日本共産党

2003年11月5日(水)「しんぶん赤旗」

イラク ヘリ撃墜後、泥沼化さらに

米軍への攻撃、要人暗殺相次ぐ


 【カイロ4日小泉大介】米軍ヘリが撃墜され兵士三十六人が死傷した二日以降、イラク全土で米軍に対する爆弾攻撃やテロ、イラク要人の暗殺が相次ぎ、混乱はますます深刻化しています。

 四日には首都バグダッドで路上に仕掛けられた爆弾が爆発し、米陸軍第一機甲師団の兵士一人が死亡し、二人が負傷。これで五月一日の「戦闘終結宣言」以降の米兵死者は二百四十一人(うち攻撃による死者は百三十九人)に達しました。

 バグダッドでは三日夜、米占領当局が拠点を構えるチグリス川西岸で大きな爆発が少なくとも三回発生。占領当局への迫撃砲攻撃とみられ、うち一発は米軍関係施設に着弾しました。

 北中部ティクリットでは三日、米軍第四歩兵師団の部隊が爆弾攻撃をうけて兵士一人が死亡、一人が負傷。北部モスルでは三日夜から四日未明にかけ、警察署に数発のロケット弾が打ち込まれました。

 イスラム教シーア派の聖地カルバラでは三日、巡礼者が宿泊するホテル近くに仕掛けられた爆弾が爆発し、少なくとも三人が死亡しました。バグダッド北方のバクバでも、路上で爆弾が爆発しイラク人一人が死亡、七人が負傷しました。

 ナジャフでは三日、旧フセイン体制時代の与党バース党関係者を訴追する委員会の判事が武装勢力によって誘拐された後、射殺されました。二日夜には、バグダッド西部カルハ地区の地区評議会議長が射殺されました。

 北部キルクークでは二日夜、迫撃砲攻撃でイラク人二人が死亡、六人が負傷。バグダッド西方のファルジャでは同日夜、米軍と武装勢力との交戦に巻き込まれた十一歳の少年が死亡しました。ファルジャでは同日、旧イラク軍が残した兵器を解体していた米民間人の乗った車が爆発し、三人が負傷しました。

 二日は米軍によるイラク人攻撃も頻発し、目撃者の話では、バグダッド北方のバラドで米軍が武装勢力が乗っているとしてトラックに銃撃を加え、六人が死亡しました。


解説

米軍主導占領体制の破たん鮮明に

 不法な対イラク開戦後単独の攻撃としては最大の米兵死者を出した二日の大型輸送ヘリ撃墜事件に続くイラク情勢の混乱は、米軍主導のイラク占領体制がイラク国民の共感も得られず、破たんをきたしつつあることを鮮明にしています。

 「主要戦闘終結」宣言(五月一日)直後のブッシュ政権の“自信の高揚”はもはや事実の前に通用せず、「イラクは危険な場所だ」と繰り返さざるを得なくなっています(十月二十八日のブッシュ大統領の記者会見)。

 ブッシュ氏は七月には、「イラク占領米軍は武装抵抗集団に対処することができる」と語っていました。今や占領当局の責任者ブレマー文民行政官でさえ「事態は悪化の一途だ。即製の爆発装置がより巧妙に連合軍に対して使用されている」と嘆く状況です(二日CNNテレビ)。地上でも空中でも攻撃され、占領当局の中枢も例外ではありません。

 米軍が攻撃実行者を特定できず、不明なままイラク市民を強制捜査し、死に至らしめるケースが続発。ロイター通信は、ティクリットのヘリ撃墜現場で「ラマダン(断食月)の初めからこんなプレゼントがあるなんて…」と喜ぶ市民の姿を伝えています。

 米国内でも、ブッシュ政権のイラク政策不支持が過半数を突破。シンクタンク「米国進歩センター」(CAP)スポークスマンは「政権側の説明と実際に進行している事実との食い違いで、政権への信頼性のギャップが拡大している」と指摘。政策の転換を求める声が強まっています。 (居波保夫記者)


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