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2020年6月7日(日)

主張

行き詰まるIR

「アベノカジノ」断念しかない

 新型コロナウイルス感染拡大で、世界各地でカジノに閉鎖や営業停止が広がっています。ところが安倍晋三政権は「日本の成長戦略の目玉」と位置付けるIR(カジノを中核とする統合型リゾート)計画を変更しないとしています。いつまでも「アベノカジノ」に固執するのはやめるべきです。

失敗でもやめぬ政権

 日本のカジノへの参入を画策してきた世界最大のカジノ運営企業、ラスベガス・サンズが5月中旬、日本からの撤退を表明しました。ところが菅義偉官房長官はただちに「(IRは)観光立国を目指すわが国にとっては不可欠だ」とカジノ継続を強調しました。

 内閣のIR担当である赤羽一嘉国土交通相も、各国のカジノが新型コロナに直撃されていた4月半ばの国会答弁で、来年1月から7月に誘致自治体が国に認定申請するという既定のスケジュールに変更はないと答弁しました。

 新型コロナの世界的流行の収束が見通せないなか、不要不急の経済活動の停止で、真っ先に閉鎖の対象となったのがカジノです。

 一部に再開の動きもありますが、社会的距離(ソーシャルディスタンス)をとるため、賭博機を間引いたり、入場者数を制限したりしています。閉鎖空間に、多数の客を詰め込む典型的な「3密」のカジノに、いままで通り客が呼び込める状態ではありません。過剰な賭博で、異常な高収益を上げるというカジノのスタイルがもはや成り立たなくなっています。

 ランドカジノ(地上型)からオンラインカジノ(ネット上で仮想的に開帳するカジノ)への転換も劇的にすすんでいます。

 IRは、国際会議場や展示場、ホテルや劇場など併設する巨大施設に多くの客を集め、それをカジノに誘導し、カジノの高収益をエンジンに回していくというモデルです。中核となるカジノの高収益が望めなくなったいま、失敗が確実な事業なのは明らかです。

 日本進出を狙っていた海外カジノ企業は、米国のサンズやMGMにしろ、アジアのメルコやギャラクシーにしろ、世界の三大カジノ集積地であるマカオ、ラスベガス、シンガポールのカジノを収益源としています。それが軒並み閉鎖され、ゼロ収益が続き、赤字になるなかで、各社の財務状況は急激に悪化しています。日本のIRへの投資額とされる100億ドル(約1兆800億円)もの資金の調達は容易ではなく、サンズですら撤退せざるをえなくなった事実をみるべきです。

 赤羽国交相は国会答弁で、現在カジノ誘致を目指している自治体は大阪市、横浜市、和歌山県、長崎県、東京都、名古屋市だと名指ししました。これらの自治体でも、コロナなどによって当初の計画通りには進んでいません。衰退した海外カジノ企業に地域社会の運命を委ねていいのか真剣に考え直す時です。

「健全な復興」と真逆

 「世界がいま必要としているのは『#健全な復興』だ」―世界の医療関係団体が5月末、20カ国・地域(G20)首脳にあてた公開書簡の一節です。ギャンブル依存症をはじめ社会に多大な害悪を広げるカジノは「健全な復興」とは真逆の存在です。コロナ後に大きな禍根を広げるカジノは断念すべきです。


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