日本共産党

2003年10月9日(木)「しんぶん赤旗」

自民党政治を大もとからきりかえ、「国民が主人公」の日本改革をすすめます

総選挙にのぞむ日本共産党の政策

2003年10月8日 日本共産党中央委員会


 日本共産党中央委員会が八日、発表した「自民党政治を大もとからきりかえ、『国民が主人公』の日本改革をすすめます――総選挙にのぞむ日本共産党の政策――」(全文)を紹介します。

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各分野の政策
特集 21世紀の日本 国民のくらし 日本共産党の提案


目次

【第1部】 日本改革の提案――日本共産党はこういう日本をめざします

<1>日本経済の民主的改革――大企業応援でなく、国民のくらし応援の政治を

(1)社会保障とくらしをささえるための財政と税制の改革
 ―― 「歳出改革」――「逆立ち」財政をあらためる
 ―― 「歳入改革」――「所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担」の経済民主主義をつらぬく

(2)国民のくらしと権利をまもる“ルールある経済社会”をつくる
 ―― 労働者の雇用と労働条件のために
 ―― 金融制度は公共的責任を優先に
 ―― 中小企業の経営の発展のために
 ―― 人間と環境の共生のために

(3)経済までアメリカに指図される現状から抜け出す

<2>外交・安全保障の改革――「アメリカいいなり」政治を断ち切り、ほんとうの独立・平和・非同盟の国へ

(1)イラク派兵に反対し、「海外派兵国家」の仕組みづくりをやめさせる

(2)国民の利益と世界の公理にかなった自主外交に転換する

(3)「米軍基地国家」の現状をあらためる

(4)日米軍事同盟をなくし、ほんとうに独立した自主・平和の日本へ

【第2部】 2つの悪政にストップを ―― 消費税大増税・憲法改悪の計画をくいとめるよう、力をつくします

消費税の大増税は国民の新たな苦難の道

―― 消費税大増税は、庶民のくらし、中小業者の営業、景気と経済を破壊する
―― “社会保障の財源”どころか“大企業減税の財源”
―― 消費税大増税の計画に反対する

憲法改悪に反対し、現行憲法をまもる

【第3部】 当面の重点政策

<1>社会保障を予算の主役にすえ、年金・医療・介護など、国民が安心できる制度を確立する

(1)年金大改悪に反対し、3つの改革で将来に安心がもてる年金制度をつくる

第1の改革――基礎年金への国庫負担を、現行の3分の1からただちに2分の1に引き上げる。その財源は、公共事業費の削減、道路特定財源などの一般財源化、軍事費の削減など歳出の見直しによってまかなう。
第2の改革――リストラの横暴をおさえ、雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手を増やす。
第3の改革――175兆円にものぼる巨額の年金積立金を計画的に活用する
さらに将来的には、基礎年金部分を発展させて「最低保障年金制度」を創設する。

(2)3割負担などの医療改悪を元にもどし、国民の命と健康をまもる

―― 減らし続けた医療費に占める国庫負担の割合を計画的に元にもどす。
―― 世界一高い薬価や高額医療機器が医療費を押し上げている仕組みにメスをいれる。
―― 予防・公衆衛生や福祉施策に本腰をいれ、国民の健康づくりを推進する。

(3)だれもが安心して利用できる介護保険制度に改善する

―― 保険料、利用料の免除・軽減制度を国の制度として確立する。
―― 介護給付費への国庫負担を現在の4分の1から2分の1に引き上げる。
―― 特養ホームを計画的に増設し、待機者の解消をはかる。
―― 短期入所(ショートステイ)の緊急用ベッドの確保など、高齢者が地域で安心してくらせる条件を整備する。

(4)福祉を拡充し、だれもが安心して過ごせる地域社会をつくる

(5)社会保障のための財源(その1) ―― 「逆立ち」財政をあらためる歳出改革

―― 第1に、90年代に50兆円にまで膨張した公共事業を段階的に半減させる
―― 第2は、5兆円にまで膨張した軍事費を「聖域」にせず大幅軍縮に転換させる

(6)社会保障のための財源(その2) ―― “所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担”という経済民主主義の大原則に立った歳入改革

<2>公共事業の大改革をはかる――予算規模は25兆円、内容は国民生活優先

(1)必要性のないダム、空港、港湾などの公共事業にメスを入れる

(2)新手のムダ――「都市再生」事業にストップをかける

(3) 道路特定財源などを一般財源化し、ムダな公共事業でなく社会保障などくらしのために活用する

(4)道路公団改革――「民営化」でなく、無駄な高速道路の建設中止、債務の計画的返済、組織のスリム化をすすめる

(1)高速道路整備計画を廃止し、新たな高速道路建設は凍結・見直す
(2)債務負担を計画的に返済し、料金の段階的引き下げ、将来の無料化にむかう
(3)道路4公団は、「天下り」を禁止し、ファミリー企業を廃止し、国民の管理・監視のもとで債務返済と維持・管理を運営する公共企業体として再生させる

(5)「生活・福祉・防災・環境」重視の公共事業をすすめる

<3>国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」への前進をはかる

(1)労働者の雇用と労働条件のために

(1)「安定した雇用を増やし、雇用危機を打開するための4つの緊急提案」を実行す る

―― サービス残業・長時間労働をなくして、新しい雇用を増やす
―― 未来をになう若者に仕事を。政府と大企業の責任で若者の雇用拡大を
―― 福祉、医療、防災、教育など国民のくらしに必要な分野での人手不足を解消する
―― 国が、自治体を財政的に支援し、地域での雇用対策をすすめる

(2)乱暴なリストラを抑え、雇用を守るルールをつくる

―― 正当な理由のない解雇の禁止、人員整理計画の事前協議制の確立
―― 希望退職や転籍など「退職」を強要するための人権侵害を許さない
―― 派遣やパート、有期雇用などの労働者の雇用と権利をまもる

(3)失業者への生活保障と仕事の対策をすすめる

(2)金融制度は公共的責任を優先に

(1)中小企業を生かす金融行政に転換するため「4つの緊急措置」を実施する

・機械的な「不良債権処理スケジュール」を撤回する。・資産査定は担保価値の減少などの影響を切り離し企業の経営実態にもとづいたものに。・中小企業への公的金融支援を強化する。・ヤミ金融など高利・暴力金融を根絶する。

(2)利用者・国民はそっちのけで、銀行の都合のための郵政民営化に反対する

――庶民の貯蓄をまもる
――郵貯・簡保の資金を地域経済・中小企業に供給する仕組みを強化する

(3)中小企業の経営の発展のために

(1)大型店の出店・撤退を規制し、消費税の免税点引下げに反対する
(2)納税者の権利を守る「納税者憲章」を制定する
(3)親企業と下請企業との対等平等な関係を築く

(4)人間と環境の共生のために

―― 地域レベルでの環境破壊をおさえる
―― ディーゼル車による環境汚染の規制
―― 地球的規模での環境破壊をおさえる

<4>農林漁業を再生し、食料自給率の向上、安全な食料の安定供給と地域経済の振興をはかります

(1)WTO農業協定の改定を求め、食料主権を回復する

(2)価格・所得保障を農業予算の主役にし、家族経営や多様な担い手をささえる

(3)消費者参加とチェック体制の強化で食の安全を確保する

(4)林業と漁業を振興し、地域経済の活性化をはかる

<5>危険な「原発だのみ」をやめ、地域の自然エネルギーなど、安全なエネルギー供給をめざす

(1)プルトニウム循環計画を中止し、既存原発の総点検と計画的縮小をすすめる

(2)風力や小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発を促進する

<6>地方財源を拡充し、住民のくらしと地方自治をまもる

(1)市町村合併の押しつけをやめ、地域振興をはかり、地方自治をまもる

(2)開発優先の「逆立ち」行政の旗振りをやめ、「自治体らしい自治体」づくりの支援に転換する

(3)国から自治体への財政支出の削減でなく、地方財源の拡充をおこなう

――税源の移譲をすすめるとともに、交付税の財源保障・調整機能を拡充する
――公共事業など個別補助金制度を、総合補助金制度にあらためムダをなくす

<7>女性が生きいきと力を発揮できる平等な社会をめざす

――女性が正当に評価され、安心して働き続けられるルールをつくる
――女性の独立した人格を尊重し、社会的、法的な地位を高める
――女性の健康と母性を保護する環境整備をいそぐ

<8>安心して子どもを生み育てられる条件づくりを

(1)少子化傾向を克服する努力を強める

第1に、長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方にすること。
第2は、若者に安定した仕事をつくること。
第3は、男女差別・格差をなくし、女性が働きつづけられ、力を生かせる社会にすること。
第4は、出産・育児と仕事の両立を応援すること。

(2)教育条件を向上させ、国の統制から「地域発・学校発」の教育改革にきりかえる

(1)政治の仕事の中心を教育条件整備にきりかえ、遅れた教育条件を欧米並みにひきあげる 
(2)国の教育介入をやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が中心の教育改革にきりかえる
(3)教育基本法の改悪の動きに反対し、基本法を活かす方向にきりかえる

<9>社会の道義的危機の克服を、国民的対話と運動をつうじてすすめる

―― 民主的社会にふさわしい市民道徳の規準をどう確立してゆくか
―― 子どもをまもるための社会の自己規律をどうきずくか
―― 子どもが自由に意見をのべ、社会に参加する権利をどのように保障するか
―― 子どもの成長をささえあう草の根からの取り組みをどうすすめるか

