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2020年4月24日(金)

感染爆発、医療崩壊をどうやって止めるか

BS―TBS「報道1930」 志位委員長 大いに語る

 日本共産党の志位和夫委員長は22日、TBSのBS番組「報道1930」に出演し新型コロナウイルス感染症対策について語りました。志位委員長の発言を紹介します。司会はキャスターの松原耕二、高畑百合子両氏。ゲストは元財務官僚の山口真由信州大学特任准教授、原真人朝日新聞編集委員、コメンテーターは国際情報誌『フォーサイト』元編集長の堤伸輔氏。


現状認識 非常に厳しい状態

 初めに感染拡大と死者数の増加が続いている現状について問われました。

 志位 感染者数については、感染経路不明の方(の比率)が非常に高いというのは、たいへんに心配な状況が続いています。それから、死者数が右肩上がりというのが現状を反映していると思います。感染者数は検査数によってだいぶ違ってきますが、お亡くなりになる方が増え続けていることは、大変厳しい状態だと思います。

マスク2枚 優先順位が違う

 安倍晋三首相が国民に布製マスクを2枚ずつ配っていることをめぐり、調達費が338億円に対し受注額は90億円で、およそ250億円が不明になっている問題が議論に。山口氏が、不明の250億円の中身は「これから、検証していかなきゃいけない」と述べました。志位氏は次のように語りました。

 志位 先日、医療関係者の方々のお話を伺う機会がありました。命がけで医療の最前線に立っている方から率直な声が聞こえてきました。「マスク2枚で心が折れた」と。

 医療現場には、N95医療用マスク、フェイスシールド、防護服が届いていない。人工呼吸器も足らない。こういう実態の時に、2枚のマスクは、不要とは言わない、必要なものであったとしても、優先順位があるだろうと。まずは医療現場にきちんと物資を、たたかう武器を提供してもらわなかったらたたかえない。その優先順位を間違えているのではないかという批判です。この問題についての国民の多くの批判も、やはりそういうことにあったのではないでしょうか。

受診抑制に苦しむ病院 「診療報酬倍増」は一部だけ

 松原氏は、日本共産党が「感染爆発、医療崩壊を止める緊急提案」を発表したことを紹介。外出自粛・休業要請と一体の補償を求め、医療現場への本格的な財政支援を提案していると紹介したうえで、新型コロナ患者の発熱外来を設け、患者を受け入れている病院の実態をVTRで紹介しました。

 VTRでは、東京都練馬区の大泉生協病院が紹介され、発熱外来を設けるなどコロナ対策で必死の奮闘を続けているが、一般患者の受診抑制で月700万円もの減収に陥っているなど深刻な実態が語られました。同病院の齋藤文洋院長は、安倍首相が「診療報酬を倍にする」と言ったが、こうした病院には「届かない」と述べました。

 志位 いま、病院に行くと感染の危険があるということで、大規模な受診抑制が起こっています。紹介されたように(患者の)4割減、5割減という病院が全国に広がっています。

 「診療報酬を倍にする」と安倍首相がおっしゃって、あたかも全部倍になったかのようですが、(VTRで)院長がおっしゃられたように、中医協(中央社会保険医療協議会)の決定をみても、重症患者を受け入れるICU(集中治療室)などの診療報酬だけを倍にしたものです。中等症の患者を受け入れる(病院の)場合には、わずかな加算しかない。一般の病院にはつかないというもので、多くの病院には届かない。重症病院に手当をつけるのはいいのですが、一部だけの支援になっている。

 しかも診療報酬は出来高払いです。コロナの患者さんを受け入れるために病室を空けて待っている病院があり、そのためにはものすごい減収になるわけですが、こういう場合には届かない。

 病院は、まず受診抑制によってただでさえ苦しいところに、コロナ患者を受け入れる病院はもっと苦しい状況になっている。

 ベッドを空けて待たないとならない。コロナ対応のお医者さん、看護師さんをつけなければならない。病室や病棟も分けなければならない。一般診療も縮小しなければならない。手術も延期することも必要になってくる。健康診断も延期になっている。ものすごい減収です。

