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2020年6月30日(火)

きょうの潮流

 コロナ禍で臨時休館していた文学館や美術館、博物館が開き始めています。木々の緑が輝く梅雨の晴れ間、東京・小金井公園内にある江戸東京たてもの園で開催中の「ぬくもりと希望の空間 大銭湯展」に出かけました▼上京して下宿暮らしをした大学時代、銭湯通いは生活の一部でした。当時入浴料は200円前後。「横丁の風呂屋」の思い出を歌った「神田川」が大ヒットしたのはずっと前でしたが、モデルになった銭湯だといわれていました▼銭湯の起源は6世紀の仏教伝来で、僧侶が身を清めたり病を治癒するための寺院の温浴室が布教の一環として一般にも開放され広まったとか。江戸時代には交流と憩いの場ともなり、明治維新後、富国強兵策の下で国民の健康増進に入浴が奨励され、人口が集中する東京で銭湯は急増しました▼同園では東京・足立区で1929年から88年まで営業していた「子宝湯」の建物も保存・公開しています。神社仏閣のような壮大な構え。店先の欄間には七福神の彫刻。脱衣所と浴室は天井が高く爽快です。縁起物やおとぎ話を描いたタイル絵に、正面の壁には富士山と大海原のペンキ絵▼現在、東京の銭湯は最盛期の約2割、500軒ほどが営業しているといいます。緊急事態宣言下でも社会生活維持と公衆衛生の観点から休業要請は受けませんでした▼銭湯の歴史の一端に触れて、日本の文化や地域社会のあり方を考えたひととき。温故知新の豊かさは文化施設の空間があればこそ、との思いを強くしました。


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