日本共産党

2004年1月6日(火)「しんぶん赤旗」

強大な党づくり、参院選の目標達成へ――年初めからダッシュしよう

2004年党旗びらき 志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が五日の「二〇〇四年党旗びらき」でおこなったあいさつ(大要)は次の通りです。

 二〇〇四年、明けましておめでとうございます。CS通信をご覧の全国のみなさんにも、年頭にあたって、心からのごあいさつを申し上げます。

激動のときこそ、情勢を深いところで動かす矛盾をつかんで、たたかうことが大切

 私たちは今年の新春を、党綱領改定を任務とする歴史的党大会を間近にひかえて迎えました。半年後の参議院選挙にむけては、すでに各党とのしのぎを削る激しいたたかいがはじまっています。党大会を成功させ、きたるべき参議院選挙では、比例代表選挙での五議席の絶対確保、七つの現職区での必勝という目標を達成するために、全力をあげたいと思います。

 昨年をふりかえりますと、内外ともに文字どおり激動の一年でした。世界では、イラクをめぐって、戦争の流れと平和の流れが、激しくぶつかりあいました。日本では、自民党政治が危機におちいるなかで、もう一つの保守政党をつくろうという動きが急激に表面化し、「政権選択選挙」のキャンペーンという複雑で困難な条件のもとで、総選挙でわが党が後退するという事態がありました。

 私は、こういう激動のときこそ、情勢を深いところでつかむ――情勢を深いところで動かしている矛盾はどこにあるかをしっかりつかんで、社会進歩を促進する党としてたたかう、このことが大切だと思います。大会で審議・決定される綱領改定案は、そのたしかな立脚点を私たちに与えています。

戦争か平和か――二つの流れのぶつかりあいが世界を動かす根底に

 まず私たちが、世界に働きかける立脚点はどこにあるでしょうか。綱領改定案は、二十一世紀の世界のあり方として、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われている」とのべています。この立脚点にたって、昨年一年間の世界をとらえるなら、この二つの流れのぶつかりあいこそ、世界の動きの根底にあること、そしてこの二つの流れのどちらに未来があるかが、明りょうになってきます。

アメリカは、イラクをめぐって三つの重大な敗北と失敗をきっした

 昨年の一年間、アメリカは強大無比な軍事力をテコにして、一国覇権主義の横暴のかぎりをつくしました。しかし一年間をふりかえってみますと、アメリカは、イラクをめぐって三つの重大な敗北と失敗をきっしたということが、はっきり見えてきます。

 その第一は、イラク戦争に突入するにあたって、国連の支持をついに得られなかったことです。米国は安保理を舞台にした、半年間にわたる外交的なたたかいで圧力をかけつづけましたが、フランス、ロシア、中国など常任理事国に拒否され、非常任理事国の多数にも拒否され、戦争を容認する決議のとりつけに失敗したまま、先制攻撃の侵略戦争に乗り出しました。これが最初の大失敗でした。

 第二は、戦争でフセイン政権が崩壊した後も、国際社会――国連はいまに至るもこの戦争を追認していないということであります。わが党はフセイン政権崩壊という事態を受けて、「国際社会がこの戦争を追認しないことが大切だ」という、常任幹部会の声明を発表しましたけれども、その後も、国際社会――国連は、ただの一度もこの戦争を正当なものと追認してこなかった。これはたいへん重要な意味を持つものであります。ブッシュ政権は、「多少の外交的失敗はあっても、軍事的勝利さえかちとれば国際社会はついてくる」――「勝てば官軍」になると、たかをくくっていました。ところが、アメリカの戦争は追認どころか、戦争の「大義」とされた「大量破壊兵器」をめぐって、国の内外から追及されることになった。追認ではなく、待っていたのは追及でした。昨年九月に開かれた国連総会は、アナン事務総長が、米国の先制攻撃戦略を、「国連憲章の原則への根本的挑戦」ときびしく批判したことをはじめ、無法な戦争への批判が噴出した総会となりました。

