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2020年4月7日(火)

主張

コロナの医療体制

抜本的強化の予算措置が要だ

 新型コロナウイルスの感染者が都市部を中心に急増する中、医療体制の抜本的強化が焦眉の課題です。現場や専門家からは、感染者の受け入れ体制がひっ迫し、機能しなくなると強い警告が出されています。しかし、安倍晋三政権の医療をめぐる対策は、危機的事態を訴える声にこたえる規模ではありません。感染者を受け入れる病床や人的体制の確保、治療に必要な器材の調達などへのまともな財政支援がありません。「医療崩壊」を招かないために政府による万全の予算措置は待ったなしです。

「危機的状況」の声次々

 医療体制整備は文字通り急を要しています。政府の新型コロナ感染症対策の専門家会議は1日の提言で、「新規感染者が急増し、クラスター感染が頻繁に報告されている現状を考えれば、爆発的感染が起こる前に医療提供体制の限度を超える負担がかかり医療現場が機能不全に陥る」と訴えました。日本医師会も同日、感染症対策に多くの医療資源を注入しつつ、他の治療も継続するという「危機的な状況に陥りつつあり」「今のうちに対策を」と強調する「医療危機的状況宣言」を発表しました。

 日本集中治療医学会の同日の理事長声明は、重症患者を救う集中治療体制の脆弱(ぜいじゃく)さへの強い危機感に満ちています。声明は、コロナ感染の死亡率がドイツ1.1%、イタリア11.7%と大きな開きがある点についてICU(集中治療室)の人口10万人あたりのベッド数がドイツは29~30床に対しイタリアは12床程度と差があると指摘し、ベッド数がイタリアの半分以下の日本(5床程度)は、このままではいっそう深刻な状況になりかねないことを訴えます。人工呼吸器など医療機器の調達を急ぐとともに、担い手となる人的体制の支えが不可欠なのは明白です。

 感染者の激増が対応する能力を超えて、医療現場を混乱させ、医療従事者を疲弊させる重大な事態を絶対に引き起こしてはなりません。医療機関は知恵を出し、工夫を重ねながら懸命の努力を続けています。それを支えるために、必要な経費は全額を国が負担し、十分支える方針を、はっきり打ち出す時です。そうしなければ病床確保や医師・看護師の配置など現場は思い切った対策がとれません。

 防護具、医療機器などを行き届くようにするのは急務です。院内感染を防ぐには、コロナ患者を専門に治療する病院と、それ以外の一般患者に対応する病院との役割を明確にすることも重要です。それが可能になるよう、それぞれに手厚い支援を実施すべきです。

 医師が必要と判断した人が迅速に検査できる体制の強化が急がれます。政府は、軽症者は宿泊施設で対応するなど方針を示しましたが、ホテル借り上げの費用負担は国の責任で行うことが求められます。コロナは症状が急変する事例が報告されており、軽症者の見守りと緊急時の対応への仕組みを十分確立することが必要です。

問われる社会保障政策

 イタリアの「医療崩壊」という事態は、社会保障切り捨て路線が国民の命を守る体制を弱体化させる現実を浮き彫りにしています。

 日本の社会保障削減政策が厳しく問われています。感染症対応で大きな役割を持つ公立・公的病院の再編統合計画を凍結・撤回することを政府は表明する時です。


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