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2020年4月16日(木)

陸自訓練死は傷害致死の疑い

“8カ所脳挫傷 起こりえない”

元幹部自衛官が雑誌で指摘

 2006年11月に札幌市の陸上自衛隊真駒内駐屯地で発生した徒手格闘訓練死事件をめぐり、事故ではなく傷害致死の疑いを指摘する連載が医系雑誌に掲載されました。記事を執筆したのは、陸自北部方面隊第11後方支援連隊(現第11後方支援隊)の衛生科幹部だった照井資規・元愛知医科大学医学部非常勤講師です。


 同事件では、徒手格闘訓練中に死亡した島袋英吉1等陸士=当時(20)=の遺族が、国の安全配慮義務違反による損害賠償を求めて国を相手取り札幌地裁に提訴。国側に支払いを命じた判決が確定しています。

 照井氏は、死亡した島袋さんと同じ部隊に所属。死体解剖鑑定書、検視調書、裁判資料などを独自に分析、「陸自隊員訓練事故死への疑問」を医系業界誌『医薬経済』4月1日、同月15日両号で発表しました。

 その中で「事件は安全配慮義務違反で済むものではない。8カ所の脳挫傷など通常の訓練では起こり得ない」と指摘。傷害致死罪(刑法205条)としての真相究明を提案しています。

 照井氏は、自衛隊内での「銃剣道訓練中に面を突かれて転倒し、後頭部を体育館の床に強打したことによる」とする当時の説明が、同事件の報告書や裁判資料にある「徒手格闘訓練中」との間に「大きな乖離(かいり)がある」としています。

 その一つに挙げたのが、司法解剖鑑定書に記載された死因の急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血についてです。「陸自はいまだに遺族に対し、具体的な死因や損傷がなぜ起きたのか説明していない」と指摘。そのうえで遺族が出版した事件記録『命の雫(しずく)』に記載されている、英吉さんを治療した中村記念病院(札幌市)の医師の証言に注目、こう引用しています。

 「(CT画像は)数日前からの訓練で脳にダメージがあり、普通の脳の数倍に膨らみ、真っ黒になっている。血管が切れて、脳中に血が回っている。8カ所もの脳挫傷がある」

 新しい脳挫傷は、輪郭が明確で、CT画像では出血部分は白く映り、時間が経過した脳挫傷は輪郭があいまいになり、やや黒く映るとされています。

 照井氏は、肋骨(ろっこつ)、肝臓など体中にひろがる損傷についても当時の陸自徒手格闘訓練では防具の装着が義務付けられていたことをあげ、「防具を適切に装着していたのなら脳以外の損傷は起こり得ない。防具を装着していない状態で受傷したことは疑いの余地がない」と指摘しています。(山本眞直)


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