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2020年6月26日(金)

リビア内戦 急増する民間犠牲者

トルコ介入にエジプト強硬姿勢

国連 当事者の停戦に努力

 リビアの内戦で対立する地域大国のトルコとエジプトが対決姿勢を示しています。トルコの軍事介入によって局面が変わったのに対し、エジプトも軍事介入を辞さない姿勢です。戦闘の激化で民間人の犠牲者が増える中、国連はリビアの当事者の停戦に努力しています。(カイロ=秋山豊)


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 リビアは2011年、民衆蜂起後に北大西洋条約機構(NATO)が軍事介入。カダフィ政権が崩壊して混乱が続き、14年以来、東西の政治勢力に分裂しています。東部ベンガジを拠点とする軍事組織「リビア国民軍(LNA)」と、首都トリポリを拠点とし、西部を支配する暫定政権側です。

 LNA側には、エジプトの他、ロシア、アラブ首長国連邦(UAE)、フランス、政権側には、トルコの他、カタール、イタリアがついています。

介入で形勢逆転

 軍事組織LNAは昨年4月、トリポリへ向け進軍を始め、攻勢をかけました。首都に危機が迫るなかで、暫定政権を支援するトルコが今年1月から派兵。これにより形勢が逆転し、暫定政権側は今月4日、トリポリ一帯の掌握を宣言。要衝シルトとジュフラ空軍基地の制圧を目指し反攻作戦を展開しています。

 これに対し、エジプトのシシ大統領は20日、シルトとジュフラの前線を「越えてはならない一線」として、トルコと暫定政権側をけん制。エジプト軍にリビアでの任務遂行の準備を命じました。これに対し、トルコ政権党の幹部は、エジプトに「力も根性もない」と一蹴しました。

 シルトは地中海沿岸の中部に位置し、油田地帯と石油輸出地域へ通じる要衝。ジュフラ空軍基地はリビア中心に位置し、トルコが支援する暫定政権側が握ればエジプトにとって脅威です。

戦闘回避は可能

 アラブメディアなどによると、今月に入ってLNAと政権側の戦闘は、シルトをめぐる攻防が焦点となっています。米当局者は、ロシアが戦闘機を送り、LNAへの支援作戦に従事していると話しています。ただロイター通信は、トルコ、ロシア両国の協議の結果次第で、シルトをめぐる新たな戦闘は回避できるとの外交筋の見方を伝えました。

 エジプトは今月6日、停戦を提案しましたが、トルコや政権側は拒否。停戦案が、LNAの首都攻勢失敗の救済策と受け取られたためです。

 国連の担当部局は10日、リビアの両陣営が停戦の話し合いに従事し始めたと報告しました。

 民間人の犠牲者は急増しています。民間調査団体エアウォーズによると12年以降少なくとも737人が死亡、うち439人がこの1年余りで死亡しました。LNA側が原因の死者は276人。最近はトルコと暫定政権側の行動がエスカレートし犠牲者が増えています。

 トルコの介入には東地中海の利権がかかわっています。トルコは昨年11月、暫定政権と海洋境界に関する協定を結びました。排他的経済水域の拡大を主張し、石油探査の開始を示唆しています。


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