<10>「政治とカネ」のよごれた関係を断ち切り、民主的政治制度の実現を

(1)企業・団体献金をただちに全面禁止する

(2)国民の税金を政党が分け取りする政党助成法を廃止する

(3)選挙制度の改悪に反対し、民意を反映する選挙制度改革を

<11>イラク派兵反対と先制攻撃戦略への参加に反対する

(1)自衛隊の海外派兵に反対する

(2)米軍基地の異常をただし、米軍の横暴勝手をやめさせる

(3)「ミサイル防衛戦略」への参加に反対する

<12>北朝鮮問題の解決、東アジアの平和と安定のために

―― 朝鮮半島で戦争をおこさせない
―― 国際社会が立つべき3つの原則
―― 日本人拉致事件を理性的に解決する


自民党政治を大もとからきりかえ、「国民が主人公」の日本改革をすすめます

総選挙にのぞむ日本共産党の政策

2003年10月8日 日本共産党中央委員会


 こんどの総選挙は、21世紀の日本の進路が大きく問われる選挙です。先行きどころか、国民の「いま」の苦難をとりのぞく手だてをまったくしめせない自民党政治――ゆきづまった古い政治の枠組みを続けるのか、それとも政治と経済の弱点・欠陥にメスを入れ、国民が希望のもてる国づくりをすすめてゆくのかが問われる選挙です。そして、どの野党が、自民党政治にとってかわる日本の改革のたしかな方向と中身をしめしているのか――日本の政党のほんとうの“値打ち”が問われる選挙です。

 日本共産党は、日本の政治・経済・外交を「国民が主人公」をつらぬく方向にきりかえるほんものの改革=日本改革を、国民のみなさんに訴えてたたかいます。

日本改革の提案

日本共産党はこういう日本をめざします

 日本共産党は、ゆきづまった現状を打開し、政治でも経済でも名実ともに「国民が主人公」となる21世紀の新しい日本への進路をきりひらくために、(1)大企業応援の政治からくらし応援の政治への民主的改革、(2)アメリカいいなりからぬけだし、憲法9条の立場を生かしたほんとうの独立・平和の日本への改革――この二つの改革を、国民のみなさんと力をあわせてすすめます。

〈1〉日本経済の民主的改革――
大企業応援ではなく、国民のくらし応援の政治を

 日本経済の根本的な弱点は、経済をささえる一番の土台である国民のくらしが、粗末にあつかわれていることにあります。90年代からつづく長期不況にたいしても、大手ゼネコンのための公共事業の積みまし、大銀行のための公的資金の投入、大企業のための法人税の減税などが繰り返されましたが、肝心の国民のくらしをたてなおす対策を何もとらず、逆に痛めつづけてきました。そのために、一時的な「景気回復」は何度かあっても、結局、長期不況からぬけだすことができませんでした。この間も、大企業の身勝手なリストラや、政府による国民負担増の押しつけ、社会保障の切り捨てが、くらしを圧迫し、生活不安を広げ、景気をさらに冷え込ませてきました。

 大企業応援ではなく、国民のくらしを応援する政治をすすめ、経済をささえる最大の力である国民のくらしに活力をあたえることこそ、日本経済を立ち直らせる道、先行きに明るさを見いだせる道です。

 (1)社会保障とくらしをささえるための財政と税制の改革……日本は、国民のくらしをささえる社会保障のために国や地方が出す支出よりも、大型プロジェクト中心の公共事業に出す支出の方が極端に多いという、世界でも類を見ない「逆立ち」した税金の使い方をしています。

 この「逆立ち」財政が、国民のくらしを痛めつける根本にあります。昨年から今年にかけて、年金、医療、介護など社会保障と庶民増税などで3兆円もの負担増が国民に押しつけられました。そのうえに、来年以降、所得税・住民税の増税(配偶者特別控除の廃止)、消費税の課税強化(免税点の引き下げなど)をおこなうことが決定され、今年に続き、来年も年金給付を削減する計画で、あわせて2兆円規模の負担増を国民に押しつけようとしています。さらに、来年の国会では、保険料と給付全般にわたる年金大改悪をおこなうとしています。

 ――「歳出改革」――「逆立ち」財政をあらためる……まず、「逆立ち」した税金の使い方を大もとからあらため、国民のくらしと社会保障を予算の主役にすえる改革をすすめます。日本の公共事業費は、90年代に50兆円という世界に例のない水準にまで異常膨張しました。この異常膨張した公共事業費を、福祉・環境型に重点化させることで雇用を確保しながら、バブル前の25兆円という水準まで段階的に半減させます。年間5兆円に膨張した軍事費を「聖域」とせず、抜本的な軍縮へと転換させます。

 ――「歳入改革」――「所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担」の経済民主主義をつらぬく……将来的には、高齢化社会をささえる新たな負担が必要となってきます。その時には、税金や社会保険料などの負担は、“所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担”という経済民主主義の大原則にたった改革で、社会保障の財源を安定的に確保します。「所得や資産に応じて」「生計費非課税」は、近代社会が確立してきた税や負担のあり方の原則です。この大原則にそくして、大企業や高額所得者に応分の負担をもとめる改革をおこないます。高齢化社会をささえる財源と称して、所得の少ない人に重くのしかかる消費税大増税を選択することは、絶対にやってはなりません。

 (2)国民のくらしと権利をまもる“ルールある経済社会”をつくる……大企業の乱暴なリストラ、違法なサービス残業、過労死まで生み出す長時間労働、下請け企業への単価たたきなど、日本は、くらしや雇用、中小企業をまもるルールがあまりにも弱く、大企業の身勝手が野放しにされ、同じ「市場経済」のヨーロッパとくらべても異常な国になっています。

 今年のエビアン・サミットが、「企業の社会的責任を重視する」という経済宣言を採択したことがしめすように、世界では新しい流れが起きています。21世紀を「持続可能な経済社会」にするためには、経済全体に巨大な影響力をもっている大企業が、雇用・地域経済・環境・下請け企業・消費者などにたいする社会的責任をはたすべきであり、そのことを重視する経済政策に転換しようという当然の流れです。

 ところが日本では、小泉内閣が、「構造改革」などとして、“市場原理と競争”一辺倒で、目先の利益追求を最優先する「アメリカ型資本主義」「市場原理主義」を強引に持ち込んでいます。大企業の利益を増やしてやるために、リストラによる雇用破壊も、長時間労働も、下請けいじめも、地域経済を見捨てる工場閉鎖も、一切合切野放しです。このままでは日本は、世界の新しい流れにも逆行する、いっそうひどい“ノン・ルール”の国になってしまいます。これでは日本の経済社会は荒廃するばかりです。

 日本共産党は、国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」への前進をはかります。そのことによって、世界ではあたりまえの「企業の社会的責任」を大企業にきちんとはたさせ、安定した雇用の確保、環境との共生、人間らしい生活と社会など、「持続可能な経済社会」の実現にとりくみます。

 ――労働者の雇用と労働条件のために……無法なリストラ、違法なサービス残業、長時間労働をなくし、安定した仕事と雇用を確保する。

 ――金融制度は公共的責任を優先に……金融機関に中小企業への資金供給というあたりまえの責任をはたさせる。郵政民営化に反対し、庶民の貯蓄をまもる。

 ――中小企業の経営の発展のために……大型店の出店を規制し地元商店街をまもる。親企業による下請けいじめをやめさせる。納税者憲章を制定するなどにとりくむ。

 ――人間と環境との共生のために……地域レベルでの環境破壊、地球的規模での環境破壊をおさえるルールをつくる。

 (3)経済までアメリカに指図される現状から抜け出す……経済の重要な問題で、いつもアメリカに指図されていることも、日本経済の大きなゆがみになっています。

 90年代に公共事業費が年間50兆円にも膨張しましたが、これは、1989年にブッシュ大統領(現大統領の父親)が、当時の海部内閣に「内需拡大」をせまり、同内閣が公共事業に10年間で430兆円使うという「公共投資基本計画」をつくったことに端を発します。さらに94年には、村山内閣がまたもやアメリカの圧力をうけて、この計画を630兆円にまで拡大させてしまいました。

 乱暴な「不良債権の早期処理」による不況の加速も、アメリカの圧力ですすめられているものです。小泉首相は首相就任直後の日米首脳会談(01年)で、ブッシュ大統領から「不良債権処理の加速」をせまられました。「不良債権処理加速」策は、アメリカ流の銀行の資産査定や自己資本の算定などの方法をそのまま持ち込んだものであり、貸し渋り・貸しはがし・利上げに拍車をかけ、この大不況時に、経済の現場では事実上の“金融引き締め”状態をつくりだしています。

 また、日本は、国民の預貯金にまったくといっていいほど利子がつかない異常な国になっています。世界でも前例がない超低金利・ゼロ金利も、日本からアメリカに資金を流入させるために、日本の金利をアメリカより低く抑えるという政策がとられたことが発端でした。