一国の力で戦争に勝てても、不正義の戦争を遂行した一国の力で平和はつくれない

 そして第三は、イラクへの軍事占領支配が泥沼化を深め、ゆきづまりと深刻な困難に突き当たっていることです。その根本は国連中心の枠組みでの復興支援という国際社会の多数の声に背を向けて、米英軍が不法な占領支配を続けていることにあります。この姿勢が国際的にも孤立を深め、イラク国民からの厳しい抵抗に直面しているのであります。これは、一国の力で戦争に勝てても、不正義の戦争を遂行したその一国の力では平和はつくれないことをしめすものであります。

 アメリカのこれらの三つの敗北と失敗は、アメリカがどんなに卓越した軍事力を持ち、それをテコに自らが頂点に君臨する「一極世界」をつくろうとしても、二十一世紀の世界はアメリカの思い通りには、けっしてならないことを証明するものであります。

平和秩序もとめる各国民衆のたたかいこそ、世界を深いところで動かす力

 ここで働いている力、世界を深いところで動かしている力は、なんでしょうか。私が最近、注目して読んだ論文に、クリントン政権で国務次官補をつとめたルービン氏が書いた「米外交の破綻(はたん)と道徳的権限の崩壊」と題する論文があります。この論文では、ブッシュ政権が「外交的大失態」をおかした、そしてアメリカの「道徳的権限が失墜」したと酷評しています。

米国の「外交的大失態」の根底には、各国民衆の声とたたかいがあった

 興味深いのは、アメリカがなぜ「大失態」をこうむったかについてのルービン氏のつぎの分析です。「これは国連というシステムが機能した結果だった。安保理の非常任理事国は、自らの地域の声を代弁するような行動をとった」

 イラク戦争にいたる国連安保理を舞台にした攻防では、いわゆる「中間派」とよばれた非常任理事国の動向が注目されました。アメリカは、ただの一国も、その支持をとりつけられませんでした。その理由についてルービン氏は、“なぜアメリカがこんな状況に追いこまれたのか”となげきつつ、こういっています。「アンゴラ、カメルーン、ギニアは、アフリカ大陸でのイラク戦争への全般的反対を映し出す行動をとった。チリやメキシコの行動も、ラテンアメリカでの反戦ムードを反映していた」。ルービン氏はふれていませんが、パキスタンが戦争反対でふみとどまったことも、イスラム世界の平和の声を反映するものでした。全世界に昨年、澎湃(ほうはい)として起こった平和を願う各国民衆の声とたたかいが、国連を機能させ、アメリカを「外交的大失態」に追いこんだ。このことを、米国支配層の中枢にいる人物も認めたことは、たいへん興味深いものがあるではありませんか。

 こうして、昨年をふりかえるならば、国連憲章にもとづく平和秩序をもとめる諸国民のたたかいこそ、世界を深いところで動かす力であることが、はっきり見えてきます。日本共産党が、昨年来果たしてきた役割――昨年も、大きな発展をみせた野党外交でも、国内の全国でとりくんだ平和をもとめるたたかいにおいても、果たしてきた役割は、世界のこの未来ある流れに合流し、促進するものとして、重要な意義を持つものであります。

憲法を破壊するだけでなく、世界の平和の流れへの挑戦――イラク派兵を許すな

 そして強調したいのは、アメリカの三つの敗北と失敗といいましたが、それは同時に、アメリカに無条件に追随してきた小泉政権の敗北と失敗でもあるということであります。この内閣は、そのことへの自覚も反省もなく、イラクへの自衛隊派兵のくわだてをすすめていますが、これは、日本国憲法を破壊するだけではなく、世界の平和の流れに逆らうものであり、無法な戦争と占領に反対する各国民衆の声に逆らうものであるということを、きびしく批判したいと思います。

 このくわだてに正面から反対するたたかいが広がっておりますが、このたたかいには、大きな大義があります。日本列島のすみずみから、この新年、「派兵やめよ」「憲法守れ」――このたたかいを大きく広げ、無法な派兵計画を中止、撤回させるために力をつくそうではありませんか。(拍手)

日本でのたたかいの立脚点――二つの悪政の根源をただす民主主義的改革

 さてそれでは、この日本で私たちがたたかう立脚点はどこにあるでしょうか。いうまでもなく綱領路線の言葉でいえば、「異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破」、二つの悪政の根源をただす民主主義的改革をすすめることにあります。