 コロナを受け入れる病院に対して、国が本当に、ドーンと財政支援をやらないと、受け入れることもできませんし、ベッドも空かないのです。

政府の医療支援――けた違いに不足

 松原氏は、政府が緊急経済対策の中で医療関係予算を6695億円つけ、人工呼吸器の確保などをあげていると示しました。

 志位氏は、「包括支援交付金」として1490億円とあることを問われて、次のように述べました。

 志位 これはいろんなものに使うお金です。ところが「桁が違う」といいたい。

 病院がコロナの患者さん受け入れたらどれくらいお金がかかるか。杉並区では四つの基幹病院に対して、区がその減収補てんという立派なことをやっています。一つの病院あたり1億円から3億円、毎月減収となる。毎月1病院で平均2億円です。全国には、コロナ患者を受け入れる病院が約1200あります。そうしますと、2億円平均として毎月2400億円かかる。半年やりましたら1・4兆円かかる。1・4兆円といいましたら、1490億円とは桁が違う。

 松原 桁が違う。どれくらい入れるべきですか。

 志位 どれくらいかはなかなか難しいのですが、数兆円規模に財政支出を増やさないと、とても対応できない。

PCR検査の拡大急務 補正予算はゼロ

 志位 もう一つはPCR検査です。「検査体制の確保」で49億円とありますが、これは、主にPCR検査が保険適用になったために、患者さんの自己負担分の支援にあてるお金で、PCR検査センターの予算はゼロなのです。

 首相は、「PCR検査センターをつくってかかりつけのお医者さんが必要だと判断したら、直接センターに行ける、そして検査もできるようにする」と言ったのに、実はこの補正予算案の中に、PCR検査センターの予算はゼロなんです。

 松原 地元に丸投げということですか。

 志位 国としては予算がゼロ。一応、検査センターの費用は2分の1が国、地方が2分の1となっていますが、国の予算が全くついていない。

 今はともかく日本のPCR検査があまりに少ない。いま1日8000件しかやってない。首相は2万件目指すというのですが。

 ずっと発熱や咳(せき)が続いてもPCR検査を受けられない。やっと保健所がOKといっても、検査を受けられるのは5日後という状況です。

 どうしてそうなっているかというと、保健所がやっている「帰国者・接触者相談センター」にまず相談をして、そして「帰国者・接触者外来」に行く。このルートでやってきたのですが、保健所もたいへんに頑張っていますが、疲弊してなかなか進まない。「接触者外来」のほうもパンクしている。こういうルートだけではもうダメなのです。

 保健所を通さなくてもいいルートをつくろうと、私たちはずっと言ってきました。ようやく検査センターを首相がやるといったのですが、お金がついてない。

 松原 お金がついてないと(検査センターを)どうやってつくるのか。

 志位 つくるお金を国が用意しないと進みません。緊急経済対策をつくり、そして補正予算案を編成した。その後、4月17日に安倍首相が検査センターをつくると言ったわけだから、その発言を受けて、検査体制の予算をつけますというまでやらないといけないはずなのに、それが1円もついてない。

 山口 当初の補正予算は、私から見ても本当にさすがに渋いなと思いました。

 松原 渋くしているのは、何がそうさせているのか。

 山口 まず、ポリシーが決まっていないというところが大きいと思います。

  志位さんもおっしゃったとおり、本当に必要なところに出していないということはあると思います。

 松原 なぜそうなるのか。

  おそらく、この安倍政権が、まだ本当に何とたたかわないといけないかがはっきりしていない。

検査の考え方を転換するとき――大量検査を進める戦略を

 志位 検査の問題を言ったのですけど、これまで政府は検査を絞ってきたのです。クラスター(感染集団)を追うのに必要な検査をやる、検査をやりすぎると医療崩壊が起こってしまうといって絞ってきた。

 しかし、絞ってきたためにいまどうなっているか。市中感染が広がって、感染者が追えなくなって、そして院内感染が起こって、医療崩壊が始まっているわけです。

 ですから考え方を変えなくてはいけない。検査を絞るやり方から大量検査に変えなくてはいけない、そういう時期なわけです。

 それで、首相もPCR検査センターをつくると言った以上、やらなければならない。ところが、その戦略がないわけです。

 PCR検査センターには一体どのぐらいかかるのか。新宿区が用意したお金では、1カ所にだいたい月5000万円の委託費が必要だということです。さまざまな資材も必要ですし、何といってもお医者さんが輪番制で診るわけですから人件費も必要です。

 いま東京の医師会は、都内20カ所から最大47カ所までPCR検査センターをつくるといっています。20カ所としましても、1カ所月5000万円でしたら、1カ月10億円でしょう。3カ月で30億円です。これを全国で本格的につくろうと思ったら、10倍でカウントしますと3カ月でだいたい数百億円というお金がかかるわけです。