 このように経済の重要問題でアメリカに指図されている現状をあらため、国民のくらし、日本経済の実態にそくした経済運営に改革します。

〈2〉外交・安全保障の改革――
「アメリカいいなり」政治を断ち切り、ほんとうの独立・平和・非同盟の国へ

 わが国の政府は、どんなに無法で道理がないものであろうと、アメリカの戦争を無条件に支持する立場にしがみついてきました。そしていま、アメリカいいなりに自衛隊を海外に派兵する国になろうとしています。小泉内閣は、アメリカの戦争に自衛隊を参戦させる法律をつぎつぎと制定して自衛隊を海外に送り出したうえに、いつでもどんな場合でも自衛隊を海外に派兵できる「恒久法」の制定さえねらっています。

 アメリカに追従した「海外派兵国家」の道を続ければ、世界とアジアから孤立するばかりです。日本共産党は、「アメリカいいなり」からぬけだし、自主・独立の国づくりをすすめ、アジアと世界の平和・友好に貢献する日本にします。

 (1)イラク派兵に反対し、「海外派兵国家」の仕組みづくりをやめさせる……アメリカの不法なイラク占領支配を支援するために自衛隊派兵を強行すれば、イラク復興支援に結びつくどころか、混乱をさらに長引かせ、日本はとりかえしのつかない道に足を踏み入れることになります。イラクへの自衛隊派兵はきっぱり中止すべきです。アメリカの占領費負担もやるべきではありません。

 日本共産党は、憲法9条をまもる立場で、「海外派兵国家」の仕組みづくりをやめさせ、有事法制・海外派兵法の発動を阻止するために、国民のみなさんとの共同をつよめます。

 (2)国民の利益と世界の公理にかなった自主外交に転換する……イラク戦争は、国連の「平和のルール」にたいする正面からの挑戦であり、破壊です。アナン国連事務総長も、米英の先制攻撃を「国連憲章の原則への根本的挑戦」だと批判しています。巨大な軍事力にものをいわせるアメリカの横暴勝手な世界戦略を許さず、「国際紛争の平和的解決」「武力の行使・威嚇の禁止」という国連の「平和のルール」にそった国際秩序を築き上げる課題は、国際政治と国際世論が直面する重要課題です。

 日本共産党は、国連憲章の「平和のルール」をまもり、自民党政府の「アメリカいいなり」の外交から、日本国民の利益に立った自主・平和の外交に転換します。

 (3)「米軍基地国家」の現状をあらためる……異常な「米軍基地国家」の現状をあらためます。沖縄・名護への新基地建設、神奈川・横須賀への原子力空母配備、長崎・佐世保を中心とする「遠征攻撃群」の新編成など、海外への“殴り込み”専門部隊の増強計画に反対します。ブッシュ政権がすすめている「ミサイル防衛戦略」は、アメリカの核戦略優位を絶対的なものにし、「報復」の心配なく先制攻撃を可能にしようとするものです。このような危険な計画に日本が参加することに強く反対します。

 (4)日米軍事同盟をなくし、ほんとうに独立した自主・平和の日本へ……小泉内閣が、憲法9条も平和をねがう国民世論も踏みにじって、アメリカいいなりの道をつきすすむ大もとに、安保条約=日米軍事同盟があります。圧倒的な軍事力で世界支配をねらうアメリカに日本をがんじがらめにしばりつけている日米安保は、いま、世界とアジアの軍事緊張を高める危険な震源地の一つになっています。沖縄をはじめ日本中で、「基地あるがゆえ」の苦しみを国民に押しつけています。

 日本共産党は、日本でただひとつ、日米軍事同盟からぬけだして日本を外国の軍隊のいない、ほんとうの独立国家にすること、世界とアジアの平和に貢献することを主張している政党です。安保条約第10条の規定にしたがって、アメリカに「安保廃棄」を通告します。アメリカとは「友好条約」を結び、対等・平等の新しい関係をつくります。

2つの悪政にストップを

消費税大増税・憲法改悪の計画をくいとめるよう、力をつくします

 自民党と財界勢力は、消費税大増税と憲法改悪という二つの大きな「計画」をたて、近い将来、実行に移すための“地ならし作戦”に乗り出しました。こんなとんでもないことを許したら、わが国の21世紀は、経済と国民のくらしの面でも、政治と外交の面でも、まったく「暗い世紀」になってしまいます。日本共産党は、このくわだてを阻止するために、多くの国民のみなさんと力をあわせます。

消費税の大増税は国民の新たな苦難の道

 いま、消費税の税率を2ケタに引き上げるという大合唱が、財界や政府・与党の間からわき起こり、大増税にむかっての暴走が始まろうとしています。日本経団連、経済同友会などが、数年後から税率を段階的に引き上げ、「18%」とか「19%」までにするという提言を次々に出し、財界が総出で、消費税大増税の音頭をとっています。これを受けて6月に出された政府税制調査会の答申は、「2ケタの税率に引き上げる必要もあろう」とし、税調の石会長は、「国民世論の形成には2、3年かかる。小泉首相は歳出カットなど引き上げの前提条件をこの3年間で満たしてもらいたい」とのべています。

 小泉首相が「任期中の3年間は増税しない」といっているのは、この財界や政府税調の増税案にそったものです。財界も、数年間かけて大増税への地ならしをし、そのために、消費税増税と法人税減税に賛成する政党には、中止していた経団連からの政治献金を再開するという作戦まで決めています。小泉「構造改革」で、さらに“痛み”を押しつけられたあとで、待っているのは消費税大増税というのでは、国民は踏んだりけったりではありませんか。いま、国民が黙っていたら、この方向が既成事実にされかねません。

 消費税大増税は、庶民のくらし、中小業者の営業、景気と経済を破壊する……消費税は、所得が少ない人ほど重い負担になる最悪の不公平税制です。税率が高くなればなるほど不公平は拡大し、庶民に重い負担になります。いま、貯蓄ゼロという世帯が全世帯数の2割にものぼるほど所得・資産の格差は拡大しており、大増税は、庶民のくらしを直撃し、ひいては社会に新たな荒廃をもたらします。

 消費税は、価格に転嫁しきれず、身銭をきって納税している多くの中小零細業者などにとっては営業破壊税です。大増税は、不況とし烈な価格競争のなかで必死にがんばっている中小零細業者を倒産・経営難に追い込んでしまいます。

 さらに、消費税増税が、景気と経済に大打撃となることは、6年前の橋本内閣の増税が、上向きになりかけていた日本経済を「戦後最悪の大不況」にたたき落とした経験からも明らかです。長い不況で国民のくらしも日本経済も疲弊しきっているときに、大増税計画を持ち出すことなど言語道断です。

 “社会保障の財源”どころか“大企業減税の財源”……「消費税は社会保障の財源として必要」というのが、増税のための口実です。消費税導入のときも、5%への増税のときも、そういってきました。しかし、医療・年金などの社会保障制度は、拡充されるどころか改悪され続けてきたではありませんか。

 導入以来15年間の消費税の総額は136兆円にもなりますが、同じ時期に、法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)が131兆円も減りました。景気悪化のために法人税収が減収になったうえに、大企業のための減税が繰り返されたためです。国民からしぼり取った消費税は、社会保障財源になるどころか、大企業減税と不況による法人税などの減収で消えてしまったのです。

 日本経団連などは、「消費税の2ケタ化」とあわせて「法人税率の引き下げ」や「年金保険料の企業負担の廃止」などをもとめています。財界の本音は「社会保障のため」の消費税増税ではなく、大企業の負担を減らして、それを消費税で「穴埋め」することです。

 消費税の免税点引き下げに反対し、中止をもとめる……来年4月から消費税の免税点が1000万円まで引き下げられ、年間売り上げ3000万円以下の中小零細業者も消費税を納めなければならないことになりました。売値に転嫁できない中小零細業者にとって、消費税は「益税」どころか「損税」です。

 中小企業庁の調査では、売り上げ3000万円以下の業者の52・3%、全国商工団体連合会の「8万事業所調査」では61・4%がほとんど転嫁できていません。いまでも、「仕入れ」にかかる消費税は身銭をきっているのに、納税分まで身銭をきらされたら「とても商売をつづけられない」と悲鳴があがっています。

 免税点の引き下げは、弱いものいじめによって「公平さ」をよそおい、消費税大増税を強行する、そのための地ならしにほかなりません。

 消費税大増税の計画に反対する……消費税は、所得の少ない人にほど重くのしかかります。「所得の多いものは多く、少ないものは少なく」、「生きていくために必要な生計費には税をかけない」という近代的な税の大原則に反した「最悪の不公平税制」です。日本共産党は、いっかんして消費税の廃止を主張してきました。ましてや、この悪税を2ケタに増税することなど、絶対に認めることはできません。日本共産党は、消費税大増税の計画につよく反対するものです。

憲法改悪に反対し、現行憲法をまもる

 小泉首相は、自民党の結党50周年にあたる2005年11月までに憲法「改正」案をまとめるよう指示し、それ以前にも、改憲のために必要な「国民投票法」を制定すると明言しました。ときの首相が、改憲のための具体的な日程や段取りを指示することは、憲法制定以来はじめてのことです。

 自民党の改憲のねらいははっきりしています。これまで、「戦争はしない、軍隊はもたない」と決めた9条の解釈をねじ曲げて、“自衛隊は軍隊ではない”“自衛隊は海外に行くが、戦争行為はやらない”といいわけをしてきましたが、もう、それだけではアメリカの注文に応じきれなくなったからです。9条そのものを変えて、海外で気がねなしに戦争ができるようにする――ここにいちばんのねらいがあります。