三年目の小泉内閣――国民は最悪の自民党内閣であることを見抜きつつある

 日本の支配勢力というのは、その支配体制を延命させるために、さまざまな手段を使ってきましたし、いままた使っています。しかし私が、ここで強調したいのは、古い自民党政治の枠組みの中で、その担い手をかえたり、担い手を再編するなど、どんな手段を使っても、この二つの悪政の根源と、国民多数の利益との矛盾を解決することはけっしてできないということであります。

 「小泉政治」も、危機におちいった自民党の支配体制を延命させるための一つの手段でした。「自民党をぶっ壊す」と叫んだ首相を、現状の改革をはかる未来ある流れであるかのように描く偽りが広くばらまかれ、多くの国民がそれに期待を寄せました。しかし、三年目に入ったこの政権は、その正体をすっかりむきだしにしています。多くの国民は、この政権が、従来の自民党内閣と何も変わるところがないこと、むしろ最悪の自民党内閣であるというその本質を、見抜きつつあります。

国民に巨額負担増、無駄と浪費は温存――このどこに「改革」があるか

 この内閣は、「痛みに耐えれば未来がある」といってきましたが、痛みに耐えたらその先には、さらに大きな痛みしかないということが、いまや明りょうとなりました。昨年末、政府・与党が決めた来年度予算案をはじめとする一連の経済政策は、国民には際限のない連続負担増を強いるものとなりました。小泉内閣のもとで、すでに四兆円を超える国民負担増が決定・強行されつつありますが、それにくわえて、こんご三年間で年間三兆円もの国民負担増を押しつける予算案が決定されました。合計七兆円です。

 さらに、二・五兆円の庶民増税となる定率減税の廃止、そして自民・公明の合意文書では、「二〇〇七年度をめどに、消費税を含む抜本的税制改革を実現する」と、まさにとめどもない負担増をつぎつぎに押しつけようとしています。

 それでは、この内閣が、「歳出の無駄を削ることが使命だ」といってきた方はどうでしょう。その最大の「看板」の一つだった「道路公団改革」の政府案は、浪費と無駄の温存こそがこの内閣の「使命」だということを証明するものとなりました。九千三百四十二キロの高速道路計画はすべてつくり続ける。残りの二千キロは、ほとんどが赤字路線なのに十六兆円ものお金をつぎこんでつくり続ける。浪費の結果つくられた四十兆円の借金は、国民につけまわしする。さすがにこの政府案については、マスコミもいっせいに「惨めな挫折」などと書きました。

 国民には巨額の負担増、無駄と浪費の構造は温存、このどこに「改革」と呼べるものがあるでしょうか。

自民党の危機を救うどころか、危機を深めただけ

 小泉内閣は、その正体をごまかすためにたくさんの言葉をばらまきました。ある論者は「単純反復絶叫型」と、なかなか言い得て妙な批評をしました。しかし、どんな言葉を「絶叫」し「反復」してばらまこうと、自民党政治と国民との矛盾を解決することはできなかった。自民党政治の危機を救うどころか、ますます危機を深めただけというのが、小泉政権の現在の姿であります。

 日本共産党は、三年前にこの政権が発足したそのときから、新しい言葉をまとった古い危険な政治の本質をきびしく批判しつづけてきた党です。自民党政治を根本から変える、本当の改革の立脚点と方針を持つ党として、小泉自公政権による平和と暮らしを破壊する悪政と正面から対決して奮闘したいと思います。

財界主導の保守「二大政党制づくり」――国民との矛盾はいよいよ広がる

 一昨年から昨年にかけて、自民党政治の危機が深まるなかで、財界が主導して、保守「二大政党制づくり」の動きがすすめられました。この動きは、日本の政界に重大な逆流をつくりだしました。民主党が、この動きにすっぽりとのって、消費税増税と憲法改定で自民党と同じ流れに合流するという、政治地図の大きな変化がつくられました。

