日本共産党

2003年11月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

都立の新大学構想

強権的な大学リストラ許すな


 首都東京で一万人近い学生・教職員を擁する都立の四大学(都立大学、科学技術大学、保健科学大学、短期大学)が、石原都政の強権的な介入によって大学の存廃にかかわる重大事態に直面しています。

“寝耳に水”の計画

 石原都知事が、それまで都立の四大学と都当局が合意していた「大学改革大綱」を一方的に破棄し、四大学を廃止して独立行政法人の「新しい大学をつくる」という構想を八月一日に突如発表しました。大学にとっては“寝耳に水”です。

 しかも都当局は、大学からの意見を聞かずに構想の賛同者だけで秘密裏に具体化をすすめ、個々の教員にはこの検討に従う「同意書」の提出を求めるなど、問答無用のやり方で構想を押しつけようとしています。

 構想の内容は、人文、経済、法、理、工の各学部や短大を廃止して人文科学など基礎的分野の教員を大幅に削減し、「都市教養学部」など学問的裏付けの不明りょうな学部に再編することや、事実上すべての教員に対して身分不安定な任期制による雇用を強要する人事案などです。

 手法の点でも内容の点でもあまりに強権的な大学リストラであり、大学の自主性を真っ向から踏みにじる前代未聞の暴挙です。こんなめちゃくちゃな「改革」を許せば都立の大学がつみあげてきた教育研究の成果は台なしです。全国の大学改革にも深刻な悪影響を及ぼしかねません。

 問題なのは、都当局が「大学の改廃や設置は設置者の権限」として設置者権限を乱用し、強権的な押しつけを合理化していることです。教育研究に直接責任をもつ大学の意見を無視してつくった構想を押しつけるのでは、都民や学生の願いにこたえる改革になるはずがありません。

 公立大学の法人化を法制上可能にした地方独立行政法人法の国会付帯決議でも、「憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性・自律性を最大限発揮しうるための措置を講ずる」ことを地方自治体や政府に求めています。石原知事のやり方はこれに反するものです。

 全国の七十六の公立大学を会員とする公立大学協会は、十月二日の声明で「設置自治体が法人化を選択する場合、公立大学と十分な協議を行い、新たな協力関係を築いていくこと」を強く要望しています。石原都知事は、この要望を正面からうけとめ、都立の大学側との新たな協力関係を築くようにすべきです。

 大学内外から、石原都知事の非民主的、強権的な大学介入に抗議する声が、わきおこっています。都立大学の学生自治会のアンケートには、「もっと学生にとって良い改革にしてほしい」「みんなが納得する改革となってほしい」などの声がよせられ、学生の86・5%が「今回の改革案に反対」と回答しています。

 都立大OBや市民による「都立の大学を考える都民の会」が発足し、全国の大学の教員有志や教職員組合からは、都立の大学の自主性を守るよう求める声があがっています。

自主性守る改革を

 いま多くの公立大学が法人化を検討している中で、東京だけでなく横浜市でも中田市長のもとで類似の事態がおこり、これに対して「横浜市立大学をまもれ」の運動が大学内外でひろがっています。

 こうした運動がさらにひろがり、設置者権限の乱用に反対して公立大学の自主性をまもり国民のための大学改革をすすめる共同が、全国で大きく発展することが期待されます。


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