 日本共産党は、現憲法のすべての条項を厳格にまもり、とりわけ平和的・民主的条項を完全実施することを要求しています。いまの憲法は――主権在民、戦争の放棄、国民の基本的人権、国権の最高機関としての国会の地位、地方自治――という大事な原則に立っており、この原則を政治・経済・外交・社会のすべての分野で生かす立場から、憲法改悪にきっぱり反対します。

 とりわけ憲法9条は、日本国民が世界にほこる「平和の宝」です。アメリカの「一国覇権主義」の横暴勝手から国連の「平和のルール」をまもるうえでも、日本をアジアと世界の平和に貢献する国にするためにも、憲法9条の役割はますます重要になっています。「海外派兵国家」の道をひた走る小泉内閣の暴挙に、アジアをはじめとする世界中の世論が、かつての日本軍国主義による侵略戦争・植民地支配と重ね合わせて、「日本は、戦争をしないと誓った自国の憲法に反する道を歩んでいる」と痛烈に批判しています。

 日本共産党は、戦前の侵略戦争と植民地支配に命がけで反対をつらぬいた日本で唯一の政党です。こうした歴史と伝統をもつ党として、憲法改悪の計画を中止させるために全力をつくします。

当面の重点政策

〈1〉社会保障を予算の主役にすえ、年金・医療・介護など、国民が安心できる制度を確立する

 小泉内閣は、医療、年金、介護など社会保障のあらゆる分野での負担増と庶民増税で、あわせて4兆円もの負担増を国民に押しつけることを決め、すでに、医療費のサラリーマン本人負担3割、保険料値上げ、年金給付の引き下げ、介護保険料の値上げ、雇用保険料の値上げと失業給付削減、発泡酒増税など、3兆円を超える負担増を実施しました。

 それにくわえ、来年以降、所得税・住民税を7300億円増税(配偶者特別控除の廃止)すること、消費税の課税を強化(免税点の引き下げ等)して零細な業者と消費者に6300億円の増税をすることを決定しています。さらに、年金給付は、今年、「物価スライド凍結解除」による4000億円の給付削減をしたばかりなのに、来年も、8000億円の給付削減が計画されています。これから来年以降にかけて、新たに2兆円規模の増税・負担増が国民のくらしにおそいかかろうとしています。

 そして、来年の国会でも、年金制度の抜本的な改悪をやろうとしています。年金額を自動的に減らしていく仕組みや保険料の段階的な引き上げなどの大改悪で、そのための法案を、この総選挙後にもつくろうとしています。“痛み”をがまんすればするほど、新しい“痛み”が押しつけられる――まさに際限のない負担増です。

 いまや社会保障制度は、国民のくらしをささえるという本来の機能を大きく失い、多くの国民を苦しめ、生活不安をかきたてる大きな要因になっています。不況のときだからこそ、社会保障に予算を重点的にふりむけ、国民のくらしを最優先させるべきです。日本共産党は、社会保障を予算の主役にすえ、国民が安心できる制度を確立します。

(1)年金大改悪に反対し、3つの改革で将来に安心がもてる年金制度をつくる

 小泉内閣は、来年の年金見直しにあたって、これまでの年金制度上の約束ごとを反故(ほご)にして、少子化や経済環境の変化にともなって年金額を自動的に減らす仕組みに変えようとしています。この方式に移行すると、厚生労働省の試算で、年金水準は、現役労働者の手取り賃金の約60%から、将来的には52%にまで下がり、受け取る年金額は、いまより12%程度も減ることになります。しかもこれは、保険料率を現在の13・58%(労使折半)から、段階的に20%(同)にまで引き上げるという、大幅な負担増を前提にした計画です。いま年金を受給している高齢者にたいしても、来年には、物価スライドのマイナス改定と年金課税強化の両面から、かつてない年金カットが実施されようとしています。こんな年金大改悪を許せば、くらしも経済もめちゃくちゃになってしまいます。

 日本共産党は、来年の年金大改悪に反対するとともに、つぎの三つの改革で、将来に安心がもてる年金制度をめざします。

 第1の改革――基礎年金への国庫負担を、現行の3分の1からただちに2分の1に引き上げる。その財源は、公共事業費の削減、道路特定財源などの一般財源化、軍事費の削減など歳出の見直しによってまかなう。

 第2の改革――リストラの横暴をおさえ、雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手を増やす。

 第3の改革――175兆円にものぼる巨額の年金積立金を計画的に活用する(積立金額は厚生年金基金が代行している部分を含む)

 国民年金は、4割近い加入者が保険料を滞納するなど、深刻な空洞化が起きています。定額制となっている国民年金の保険料は、収入に応じたものにあらためます。年金受給のために必要な最低25年の現在の資格加入期間を10年程度に短縮し、加入期間に応じて年金が受給できる仕組みにあらためます。無年金障害者の救済をいそぎます。

 さらに将来的には、基礎年金部分を発展させて、「最低保障年金制度」を創設します

 厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台(1階部分)として、加入者全員に一定額の年金が支給される「最低保障年金制度」を創設します。そのうえに、それぞれの掛け金に応じて、年金が上積み給付されるようにします(2階部分)。

 「最低保障年金」の財源は、国庫と事業主の負担でまかないます。事業主の負担分については、“所得の多いものは多く、少ないものは少なく”という経済民主主義をつらぬきます。日本では大企業の社会保障への負担がヨーロッパなどと比べ著しく低くなっています。中小企業の負担は、現在の負担より重くならないようにします。

 憲法25条は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。日本共産党は、この立場から、1983年から「最低保障年金制度」の創設を提案してきました。すべての国民が安心して老後をおくれるようにするために、その実現にむかって前進していきます。

(2)3割負担などの医療改悪を元にもどし、国民の命と健康をまもる

 昨年10月に老人医療費の負担額が引き上げられたために、在宅酸素療法を中断する人が続出するなど、命にかかわる深刻な事態が起きています。今年4月からは、サラリーマンなどの患者負担も3割に引き上げられ、深刻な受診抑制が起きています。このうえさらに、政府は医療の「抜本改革」と称して「高齢者医療保険」を創設し、すべてのお年よりから医療保険料を徴収するなどの計画をすすめています。

 当面、02年の医療改悪前の状態にもどすとともに、これ以上の医療大改悪をやめさせるために、つぎの三つの改革をすすめます。

 ――減らし続けた医療費に占める国庫負担の割合を計画的に元にもどす。

 ――世界一高い薬価や高額医療機器が医療費を押し上げている仕組みにメスをいれる。

 ――予防・公衆衛生や福祉施策に本腰をいれ、国民の健康づくりを推進する。

 国民健康保険の深刻な危機を打開し、住民の命と健康をまもります。国民健康保険証の取り上げをやめさせ、保険外負担の拡大に反対し、保険で必要かつ十分な医療が受けられるようにします。

(3)だれもが安心して利用できる介護保険制度に改善する

 今年4月から、65歳以上の介護保険料が全国平均で13%引き上げられ、低所得者は必要なサービスもますます切り縮めざるをえなくなっています。政府は、介護保険制度の見直しに向けて、(1)保険料の徴収対象を現行の「40歳以上」から「20歳以上」に広げる、(2)障害者施策を介護保険と統合して、障害者からも保険料を徴収する――などを検討しています。このような国民負担増に反対するとともに、だれもが安心して利用できる制度をつくります。

 ――保険料、利用料の免除・軽減制度を国の制度として確立します。

 ――介護給付費への国庫負担を現在の4分の1から2分の1に引き上げます。

 ――特養ホームを計画的に増設し、待機者の解消をはかります。

 ――短期入所(ショートステイ)の緊急用ベッドの確保など、高齢者が地域で安心してくらせる条件を整備します。

(4)福祉を拡充し、だれもが安心して過ごせる地域社会をつくる

 乳幼児医療費無料化を国の制度として実現させ、各自治体の独自施策を上乗せできるようにします。住民・行政・医療関係者の連携で小児医療供給体制を整備します。

 長引く不況のなかで生活保護の役割がますます重要になっています。「老齢加算」「母子加算」の廃止など、政府の05年に向けた保護費減額の計画に反対します。児童扶養手当の削減計画を中止します。難病患者の医療費自己負担制度をやめ、無料化を復活します。

 障害者が全国どこでも必要なサービスを受けられるように、サービス基盤整備を集中的にすすめるなど、支援費制度の改善・拡充をすすめます。障害者プランの拡充、雇用の確保、「障害者差別禁止法(仮称)」の制定などを推進し、障害者の「全面参加と平等」を実現します。

(5)社会保障のための財源(その1)――「逆立ち」財政をあらためる歳出改革

 小泉内閣や自民党・公明党、財界などは、社会保障の負担増や給付減は「少子高齢化だから仕方がない」といいます。しかし、国民が払った税金がどう使われているかを見れば、これが間違っていることははっきりします。日本は、国民が国と自治体に払った税金のうち社会保障の公費負担としてもどってくる比率は29%で、アメリカ47%、ドイツ44%、イギリス43%、スウェーデン43%などからみればたいへん低い水準です。