政治支配の「成果」を自画自賛する日本経団連

 選挙後、財界の動きをみますと、その「成果」を勝ち誇っています。日本経団連の機関誌『経済トレンド』の新年号を読みますと、奥田会長以下、日本経団連の首脳陣の座談会が掲載されていますが、その席で、日本経団連副会長で政治・企業委員長の宮原賢次氏はこういっています。「今回の総選挙では、マニフェストが出る前に日本経団連では『優先政策事項』を発表し、それからマニフェスト、政権公約が出てきたわけです。そういった意味では日本経団連の取り組みが政策本位の選挙に大きな影響を及ぼした」。こう語っています。

 つまり、日本経団連が政治献金あっせんの指針となる「優先政策事項」を出したのが九月二十五日、それをうけて十月五日に民主党が、十月十日に自民党が「政権公約」で、それぞれ消費税増税と憲法改定を打ち出した。財界の提言が、自民・民主両党の「政権公約」に「大きな影響を及ぼした」と、財界の一声でまさに両党を従わせたのだという自画自賛をしているわけであります。

財界への忠誠を競い合い、一体化をすすめる姿が

 同じ『経済トレンド』を見ますと、自民党の小泉首相、民主党の菅代表がそろって「特別寄稿」を寄せています。そこで小泉首相は、「憲法改正と教育基本法の改正」をあらためて誓っています。憲法問題にかんしては、憲法改定のための国民投票法案を今国会にも上程、成立させる、これを議員立法ですすめる動きが、まずその第一歩としてはじまりつつありますが、これは絶対に許すわけにはいかない動きであります。

 他方、菅代表は、日本経団連が各党のマニフェストを比較し評価したことを「従来にはない積極的な行動」「日本の民主主義の大きな進歩」ともちあげて、民主党のマニフェストには、「外交防衛政策、税制改革、産業政策など踏み込みが不十分な部分があったと思います。今後一層の努力を重ねていきます」と財界にたいして反省の弁をのべ、「(財界からの)資金提供があれば、シンクタンクの設立運営資金に充てたい」と献金の要請をしました。ここには財界への忠誠を競い合い、一体化をすすめる姿があります。

いま切り捨てられようとしているのは、国民多数の民意

 私は、これを読んで、財界による政界支配の動きはここまできているのかと、あらためて痛感しましたが、この動きによってここまで行き詰まった政治と国民との矛盾を解決できるでしょうか。悪政の根源の一つである財界・大企業と文字どおり一体になる方向にすすむならば、私は、大局的にみれば、国民との矛盾はますます広がるばかりだと思います。

 いま多くの心ある論者の中から、「二大政党制では少数意見が切り捨てられる」という憂慮の声が起こっています。もっともな声だと思います。しかし、私は切り捨てられるのは少数の声だけではない、憲法改定でも、消費税増税でも、いま切り捨てられようとしているのは国民の多数の声なのであるということをいいたいし、私たち日本共産党はこの多数の声にたって、大いに力をつくして奮闘したいと思うのであります。(拍手)

同じ枠内で手段をろうしても、二つの悪政の根源と国民との矛盾は解決できない

 「小泉政治」は三年を経過してすたれつつあります。それに代わって保守「二大政党制」づくりの動きが大掛かりにつくられておりますが、私は、同じ枠組みの中で担い手をかえる、組み合わせをかえる、あれこれのどんな手段をろうしても、「アメリカいいなり」と「財界が主役」という二つの悪政の根源と、日本の大地に根を張って暮らしている国民の多数との矛盾はけっして解決することはできないと思います。

 それを解決する道は、わが党が主張している日本の民主的改革の道以外にはない。この立脚点に確信を持ってゆるぎなくたち、情勢を前向きに打開するためにともに力を合わせ、奮闘しようではありませんか。(拍手)

歴史的な党大会は目前――参院選の目標達成へ年初めから奮闘しよう

 歴史的な党大会は目前です。すべての党員が、党綱領改定案を練り上げる歴史的な仕事に参加しましょう。参議院選挙での目標を必ず達成するために年初めから大いにダッシュしましょう。どんな激動のもとでも前進できる強く大きな党づくりに新たな意気込みでとりくみましょう。

 今年が、日本国民とわが党にとって、そしてみなさんの仕事と健康にとって、よい年となることを心から願って、年頭のあいさつといたします。ともに頑張りましょう。(拍手)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp