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2020年4月11日(土)

新型コロナ 子ら守って 「居場所」に緊急受け入れ

家庭で生きにくさ抱えて

こどもソーシャルワークセンター理事長・社会福祉士 幸重忠孝さんの報告

 新型コロナウイルス感染拡大の影響は、ぎりぎりの生活を送っている人たちを直撃しています。そのもとにいる子どもたちは、学校の休校、子ども食堂の中止も重なり、支援が届きにくくなっています。大津市にあるNPO法人こどもソーシャルワークセンター理事長で、社会福祉士の幸重(ゆきしげ)忠孝さんの報告です。(都光子)


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(写真)幸重さん

 2月27日の安倍晋三首相の全国一律休校要請に危機感をもち、3月1日から日中の居場所活動での子どもたちの緊急受け入れを決めた。

 なぜなら今の日本では、貧困や虐待など多くの子どもたちが家庭で生きにくさを抱えている。このような状況にも関わらず、春休みも含めて1カ月以上家で過ごせという国からの要請は、コロナから社会を守るためといえども、子どもの気持ちや生活状況を無視した乱暴な決定であったからだ。

 こどもソーシャルワークセンターの居場所活動は、そもそも一度に2、3人程度の受け入れだったため、すぐに緊急受け入れ体制ができた。

 また、日頃から学校や福祉と連携して活動していることから、すぐに家庭だけで過ごすことが心配な子どもたちとつながることができ、日中をこどもソーシャルワークセンターで過ごすこととなった。

 今回はそのような子どもたちやその家庭の様子を、プライバシーの配慮から再構成しながら紹介する。

性被害の危険

  「ずっと家で(オンライン)ゲームしてるよ。おかげでおとなの友だちがたくさんできた。今度おこづかいくれるっていうから家に遊びにいくねん」

 今回の休校を受けて家で過ごす子どもたちのために、オンラインで学べる教材や楽しめる文化コンテンツが無料配信された。しかし、居場所でこうつぶやいた小学生のように親が子どもをみる余裕がないと結局、暇をゲームか動画でつぶすことになる。

 今のゲームの多くがオンラインゲームのため、子どもとつながりたいおとなたち(性搾取を目的にしているおとなも多い)がこの休校を機会に暗躍している。

 今回は居場所につながったおかげで早期に対応することができたが、もしつながっていなければどうなっていただろうか。水面下でこの一律休校によって、多くの子どもたちが性被害を受けているのではないか。

 「お父さんがコロナにかかったかもしれない。ウイルスが怖くて一歩も外に出られない」

 こう話したのは電車で居場所に来ていた中学生。有名芸能人が亡くなったことから外に出られないと訴え、今は車で居場所まで送迎をしている。

 父子家庭で父親も収入が激減してイライラしているのか、子どもが嫌がるのを知って「コロナになったかもしれない」と繰り返し言ってくる。また、この子の家はネット環境がないので、家ではテレビをみるしかなく、朝から晩までコロナの報道ばかりのテレビの影響も、強いのだろう。

 居場所で楽しい時間を過ごし、不安を抱える子どもたちに「大丈夫だよ」とやさしく語りかける。不安で落ち込んでいた子どもが少しずつ元気を取り戻していく。

民間では限界

 この1カ月、子どもたちを緊急受け入れして感じたことは、コロナで家庭での生活が急変したのではなく、その前から大変な状態にあった家庭の暮らしが、この機会に坂道を転げるように転落していることだ。

 民間はスピーディーではあるができることは限られ、手が届く子どもの数もしれている。生活は待ったなし。一刻も早く国や自治体が、こうした家にも学校にも居場所がない子どもたちのために動かねば、コロナが収束しても子どもたちは取り返しのつかないことになるだろう。

 *NPO法人こどもソーシャルワークセンター 2016年から一軒家を拠点にした子ども・若者支援を展開。日中の居場所「『ほっ』とるーむ」、夜を過ごせる「トワイライトステイ」など。子ども一人ひとりにあわせた規模で安心・安全を提供。活動を支える賛助会員募集中。詳しくはhttp://cswc2016.jp/


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