 税金の使い方、予算の優先順位を転換すれば、社会保障を充実させる財源を確保する展望が大きく開けます。

 ――第1に、90年代に50兆円にまで膨張した公共事業を段階的に半減させます。バブル期前の水準の25兆円にまで段階的に引き下げれば、財投資金などを除いても、新たに10兆円程度の財源をつくりだすことができます。それでもアメリカを上回る水準の公共事業を確保でき、巨大開発中心から、雇用や地域経済への波及効果が大きい福祉・環境型に転換すれば、国民に必要な社会資本整備は十分可能です。

 ――第2は、5兆円にまで膨張した軍事費を「聖域」にせず大幅軍縮に転換させます。とくにヘリコプター空母や空中給油機など海外派兵用の新規装備購入計画を中止すること、1兆円単位での巨額の財政支出をともなう「ミサイル防衛戦略」への参加を中止すること、世界で類のない巨額の米軍への「思いやり予算」を廃止することは、急務です。

 この二つの改革で、10兆円以上の財源を、社会保障を中心にした国民のくらしのために、新しく振り向けることができます。

(6)社会保障のための財源(その2)――“所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担”という経済民主主義の大原則に立った歳入改革

 将来の高齢化社会をどうささえるか、その財源をどこに見いだすかは、21世紀の日本社会をどうするかという点でも、大きな問題です。

 将来の社会保障の財源をどうするかを考えるとき、経済民主主義の原則をつらぬく立場にたつことがカギです。ところが、消費税の大増税で財源をつくるという議論があります。しかし、低所得者ほど負担の重い消費税は、「反福祉的」な税制度であり、社会保障財源としていちばん不適当な税制です。しかも、この道は、国民のくらしも、景気・経済も破壊することは明らかです。

 自民党政治は、消費税の導入・増税と引き換えに、法人税と高額所得者中心の所得税の減税を繰り返してきました。その結果、消費税導入前の税制と比べると、法人税率は42%から30%に引き下げられるなどの減税がおこなわれ、国税、地方税あわせて大企業だけで年間約3兆円、トヨタ1社だけでも2200億円も法人税負担は軽減されています。

 大企業・高額所得者に応分の負担をもとめる、税制と社会保障制度の抜本的改革をおこないます。財界は、企業の社会保障負担を増やすと国際競争力がなくなるといいますが、日本の企業の税と社会保障負担は、とくに社会保険料負担が低いために、国民所得比で12%であり、イギリス15%、ドイツ18%、フランス24%、スウェーデン22%にくらべて、5割から8割にすぎません。大企業に国際水準にてらして適切な負担をもとめる改革をすすめます。

 また、法人税にゆるやかな累進制を導入するとともに、受取配当益金不算入制度、外国税額控除、研究開発減税など、もっぱら大企業向けの優遇税制をあらためます。

 高額所得者も所得税・住民税の最高税率引き下げなどによって、消費税導入前とくらべて1・6兆円も減税になっています。累進制を再建します。土地・株式など資産所得への分離課税制度をなくし総合課税にします。

〈2〉公共事業の大改革をはかる――予算規模は25兆円、内容は国民生活優先

 日本の公共事業費は、90年代に年間50兆円にも異常に膨張しました。これをバブル前の水準の25兆円程度にまで削減していきます。それでも国土面積で25倍、人口で2倍のアメリカを上回る規模ですから、国民生活に必要な社会資本整備は十分できます。6兆円にのぼる道路特定財源など、公共事業費が自動的に膨張する「仕掛け」も廃止します。

 内容も、巨大開発中心から、「生活・福祉・防災・環境」重視に、大きくきりかえます。国民生活優先の公共事業は、巨大開発より、地域経済や中小企業、雇用への波及効果がずっと大きくなります。

(1)必要性のないダム、空港、港湾などの公共事業にメスを入れる

 小泉内閣は、「公共事業の改革」といいながら、だれが見てもムダと浪費、環境破壊という大型事業を相変わらず推進しています。

 熊本県の川辺川ダムは、“ダムの建設はムダだ”と地元住民が反対し、川辺川の自然をまもれという運動が大きくひろがり、ついに裁判所が利水事業の違法性を指摘し取り消す判決を下しました。ところが、政府はいまだに「必要なダム」と言い張っています。諫早湾干拓事業や、自民党の中からさえ疑問や批判の声があがっている関西空港2期工事と神戸空港建設もストップがかかりません。

 小泉内閣のやっていることは、事業量は減らさず、工事価格の引き下げの範囲内で予算を圧縮するだけという、とうてい「改革」とはいえないものです。

 大型公共事業を総点検し、事業の中止を含む大胆なメスを入れ、ムダと環境破壊の公共事業をやめさせます。

(2)新手のムダ――「都市再生」事業にストップをかける

 小泉内閣が目玉にしている「都市再生」は、一部の大都市に公共事業を集中させるものです。その多くは、大規模工場跡地を買い上げ、バブル期に計画され頓挫していた開発を焼き直したものです。すでに東京など大都市圏では、オフィスビルも、大型マンションも、ホテルも供給過剰が指摘され、「空き部屋」問題が深刻になっているにもかかわらず、新たな巨大ビルを建設し、その周辺整備を公共事業でおこなうというのは、新手のムダとしかいいようがありません。そのうえに住民の追い出し、高層ビルの林立による日照権の侵害、電波障害、自動車の流入による交通渋滞、大気汚染、騒音、ヒートアイランド現象、大量の廃棄物の発生などの大問題を引き起こします。

(3)道路特定財源などを一般財源化し、ムダな公共事業でなく社会保障などくらしのために活用する

 道路特定財源は、ガソリンにかかる揮発油税、自動車重量税など、国と地方あわせて約5・7兆円もあり、電源開発促進税、航空機燃料税などの公共事業特定財源をあわせると7・7兆円にのぼります。こうした「特定財源」という仕組みが、公共事業を膨張させる「仕掛け」になっています。

 小泉首相は、国民の批判をうけ、「特定財源の見直し」を公約し、昨年は、ほんの一部の2200億円を「一般財源」にまわしただけで、「できないといわれてきたことをやった」などと「改革」の成果を誇りました。ところが、たった1年で、逆戻りにし、今年度は全額道路建設にまわし、しかも、新たに高速道路建設にも使えるようにしています。

 ムダな公共事業をおさえるうえでも、財政危機のもとで、国民の払った税金を有効に使うという面でも、道路特定財源などを、使い道を特定しない一般財源とし、社会保障やくらしにも活用します。

 道路建設は、特定財源でなく、他の公共事業と同じように、全体の予算編成のなかで、生活道路中心に必要な予算を配分するように改革し、「税収が入った分だけ道路をつくる」というムダを生み出す構造を改革します。

(4)道路公団改革――「民営化」でなく、ムダな高速道路の建設中止、債務の計画的返済、組織のスリム化をすすめる

 過大な交通量予測をおこない、いいかげんな収支計算をもとに次々に高速道路を建設するという、これまでのやり方を、これ以上つづけるわけにはいきません。すでに道路4公団は、あわせて40兆円もの債務をかかえており、これ以上、ムダな建設をつづければ、新たな国民負担・税金投入となることは必至です。

 小泉内閣は、「民営化」でこの問題を解決するとしています。しかし、40兆円もの債務を残したままでは、民間会社を設立することも、株式を上場することもできません。国鉄がJRになった時のように、「民営化」するときには、必ず、この巨額の債務を新会社から切り離し、国民が引き受けることになります。道路公団と自民党政治によってつくられた巨額の借金を国民に押しつけるための「民営化」には反対します。

 日本共産党は、つぎの三つの内容で、道路公団の改革をすすめます。

 (1)高速道路整備計画を廃止し、新たな高速道路建設は凍結・見直す……ムダな高速道路建設がすすむ大もとには、国土開発幹線自動車道建設審議会(国幹審)が決めた高速道路整備計画があります。政府は、この計画にもとづく9342キロの建設枠をいまだに見直しもせず、約20兆円が必要とされる残りの2100キロを何が何でも建設しようとしています。こうした「総枠先にありき」のやり方が、採算もとれず、必要性も乏しい高速道路建設を助長してきました。

 ほんとうに「改革」をする気なら、まず、この整備計画をきっぱり廃止することです。そして、新たな高速道路建設は、いったん凍結し、抜本的に見直します。採算性がなくても地域経済や福祉・医療などの観点からどうしても必要な高速道路については、交通需要や赤字額などを正直に公表し、それらを含めて国民合意が得られるならば、国の責任で建設すべきです。

 (2)債務負担を計画的に返済し、料金の段階的引き下げ、将来の無料化にむかう……40兆円の債務は巨額ですが、4公団あわせて年間2・5兆円の通行料金収入があります。新たな建設さえ中止すれば、維持・管理費を考慮しても、債務返済にまわす財源を確保することは可能です。そして、国土交通省のOBなどが天下り、ファミリー企業が仕事を独占するといった、癒着と利権の構造癒着にメスを入れて、効率的な経営をすすめれば、そこからも新しい財源が生まれます。日本共産党は、新たな国民負担・税金投入を極力回避し、債務問題を解決しながら、高速道路料金を段階的に引き下げ、返済が終わった時点で高速道路を無料化します。

 料金収入による計画的な債務返済をやめ、「料金無料化」を性急にすすめれば2兆円規模の税金を新たに投入しなければなりません。これは税金の使い方として、優先順位を間違ったものです。

