日本共産党

2003年11月10日(月)「しんぶん赤旗」

占領撤退し平和共存を

ジュネーブ合意 調印へ

パレスチナとイスラエルの民間人


 【カイロ9日小泉大介】パレスチナ情勢が混迷を続けるなか、イスラエルとパレスチナ双方の非政府・民間レベルの和平イニシアチブが注目されています。スイス政府が仲介したことから「ジュネーブ合意」と呼ばれる和平案は十二月初旬にジュネーブで調印式典が開かれます。これとほぼ同様の内容の「人民の声」署名にはイスラエル、パレスチナ双方で十六万人が署名しています。

アナン国連総長も歓迎

 ジュネーブ合意は、イスラエルのバラク前労働党政権のヨシ・ベイリン法相と、パレスチナのアベドラボ前自治政府国務相を中心に双方の政治家や文化・知識人らが二年以上の協議を通じてまとめ、十月半ばに合意しました。

米にも圧力

 国連、欧州連合(EU)、米国、ロシアが提案したロードマップ(行程表)が行き詰まるなか、EUもジュネーブ合意を暗黙に支持しているといわれ、シャロン・イスラエル政権を支持する米国にも圧力になるものとみられています。

 七日にエルサレムでベイリン氏とともに記者会見したアベドラボ氏は「われわれはイスラエル・パレスチナ両政府と各国の政府にたいし、(和平のための)公式な交渉を始めるようメッセージを送っているのだ」と合意の意義を強調しました。

 ロードマップは二〇〇五年のパレスチナ国家樹立とイスラエルとの共存にむけた道のりに関する取り決めで、パレスチナ国家の具体像についての言及はありません。これに対し、ジュネーブ合意は、パレスチナ国家の領土、ユダヤ人入植地、エルサレムの帰属、パレスチナ難民の帰還について具体的な内容を盛り込んでいます。また、合意の履行を監視し、援助・管理するための、米ロ、EU、国連で構成するグループが設置され、「特別代表」の権限の下に「多国籍軍」が置かれます。同軍はイスラエルが撤退したパレスチナ領土に一定期間展開されます。

 合意はあくまで非政府レベルのもので、両政府を拘束するものではありません。アラファト・パレスチナ自治政府議長は個人的な賛意を示していますが、イスラエルのシャロン首相は「仮想合意だ」「イスラエルの利益と相いれない」と無視する構えです。

署名は16万人

 しかし、今回の合意をうけ国連のアナン事務総長は五日、「現在の行き詰まりを打開し、和平への国民的支持をつくりだすための勇気ある試みであり称賛に値する」と歓迎。パウエル米国務長官は合意をベイリン、アベドラボ両氏に「イスラエルとパレスチナ双方が、交渉による解決という希望を持ち続けるための重要な試みだ」とのメッセージを送りました。ただ、駐イスラエル米大使館は米政府の公式支持ではないとしています。

 「人民の声」署名運動はイスラエル情報機関シン・ベトのアヤロン前長官とパレスチナのアルクッズ大学のヌセイベ学長の呼びかけでこの六月に始まったもので、九月初旬に集まった七万人の署名が、現在、十六万に達し、賛同者の輪が急速に広がっています。


ジュネーブ合意主な提案内容

 ジュネーブ合意は問題解決の焦点となっている問題で次のように提案しています。

 基本理念 イスラエルとパレスチナ双方は相互の国家を認め、対立と紛争の歴史に終止符をうち、歴史的和解を達成し平和的に共存する。

 パレスチナ国家の領土 一九六七年の第三次中東戦争でイスラエルが占領した地域からの完全撤退を求めた国連安保理決議二四二、三三八にもとづき、ガザ地区のすべてと、ヨルダン川西岸のほぼすべて(報道によれば98%とも)とする。西岸でイスラエルが併合する部分は同等の面積のイスラエル領土と交換する。

 入植地 イスラエルは、パレスチナ領土のユダヤ人入植地を領土外に移す責任を有する。

 エルサレムの地位と帰属 イスラエル、パレスチナ両国家の首都とする。東エルサレムのアラブ人居住区はパレスチナの主権、同ユダヤ人居住区はイスラエルの主権に。旧市街のイスラム教聖地「ハラム・アッシャリーフ」(神殿の丘)の主権はパレスチナに、隣接するユダヤ教の聖地「嘆きの壁」の主権はイスラエルに。

 パレスチナ難民 難民の帰還を求めた国連総会決議一九四などを解決の基本におく。パレスチナ難民は失った財産の補償をうける権利を有する。難民は永住先を、将来のパレスチナ国家、イスラエル、現在居住する国などから選択する。ただし、イスラエル領土への帰還者数は限定される(ベイリン氏は、難民の帰還権を保障したものではないと言明)。


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