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2020年4月2日(木)

論戦ハイライト

対策 迅速に柔軟に

コロナ苦境 大門氏が提言

参院決算委

 「自粛と補償は一体だ」―。日本共産党の大門実紀史議員は1日の参院決算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大と政府の「自粛要請」により、深刻な打撃をうける中小企業への支援と、働く人たちの雇用を守る実効性ある対策を迅速にとるよう安倍晋三首相に迫りました。

資金繰り 一刻を争う

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(写真)参院決算委員会で質問する大門実紀史議員(右)=1日

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府や自治体が出した外出の自粛やイベント中止の要請により、多くの中小企業が経営の危機に直面しています。

 中小企業の資金繰りは一刻を争う事態であり、政府系金融機関の融資は中小企業にとって命綱です。日本政策金融公庫や保証協会の窓口には相談と申込者が殺到し、職員は審査などに追われています。

 大門氏は、政府系金融機関などへの相談・申し込み・実行件数(表)をパネルで説明。3月26日時点で、相談が約22万件、申し込みが10万件。審査され実行された件数は5・5万件と申し込み数のわずか半分にとどまっています。大門氏は、申し込みから実行までのスピードアップは、借り手の中小企業にとって、生きるか死ぬかの問題だと強調しました。

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(写真)※件数は日本公庫、商工中金、保証協会の合計。相談には商工会議所などを含む経済産業省提出資料をもとに大門議員事務所が作成

 大門 さらにスピードアップするためにはどうすればいいと考えるか。

 梶山弘志経済産業相 要件の緩和、必要書類の緩和、一人でも多く、融資の申し込みを受け、決裁をしていくということを心がけているところだ。

 3月6日に財務省、経産省、金融庁は「返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること」と明記している通知を金融機関に出しています。しかし、大門氏が示したのは、非常事態にもかかわらず、融資を断られている深刻な事例でした。大門氏は通知を「知らない」「知っていても、どう対応すればよいか分からない」など、相談を受けている職員の声を紹介しました。

 大門 周知徹底していくことと、現場の人がどう対応すればいいか分かるようなマニュアルや具体的なやり方も含め、徹底するべきだ。

 麻生太郎財務相 周知の方はもう少し時間をかけてやらなくてはいけない。

 財務相は、マニュアルについては個別の審査の話で難しいと答えながらも、柔軟に対応することを基本とし、指導していきたいと述べました。

直接支援 実現努力を

 大門氏は、新型コロナによる損害を対象として中小企業に500億ユーロ(約6兆円)の給付を決定したドイツの事例を紹介。日本でも、感染拡大で深刻な影響をうける中小企業に対し損害を補填(ほてん)する直接支援をするよう迫りました。

 ドイツでは従業員5人以下(フルタイム相当)の事業者に、3カ月分の資金繰り支援として最大9000ユーロ(約110万円)を一括給付。従業員10人以下の事業者には同じく最大約180万円を支給します。ケースによっては2カ月分の追加支給もあり、文化・芸術分野のアーティストにも適用されます。

 大門 ドイツにできて日本にできないわけがない。何ができるか検討を。

 首相 大変現実的な提言をいただいたと思う。

 さらに大門氏は、自治体レベルでは独自の中小企業支援が始まり、京都では観光業への緊急助成制度ができたことを紹介しました。

 2009年度補正予算には、地域の実情に応じて活用できる「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」が1兆円規模で盛り込まれたことを指摘。コロナ対策でも事業継続、顧客・販路の回復、仕事おこしなど地域レベルの事業に活用できる「地方臨時交付金」を創設するよう求めました。

 大門 自民党の提言や全国知事会の要請にも入っており、与野党を超えた全国レベルの要望だ。総理として実現の方向で努力を。

 首相 ご提言も含めて検討していきたい。

解雇制限 要件付けよ

 大門氏は、雇用不安が世界的に広がるなか、日本でも解雇・雇い止めや内定取り消しが起きていると指摘。自動車大手6社を例(表)に「日本の大企業はリーマン・ショック時に、政府から巨額の特別融資を受けながら、大量派遣切りなど冷酷なリストラを行った」と告発しました。

 その上で、各国は企業に対し、支援と同時に解雇禁止措置をとるなど雇用を守る対策をしていると強調。大企業向けに雇用調整助成金(雇調金)の助成率を拡充し、特別融資の拡大も検討している政府に迫りました。

 大門 特別融資には解雇制限などの要件をつけるべきだ。少なくとも、政府として雇用責任を果たすよう強く要請するべきだ。

 首相 リーマン時のようなことがあってはならない。雇用を守るようしっかり要請したい。

 大門氏は、雇用を守るのに大きな役割を果たしている雇調金について、自民党が助成率を10分の9に引き上げる提言案をまとめたことに触れ、「そこまで言うなら、いっそのこと10分の10にすべきだ」と強調。迅速に支給するため、受け付け体制の強化と手続きの簡素化を求めました。

 さらに、雇調金を活用しても企業には一定の負担が生じるなど課題が残ると指摘。イギリスは、フリーランスや個人事業主を含め「誰ひとり取り残さない」立場で働く人への直接給付を決定したとして、日本でも検討するよう求めました。

 大門 事態がさらに悪化すれば、フリーランスも含め迅速な所得補償の仕組みが必要になる。イギリス方式の研究、検討をすべきだ。

 首相 各国の対策を研究したい。

 大門氏は「イギリスの施策は自粛と補償を一体で捉えたものだ。その原則をよく踏まえて対策を打ってほしい」と強調しました。

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(写真)『週刊ダイヤモンド』2009年5月16日号、『ZAITEN』09年5月号の記事をもとに大門議員事務所作成


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