 (3)道路4公団は、「天下り」を禁止し、ファミリー企業を廃止し、国民の管理・監視のもとで債務返済と維持・管理を運営する公共企業体として再生させる……道路4公団は、債務の計画的返済と維持・管理、料金の段階的引き下げと将来の無料開放という仕事にふさわしい形態への改組・縮小が必要です。

 国民に、経営の実態、債務返済の状況、料金が適正か、などの経営情報がきちんと公開される運営に徹します。そのために、国会への報告とともに、利害関係のない専門家や国民代表などによる第三者機関をつくり、監視します。国土交通省などからの「天下り」役員は禁止します。建設部門の廃止はもとより、組織の徹底したスリム化をはかります。ファミリー企業を廃止し、ためこんだ黒字は債務返済にまわします。公正でまともな民間企業との関係をつくります。

(5)「生活・福祉・防災・環境」重視の公共事業をすすめる

 低家賃の公共住宅の供給、負担と環境に配慮した下水道・合併浄化槽、生活道路などの生活関連施設、特養ホームや保育所の新増設など福祉関係施設、学校などの耐震化、がけ崩れ防止、老朽化したため池の改修など災害に強いまちづくり、バリアフリー化、風力や太陽エネルギー、バイオマス、小型水力発電などの自然エネルギーの開発、「みどりのダム」である森林の保全などは、地域の経済・社会をささえる力となるものです。「生活・福祉・防災・環境」型の公共事業を大いに推進します。

〈3〉国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」への前進をはかる

 繰り返されるリストラと雇用不安の拡大は、日本経済と社会に、経験したことのない新しい危機をもたらしています。

 勤労者世帯の年収は、この1年間で23万円、6年前からだと77万円も減少してしまいました。雇用危機は、国民の所得減少と生活不安の拡大をもたらし、景気回復の大きな足かせになっています。

 サービス残業・長時間労働の横行は、ストレスと疲労を蓄積させ、職場での「心の病」や過労死・過労自殺の増大など労働者の生命と健康を脅かし、家族をふくめた人間らしい生活を崩しています。フリーターなど不安定雇用の増大は、年金未加入者の激増などによって社会保障制度の基盤を掘り崩し、若者の経済的自立を妨げ、少子化の大きな要因になっています。このままでは、国民のくらしと日本経済に取り返しのつかない事態をまねくことになります。

 リストラと不況の悪循環は大企業自身の経営も圧迫しています。長時間労働やフリーターの急増は、社会全体の生産性を低下させ、日本経済の成長の妨げにもなっています。ものづくり技術の継承問題や工場での事故の多発も深刻です。企業をふくめた「持続可能な社会」のためには、雇用をはじめ「企業の社会的責任」をはたすことがますます重要になっています。

 大企業にあたりまえの「社会的責任」をはたさせ、安定した雇用と人間らしい生活と社会、環境との共生などをはかり、持続可能な経済社会をきずきます。

(1)労働者の雇用と労働条件のために

 完全失業者は350万人を超え、失業期間も長期化しています。ところが小泉内閣は、大企業のリストラを応援するように労働法制を改悪し、パート、契約、派遣など、いつ仕事がなくなるかわからない不安定な働き方を急速に広げています。安定した雇用の創出・確保をすすめる雇用政策への転換がもとめられます。

 (1)「安定した雇用を増やし、雇用危機を打開するための4つの緊急提案」を実行する

 ――サービス残業・長時間労働をなくして、新しい雇用を増やす……サービス残業は、平均でも年間200時間を超えており、この分を新規雇用拡大にまわせば160万人分もの雇用が生まれます。サービス残業・長時間労働をなくすことは、人間らしい働き方をとりもどすためにも急務です。

 ――未来をになう若者に仕事を。政府と大企業の責任で若者の雇用拡大を……完全失業者の半分は34歳以下の若者で、フリーターも急増しています。中小企業は、若者の正社員を増やしていますが、大企業は108万人も減らす一方で、パート・アルバイトを37万人増やしています。大企業は、新規採用抑制を中止し、若者を正社員として採用すべきです。政府も、大企業に雇用責任をはたすよう、強く働きかけるべきです。

 ――福祉、医療、防災、教育など国民のくらしに必要な分野での人手不足を解消する……国民生活に必要な分野での人手不足は、住民サービスの低下にもつながっています。保育園への待機児童は増え続け、介護や医療でも、現場は深刻な人手不足が続いています。防災でも、市町村の目標に対して消防士は5万人も足りません。また教員は、「30人学級」の実施や複数教員配置などをすすめ、新規採用を増やしていくべきです。

 ――国が、自治体を財政的に支援し、地域での雇用対策をすすめる……地方自治体の雇用創出計画に、国が財政支援をおこなう仕組みを強化し、自治体が、地域経済の振興と雇用確保を効果的にすすめられるようにします。

 (2)乱暴なリストラを抑え、雇用をまもるルールをつくる

 日本では、労働者と雇用をまもるルールがきちんと確立していません。労働者の人権を踏みにじった違法、脱法のリストラが横行し、希望退職や転籍の強要で大量の人員整理、事実上の整理解雇が大規模におこなわれています。人間らしい社会は、人間らしい労働生活があってこそ実現します。日本共産党は、労働者の人権をまもり、人間としての生活を尊重した労働契約のルールを確立する「解雇規制・雇用人権法」を提案します。

 ――正当な理由のない解雇の禁止、人員整理計画の事前協議制の確立……希望退職の募集、工場閉鎖・縮小など雇用削減の計画は、労働者代表、関係自治体との事前協議を義務づけます。裁判所の判例で確定している整理解雇四要件((1)解雇しないと会社が存続しない(2)解雇回避の努力(3)人選が合理的(4)労働側との協議をつくす)をいそいで法制化します。

 ――希望退職や転籍など「退職」を強要するための人権侵害を許さない……転籍や希望退職にあたっての強要行為を厳格に規制します。転勤させるさいの家族的責任、家庭生活への配慮を義務づけます。

 ――派遣やパート、有期雇用などの労働者の雇用と権利をまもる……パート労働者への差別・格差をなくし、派遣労働者が、派遣先で正社員となる道を広げます。有期雇用は、臨時の仕事など合理的な理由がある場合に限定します。

 (3)失業者への生活保障と仕事の対策をすすめる

 (1)雇用保険の給付期間を一年間まで延長する、(2)雇用保険が切れ、生活が困窮する失業者への生活保障制度を創設する、(3)子どもの学費・授業料などの緊急助成制度、住宅ローンのつなぎ融資など、家庭と家族を維持するための制度を創設する、(4)臨時のつなぎ就労の場(新しい失対事業)を国と自治体が協力してすすめる――という緊急対策をとります。

(2)金融制度は公共的責任を優先に

 小泉内閣発足後の2年4カ月に、4万4000件もの企業倒産が起きています(負債1000万円以上、帝国データバンク資料)。それ以前に比べて9%以上もの増加です。中小企業は、不況による売り上げの落ち込みのうえに、貸し渋り・貸しはがしや金利引き上げなど、金融の道を断たれて、次々に倒産や経営難においこまれています。

 経済の現場に資金を安定的に供給することは、金融の公共的責任です。ところが小泉「構造改革」は、この公共的責任をないがしろにし、日本の金融を異常事態におとしいれてしまいました。すでに大銀行を中心に33兆円もの公的資金が投入され、日銀の「超金融緩和」策で銀行には「ジャブジャブ」といわれるほどの潤沢な資金が供給されています。ところが、その資金が銀行から先にまわらず、経済の現場、とりわけ地域経済をささえている中小企業は、正反対の「超金融引き締め」状態になっています。小泉内閣が、経済の動向も、経営の実態も無視して、乱暴な不良債権処理を強行しているために、“経済の血液”である金融を「収縮」させてしまったからです。

 小泉内閣発足前とくらべて、金融機関の企業向け貸し出しは61兆円も減少しました。このため、黒字の企業まで資金繰りの困難から倒産するという事態が起きています。不良債権処理のテンポをいっそう速める「竹中プラン」が強行されれば、中小企業の倒産がますます増えることは必至です。

 いくら超低金利にしても企業に資金はまわらず、庶民の貯蓄の利子だけが消えてしまった――どちらをとっても経済に大きなマイナスです。中小企業の経営と庶民の貯蓄をまもる金融行政に転換します。

 (1)中小企業を生かす金融行政に転換するため「4つの緊急措置」を実施する

 ――政府が銀行に押しつけている「1年間で5割、2年間で8割」「04年度までに不良債権比率を半減」などの機械的な方針で、貸し渋り、貸しはがしが強まり、中小企業が倒産に追い込まれています。こうした機械的な「不良債権処理」スケジュールを撤回させます。

 ――本業の経営が黒字でも、資産デフレで担保価値が下がったら「不良債権」扱いするといった中小企業の資産査定方式を、企業経営の実態を反映したものにあらためさせます。

 ――わが党も要求して、国民の運動で実現した「借り換え保証制度」をはじめ、中小企業への公的金融支援を拡充します。

 ――ヤミ金融をはじめ、高利貸し、暴力金融の被害を根絶します。

 (2)利用者・国民はそっちのけで、銀行の都合のための郵政民営化に反対します

 国営の郵政事業の主人公は、利用者である国民です。ところが、小泉内閣があげる民営化の理由は、「郵貯・簡保が民業を圧迫している」「金融市場をゆがめている」など、もっぱら銀行の都合ばかりです。だから、小泉首相は、郵政民営化を声高に主張しますが、郵貯や簡保を利用している国民へのサービスはどうなるのかを、具体的には何も示さないのです。

