省が2020年版「防衛白書」を公表しました。新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる動向を詳述し、「安全保障上の課題」と位置付けたのが、大きな特徴です。中国については、コロナの世界的感染拡大で国際協調が求められている中で、東シナ海などで力を背景とした一方的な現状変更の試みを継続していると批判しています。一方で、コロナ対策で国際協力に背を向ける米国に関しては、中国抑止のためにインド太平洋地域を最重要視していることを強調し、日米同盟と自衛隊の一層の強化という軍事で対抗する旧態依然の姿勢を鮮明にしています。

中国に対抗し同盟強化

 白書は、コロナの感染拡大が世界的な社会経済活動にとどまらず、各国の軍事活動に対して影響を及ぼしており、これが長期にわたれば各国の軍事態勢にもさまざまな影響を与える可能性があると指摘しています。その上で、中国を念頭に「自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の戦略的競争をより顕在化させ得ることから、安全保障上の課題として重大な関心をもって注視していく必要がある」と述べています。

 さらに、中国公船による尖閣諸島周辺での日本領海への侵入や日本漁船への接近・追尾などに触れ、「一方的な現状変更の試みを執拗(しつよう)に継続しており、強く懸念される状況」だとしています。

 米国については「特に中国を抑止するためとして、インド太平洋地域の安全保障を最重視する姿勢を明確にしており、同地域に戦力を優先的に配分する方針を示している」と指摘します。インド太平洋地域での米軍プレゼンス強化の具体例としては、F35B戦闘機の岩国基地(山口県)配備や、同機の運用能力を強化した強襲揚陸艦「アメリカ」の佐世保基地(長崎県)母港化などを挙げました。

 日米同盟については、現行安保条約が締結60年を迎えたことを紹介しつつ、「米国との一層の関係強化は、わが国の安全保障にとってこれまで以上に重要となっている」と力説しています。その上で、集団的自衛権の行使を可能にした安保法制=戦争法の下で強化された日米同盟をさらに強化することが必要であり、自衛隊の体制・能力の強化が不可欠の前提だと述べていることは重大です。

 白書は、自衛隊が米国からF35B戦闘機を導入し、同機を運用するため「いずも」型護衛艦を改修(空母化)することをわざわざコラムで取り上げています。「島しょ防衛」を口実にした垂直離着陸機V22オスプレイや長距離巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の導入などと併せ、中国に対抗した米軍プレゼンスの強化に連動していることは明白です。

根本的な転換こそ必要

 世界的コロナ危機の下で中国が東シナ海や南シナ海などで覇権主義的行動を続けていることは国際協調の大きな障害であり、厳しく批判されなければなりません。しかし、これに軍備の増強で対抗すれば“軍事対軍事”の悪循環、際限のない軍拡に陥ります。

 コロナ危機は、社会保障や福祉切り捨てを強いる新自由主義の破綻を明らかにしました。それと表裏一体で進められてきた軍拡路線をこのまま続けていいのか。その根本的な転換が求められます。


pageup