 だから、PCR検査センターで数百億円というのは戦略的に出てくる数字なわけです。本気で検査を増やそうと思ったら、数百億というお金が検査だけで必要になる。

 それから先ほど言ったように、コロナ患者の受け入れ病院をつくっていこうと、そこで半年で1・4兆円かかる。ですから、全体を考えれば、医療にうんとお金を入れなければならない局面であるにもかかわらず、肝心なところにお金をつかっていない。

  結局、何とたたかうかを知るためには、優先順位をつけることが大事だと思いますが、志位さんもおっしゃったように、PCRセンターをつくれと言っておきながら予算はつけない。布マスクのお金を全部そこに使っていたら3カ月PCRセンターができたわけです。結局、思いつきを積み上げているだけ。

雇用調整助成金に「コロナ特例」をつくる

 次に、外出自粛・休業要請と一体の補償が必要ではないかという日本共産党の提起について議論。補償がないために苦しむ現場がVTRで紹介されました。

 劇団「荒馬座」の代表は、政府のイベント自粛要請をうけ3月下旬から公演を中止。運営費用は土地の借り入れや融資の返済など月300万円にのぼり、劇団員の給料は全額払っているとし、「生活を守るということで、(給料を)100%出すと決断している」と語りました。そこで頼ったのは、雇用調整助成金でした。今月10日、大変な作業の後、休業計画書をハローワークに提出。「窓口で言われたのは、早くても2カ月以降、いまだと半年以上かかると言われた。すぐお金が入らないので無理だと思う。資金力のない企業は廃業するしかないと考えています」と窮状を語りました。番組では雇用調整助成金が支給されるまでに、どれだけの手続きを踏まなければならないかを示したフリップが示されました。

 志位 私は雇用調整助成金、いまの仕掛けでは救えないと思います。「コロナ特例」をつくる必要があると提案しています。

 まず、何といっても事前に審査の書類を提出しなければならず、これが大変なわけです。書類の審査のやり方を事前ではなくて事後審査にする。

 もう一つ、ハードルになっているのは「休業手当の支払い」とありますでしょう。つまり、まず従業員への給料を払わないといけないわけです。ところが、手持ちのお金がないわけです。

 ですから、二つハードルがあって、まず休業手当の支払いができない。それから申請書類にうんと時間がかかってしまう。その間につぶれてしまうということになる。このやり方を抜本的に改めて、申請は事後審査でいいと。それから、まずお金を渡して、そして支払えるようにするという仕組みに改めないといけない。

 松原 そうするとお金を渡せるのはどのぐらいになりますか。窓口に行って申請して。

 志位 本当に敏速に、1週間、2週間という単位でやらなくちゃいけない。

助成額も大幅拡大を――「世界で最も手厚い」というなら

 志位 もう一つ、雇用調整助成金で大きな問題がありまして、(政府が企業に助成するのは)1日最大8330円なんです。そうしますと、月20日働いている方で、20かけまして16万7000円でしょう。ここまでしか政府はお金を出さない。これでは到底、暮らせない。若干その上に企業負担が乗ったとしても、とても暮らせない水準です。

 イギリスでは、休業補償といいましたら8割出ます。労働者もフリーランスも自営業者も、収入・賃金の8割。最大2500ポンド、34万円まで出る。日本の政府は16万7000円しか出さない。半分ですよ。

 首相が自民党の役員会で「日本の支援は世界で一番手厚い」と言いましたが、イギリスの半分です。「世界で一番手厚い」というのなら、イギリス並みの支援をせめてやったらどうだといいたい。

 少なくとも賃金の8割を補償する。特別仕立ての「コロナ特例」の雇調金の制度をつくって、そこにもちろん雇用保険の積立金も使う。一般会計からもお金を入れる。そしてきちんと8割の補償をする。

 雇用保険に入っていらっしゃらないフリーランスとか、自営業者にも同じ考え方で8割補償をやる。これをやって初めてまず暮らしが安心できると思います。特別仕立ての雇調金をつくろうというのが私たちの提案です。

「持続化給付金」――三つの問題点が

 ここで西村康稔経済再生担当相と小池百合子東京都知事の会談の様子が流れ、休業要請に応じないパチンコ店などに対し、店名の公表などの措置をとるべきではないかと議論されました。