 ――庶民の貯蓄をまもる……郵便貯金は、零細な国民の貯蓄をまもることを目的とした国営の事業です。「虎の子」の生活資金を安全に貯蓄したいという国民の願いを国営事業として運営していくのは当然です。最近の世論調査でも、国民の6割が「郵政事業は国営のままでよい」と答えています。

 銀行業界の年来の主張にそって、銀行の競争相手である郵貯を「弱体化・解体」する、そのためには庶民の貯蓄がもっと冷たくあつかわれてもかまわない、という郵政民営化に反対し、郵便事業をふくめて国営事業としてのサービス向上をめざします。

 ――郵貯・簡保の資金を地域経済・中小企業に供給する仕組みを強化する……銀行の貸し渋り・貸しはがしが激しさを増し、郵貯や簡保で集められた庶民の大切なお金を、国民のくらし・営業の資金としてまわるようにすることも、ますます重要になっています。中小企業、住宅や福祉・医療施設などへの資金供給を確保することは、経済にとっても、社会にとってもきわめて重要であり、そのための公的金融の役割はいっそう高まっています。郵貯・簡保の資金を、ムダな公共事業につぎ込んだり、投機市場で「自主運用」するのではなく、国民生活向け財投機関への出資をふやして、中小企業と地域経済に良質な資金を供給できるようにします。

 郵政事業をほんとうに国民に開かれた国営・公営の事業にするためには、大きな改革も必要です。何よりも、郵政官僚を参院選で自民党の比例候補としてかつぎ、特定郵便局長や郵政職員を締め付けて自民党票をかき集めた高祖派選挙違反事件や特定郵便局長への渡切費流用事件のように、自民党の郵政事業私物化、特定郵便局長の「世襲制度」をはじめ利権と不正に徹底的にメスを入れることが大切です。

(3)中小企業の経営の発展のために

 中小企業は、事業所数で99%、労働者数の約7割を占める日本経済の主役です。中小企業の経営が上向かなくては、この大不況からもぬけだせません。

 政府の中小企業対策費は、わずか1729億円で、米軍への「思いやり予算」(2460億円)の7割しかありません。中小企業の技術開発支援、仕事づくりへのきめ細かい支援策、下請け被害の防止、地場産業対策の強化など、中小企業向け予算を大幅に増やします。そして、中小企業の経営をまもるルールを確立します。

 (1)大型店の出店・撤退を規制し、消費税の免税点引き下げに反対する

 大型店の身勝手な出店や撤退を規制するルールを確立し、商店街の衰退に歯止めをかけます。零細業者に重い負担を押しつける消費税の免税点引き下げなどに反対し、来年4月からの実施中止をもとめます。

 (2)納税者の権利をまもる「納税者憲章」を制定する

 サミット諸国で「納税者の権利憲章」がないのは、日本とロシアだけです。納税者の申告納税権、調査の事前通知やプライバシー保障、立会人を置く権利など適正な税務調査を受ける権利、税務署の推計課税を限定し、処分に不服のある場合の救済をもとめる権利など、納税者の権利をまもるルールを確立します。

 (3)親企業と下請け企業との対等平等な関係を築く

 欧米では、親企業と下請け企業との関係は「対等平等」が原則ですが、日本には、弱い立場の下請け企業をまもるルールがあまりにも貧弱です。単価はたたかれ、納期は無理を言われ、それがいやなら仕事を打ち切ると脅される、こんな大企業の横暴勝手があたりまえのようになっているのは日本だけです。

 下請代金支払遅延防止法、下請中小企業振興法という法律がありながら、これに違反する行為が横行しています。行政の側から系統的に「立ち入り検査」をおこない、大企業・親会社にペナルティーを科すなど罰則を強化し、ただちに是正させます。

 長年の中小企業団体のみなさんの運動と日本共産党の要求が実り、下請二法の対象が製造業からサービス業などに拡大されました。実効あるものにするためにも、下請検査官の大幅増員が必要です。さらに、発注元大企業の責任を二次以下の下請けにも及ぶようにする、一方的な発注の打ち切りや大幅な発注削減、終業後発注・翌日納品、休日前発注・休日明け納品などを規制するルールをつくります。

(4)人間と環境の共生のために

 小泉内閣は、「規制緩和」至上主義にとらわれ、環境保全や公害規制など必要な制度化にまともにとりくもうとしていません。日本の経済社会を持続可能なものにするために、環境との共生をはかるルールの確立が急務になっています。

 ――地域レベルでの環境破壊をおさえる……各地で起きている環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則(2)予防原則(3)住民参加(4)徹底した情報公開――というルールの確立が欠かせません。

 大量の不法投棄が繰り返され、周辺の汚染が危険視されているゴミ問題では、ごみの“焼却中心主義”“埋め立て中心主義”からの脱却をはかることが必要です。設計・生産段階からゴミになるものを減らすために、OECD(経済協力開発機構)も推進してきた「拡大生産者責任制度」のルールにたって、自治体と住民に負担を押しつける現行のリサイクルシステムを抜本的に見直し、企業の責任と負担をもとめることが必要です。産廃の不法投棄には、徹底した立ち入り検査を実施し、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させます。

 政府が導入を急がせたごみ処理システムで爆発事故やトラブルがあいついでおり、改善と補償を国とメーカーの責任でおこなうべきです。

 ――ディーゼル車による環境汚染の規制……西淀川、東京など各地の大気汚染訴訟判決では、健康被害と自動車排ガスとの因果関係を認めました。判決は、健康被害が予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーに社会責任上問題があったことも指摘しています。現在も被害者は増え続けており、早期・迅速に救済策を講じます。メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化するよう要求します。判決をふまえ、新たな措置をとることもふくめて、すべての被害者の迅速な救済を国・自治体にもとめるとともに、使用中のディーゼル車の汚染物質除去装置をメーカーが開発して社会的責任をはたすよう要求します。

 ――地球的規模での環境破壊をおさえる……京都議定書にもとづく温暖化ガスの削減目標の達成は、日本の世界にたいする約束です。しかし、政府があてにしていた原発の新増設がゆきづまる一方、産業界が「自主的なとりくみの尊重」と言い張っているために、目標の達成が危ぶまれています。EU諸国で削減のために導入されている政府と産業界との協定制度を日本でも導入し、産業界は地球環境の分野でも社会的責任をはたすべきです。

〈4〉農林漁業を再生し、食料自 給率の向上、安全な食料の安定供給と地域経済の振興をはかる

 日本は、食料の6割を海外に依存する、先進国でも他に例のない国になっています。そのうえ小泉内閣は、農政「改革」といいながら、日本農業をささえてきた諸制度を次々にこわそうとしています。農業全体を輸入自由化や市場競争にゆだねて、耐えられないなら、つぶしてしまうというのです。日本共産党は、政府の食料・農業政策を根本から転換させて農業を基幹的な生産部門に位置づけ、食料自給率を早期に50%台に回復させ、さらに60%台をめざします。農林漁業の再生を、地域経済振興の柱にします。

 (1)WTO農業協定の改定を求め、食料主権を回復する

 アメリカなどの輸出大国と多国籍大企業の利益が拡大する一方で、日本など輸入国や各国の家族経営は深刻な打撃を受けています。国内農業の維持、食料の安定確保はどの国にとっても大事な権利です。WTO(世界貿易機関)交渉で、日本の米を自由化の対象から外すなど農業協定を改定させ、食料主権を回復することを強く主張します。

 (2)価格・所得保障を農業予算の主役にし、家族経営や多様な担い手をささえる

 価格・所得保障が農業予算に占める割合は、アメリカで約5割、英独仏では7割で、まさに農業予算の主役です。ところが日本では、価格・所得保障は3割にすぎず、それすら、主要食糧法の改悪で、大幅に減らそうとしています。

 政府の米の需給と価格を安定させる役割をまもり、米の輸入を削減・廃止するとともに、市場原理一辺倒の米「改革」を中止し、政府の100%拠出による不足払い制度を創設し、コストにみあう生産者価格(60キロあたり平均1万8000円程度)に近づけます。

 こうした施策のために、3兆1000億円を超える農林水産予算の半分を占める公共事業費を、真に必要な事業に厳選する、無数の公益法人への補助金・委託金を見なおすなど、ムダをはぶき農業予算を改革することで、1兆円程度の価格・所得保障予算を確保します。

 小泉内閣がすすめている農家全体のわずか数%の大規模経営だけを対象にした「担い手対策」では、地域農業は衰退するばかりです。中山間地域の直接支払い制度を改善・拡充し、平場地域での営農による国土・環境の保全など農業の多面的機能まで対象を広げ、農地の有効利用をはかります(水田・畑作10アールあたり1万円)。安易な株式会社による農地取得は、農地の荒廃につながる恐れがあり、反対します。