 志位氏は、パチンコ店などについてはそうした選択肢も検討されるべきだとしたうえで次のように述べました。

 志位 やはりここでもネックになっているのは補償しないということです。

 中小業者への支援として「持続化給付金」という話が出ましたが、これにはいろいろな問題があります。

 まず考え方として、休業要請に対する補償をやるという考えがない。

 それから条件が付いておりまして、売り上げが50%以上減少することが条件になっている。4割、3割減っても、お店がつぶれてしまうという深刻な打撃になります。ところが線が引かれて制度から排除されてしまう。

 困っている方々の中に線を引くというやり方には非常に大きな批判が出ています。

 それからなんといっても1回こっきり。1回こっきりの100万円、200万円では救われない。大きくいって三つの問題があります。

事業者が生き延びられる固定費・家賃への補償を急げ

 志位 東京で飲食業やスナックや居酒屋をやっている方とお会いしてお話を伺ってみますと、だいたい東京では小さなお店でも家賃などの固定費だけで月30万~40万円ぐらいという。固定費は毎月かかる。ところが収入はゼロですよ。これは大量出血をしているようなもので瀕死(ひんし)の状態だという訴えがされます。

 ですから「持続化給付金」と言うのなら、休業しているお店に対して商売が続けられるような、生き延びられるような、固定費、とくに家賃の補償がやられるべきです。

 地方自治体では、福岡市では家賃の8割、最大月50万円まで補償するとしています。北九州市も家賃の8割、月40万円まで補償すると。もう自治体は始めているわけです。

 いつまでも補償しないということでは中小企業、小規模事業者はとても生きていけませんから踏み切らなくてはいけない。

問われるポスト・コロナ――日本社会のあり方を根本から問い直す

 コメンテーターの堤氏が、「いま世界で、ポスト・コロナ、アフター・コロナの議論が起こっている」と指摘。「政府は世界で一番手厚いと言っているけど、志位さんのお話にもあったように明らかに世界の中で一番手厚いとは言えない支援や補償しかできてない」とし、将来のお金の使い方をがらりと変えるようなことが必要になってくると語りました。

 志位 まずコロナ禍のもとで人々が生活と営業をもちこたえることのできる、そういう必要な財政支出はやらなくてはいけない。

 「焼け野原」になってしまったら、そのあと経済を立て直そうとしてもできないわけです。

 それともう一つは、医療、介護、福祉、これは本当に思い切ってお金をつけないと。人々の命を救うお金です。つけるべきところにはお金をつけなくちゃいけない。

 財源は、当面はつなぎの国債で対応するしかないと思います。恒常的にかかるお金じゃないですから、今は一気にお金を使ってでも(コロナを)抑え込む。みんなの命を守る、営業を守る、暮らしを守るということをやる。

 そして抜け出した後には、今の日本社会のあり方を根本から変えていく必要がある。

 この間、富裕層や大企業に対する課税がずっと軽減されてきた。それから辺野古の基地にどんどんお金を使っている。こういうやり方は、やっぱり大本から改めていこうじゃないかと。税金の使い方、取り方、これをあらためていこうと。国民から取り立てて大企業を助けるみたいな、あるいは軍事費にどんどん使うような、こういうやり方をあらためていこうということも併せて考えていかなくてはいけない。

コロナ対策でも野党共闘を強めて

 ここで司会の松原氏が、視聴者からの質問を紹介。日本共産党が医療崩壊を防ぐために提言をしたことをうけ、こうした提言を野党共同で行うべきではないか、「野党共闘をもっと見える形にしてもらえないだろうか」と問いかけられました。

 志位 いま、努力中です。

 すべての方に10万円の給付をというのは野党が一致して要求していたものです。これは、政府・与党の決定をひっくり返して実現しました。これはやっぱり共闘の成果で、国民のみなさんの声が政治を動かした成果だと思っています。

 それから「自粛と一体に補償を」、これを感染拡大防止対策としてやらなければいけない、これはみんな一致しています。

 それから、PCR検査や医療にもっとお金を使わなければいけない。これも一致していると思います。

 それから、家賃の負担を、いろんな方法で肩代わりする。この方向も一致していると思うので、よく話し合って、共同で(補正)予算案の組み替え案を出したいと思っております。

 松原 組み替え案は、近く出される?

 志位 話し合って、一致するところでの組み替え案を出したいと思います。

 松原 ぜひ、本当に困っている方に、今すぐほしい方に届くようなお金の使い方をしていただければというふうに思います。


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