 (3)消費者参加とチェック体制の強化で食の安全を確保する

 BSE(牛海綿状脳症)など食品にかかわる事件が多発しており、「食の安全確保」は、政府が本格的にとりくむべき課題です。食品安全委員会への消費者代表の参加、不十分なリスク管理体制の充実をはかり、輸入農産物のチェック体制の強化と原産国表示の徹底をはかります。遺伝子組み換え食品の輸入承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響にたいする厳格な調査・検証を義務づけます。こうしたとりくみを推進するためにも、「消費者の権利」を明記し、消費者代表の参加や消費者団体の訴訟権をきちんと位置づけるなど消費者保護基本法の改正を要求します。

 大規模生産・大量流通など経済効率最優先で、農薬や化学肥料へ過度に依存する生産・供給体制をあらため、有機農業など生態系と調和した生産、地産地消のとりくみを支援します。

 (4)林業と漁業を振興し、地域経済の活性化をはかる

 国産木材・木製品の利用拡大、バイオマス発電の推進、間伐など森林整備の促進、サンマなど200カイリ内の多獲性魚の利用拡大と水産資源の保全と管理など、国内資源の有効活用に力を入れます。

〈5〉危険な「原発だのみ」をやめ、地域の自然エネルギー開発など、安全なエネルギー供給をめざす

 エネルギーは食料とともに、経済・社会の発展の基盤です。ところが日本のエネルギー自給率は、わずか5・6%にすぎません。政府がすすめるエネルギー政策は、あいかわらず原発の新増設をあてにする一方、地球温暖化ガスの削減に不可欠なエネルギーの開発・利用の見直しは不十分なままです。日本共産党は、地球サミットでも確認された持続可能な発展を実現するために、エネルギー政策の転換をもとめます。

 (1)プルトニウム循環計画を中止し、既存原発の総点検と計画的縮小をすすめる

 原発という未確立な技術に頼ったエネルギー政策は、深刻な行きづまりに直面しています。損傷隠しによる東京電力の全原発停止とそれによる夏場の電力供給への不安、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に関する国の設置許可無効の判決、東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発への地震研究者からの警告が示すように、政府の原発拡大政策は無謀であり、日本の経済・社会を不安定にします。安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとります。破たんが明りょうになったプルトニウム循環計画を中止し、原発の危険を増幅するだけのプルサーマル計画はとりやめます。既存原発の計画的縮小をすすめます。

 (2)風力や小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発を促進する

 エネルギーの自給率の引き上げや地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・活用に本格的にとりくむ必要があります。風力、太陽光・熱、小水力、波力、地熱や、畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、地域に固有のエネルギー源です。さらに、電気やガスを「収穫」することで新たな収入が生まれ、雇用や技術、副産物の還元などで地域経済に活力を与える可能性ももっています。その実現のためにも、電力会社に買い取りを義務づけ、事業者に意欲をわかせる売り渡し価格を設定すべきです。マイクロ水力発電を促進するために、もともとの利水目的にあわせて発電後も使用できる水利用として、水利権の合理的な調整をおこなうようもとめます。電源開発促進税や石油関連諸税などの税制の見直し、二酸化炭素の排出量に応じた環境税の導入によって、財源の充実をはかります。

〈6〉地方財源を拡充し、住民のくらしと地方自治をまもる

 自治体が住民のくらしと福祉をまもるという本来の仕事を投げ捨て「自治体が自治体でなくなる」状況が深刻になるなか、小泉自公政権がすすめている市町村合併の押しつけ、「三位一体の改革」はこれに拍車をかけています。日本共産党は、住民のくらしと地方自治をまもるため、国と自治体の関係を次のようにきりかえます。

 (1)市町村合併の押しつけをやめ、地域振興をはかり、地方自治をまもる

 3000余の市町村を1000にまでしようという国による合併押しつけは、自主的な地域の発展とくらし向上の努力をさまたげ、地方自治をおかすものです。このねらいは、国から地方への財政支出を削ることにあり、地方の切り捨てです。合併を誘導し、“強制”するための特例地方債や地方交付税の措置をあらためさせ、国による合併押しつけをやめさせます。小規模自治体の権限を強制的に取り上げる検討をやめるとともに、この間すすめてきた小規模自治体の交付税削減をもとにもどします。

 (2)開発優先の「逆立ち」行政の旗振りをやめ、「自治体らしい自治体」づくりの支援に転換する

 政府は地方自治体に、福祉や教育の予算の大幅な削減をもとめる一方で、公共事業費の削減は別枠にして、大企業・財界のもうけにつながる「都市再生」に集中することをもとめています。この政府の計画が、日本共産党以外の「オール与党」がささえる自治体での開発優先の「逆立ち」政治を引っ張っています。地方交付税などをつかって地方に公共事業をすすめさせてきた仕組みや「都市再生」など大規模開発の新たな押しつけをやめさせ、くらし、福祉や教育など、自治体が自治体ほんらいの仕事にとりくめるよう、財源的な保障の充実へと転換させます。

 (3)国から自治体への財政支出の削減でなく、地方財源の拡充をおこなう

 小泉内閣の「三位一体改革」なるものは、地方に一定の権限と税源を移す代わりに国庫補助・負担金を大幅に廃止・縮減し、結果として国から地方への財政支出を削減しようというものです。いま廃止・縮減の重点的対象にあげられている国庫補助・負担金は、福祉、教育に関して、国が義務として地方に支出すべきものです。これを廃止・縮減すれば、国民の権利として保障すべき福祉や教育の水準を保てなくなってしまいます。このような、住民サービス確保のための国の支出金を削減するやり方はやめるべきです。地方交付税の縮小は、地方・農村部の自治体の財政に重大な困難をもちこむものであり、反対します。

 ――税源の移譲をすすめるとともに、交付税の財源保障・調整機能を拡充する……地方自治体への税源移譲は、地方財源の拡充のため、所得や資産にかかる税を中心におこないます。税源移譲には、都市と農山村自治体との税収格差を広げるという面もありますから、それにたいしては、地方交付税制度のはたすべき財源保障・調整の仕組みを充実させ、税源を移譲されたものの、実際には課税対象の少ない自治体の財源を保障するようにします。

 これらの財政措置によって、福祉や教育のナショナルミニマムを維持・向上させる財源を保障するとともに、自治体の独自のとりくみの強化につなげます。

 ――公共事業などの個別補助金制度を、総合補助金制度にあらためムダをなくす……国から自治体への「ひも付き」として大きな問題になってきたのは、公共事業を中心とした個別補助金制度です。政治家や官僚が「口利き」「個所づけ」で介入しやすく、ムダな事業の温床にもなってきました。これらを整理・縮小し、自治体がみずからの基準と裁量で効率的に事業がすすめられるよう、総合補助金制度を導入します。

〈7〉女性が生きいきと力を発揮できる平等な社会をめざす

 女性は全就業者の4割を超え、ほとんどの職種に進出し、生産と営業の重要な担い手となっています。ところが、賃金が男性の5割という賃金格差、女子学生への就職差別など、女性にたいする差別は根づよく残っています。さらに、この間の不況・リストラは、労働条件の男女格差をいっそう広げつつあります。また、住民運動やボランティアなど草の根の活動でも女性が力を発揮して活躍しています。

 女性の社会的進出をいっそうたしかなものにするためにも、女性が生きいきと力を発揮できるような平等な社会をつくることが急務です。今年7月の国連の審査でも、日本政府に対して改善の勧告がだされ是正の措置を厳しくもとめています。

 ――女性が正当に評価され、安心して働き続けられるルールをつくります……国連の女性差別撤廃委員会から改善が厳しく指摘されているのは、異常な男女賃金格差です。同一労働にたいする同一賃金を徹底します。

 パート労働法を改正し、パート労働者への差別的取り扱いの禁止、均等待遇の原則を明記します。ほんらいなら違法行為である妊娠・出産にともなう解雇や不利益扱いも横行しています。監視・監督体制の強化や必要な法令整備をすすめます。

 ――女性の独立した人格を尊重し、社会的、法的な地位を高めます……日本は世界でも数少ない夫婦同姓制度を取っている国です。民法を改正し選択的夫婦別姓の実現、女性のみの再婚禁止期間の見直しなどをただちにおこないます。

 配偶者間暴力防止法(DV法)の成立後、裁判所による保護命令が1600件も出されるなど被害者保護がすすめられてきました。被害者の自立支援を民間まかせにせず、国・地方自治体の責任を強化して、相談体制の確立などをはかり、予算を大幅に増額します。

 ――女性の健康と母性を保護する環境整備をいそぐ……労働基準法の女性保護規定の撤廃後、女性の健康・母性破壊が深刻になっています。長時間労働をなくすとともに、女性保護規定の条項を復活させるなど、働く女性の母性をまもります。

 産む性としての女性の一生の健康をトータルなものとして考え、研究、診察する女性専用外来が医療関係者の努力と女性たちの要求で設置され、歓迎されています。国公立病院で率先して開設するとともに、民間病院での開設と運営への助成、保健所での女性専用相談窓口の開設、24時間保育など女性医師の働く条件整備を急ぎ、拡充をはかります。

〈8〉安心して子どもを生み育てられる条件づくりを

(1)少子化傾向を克服する努力を強める

 少子化傾向がいっそうすすみ、昨年の出生率も1・32と過去最低を更新しました。いま、年齢ごとの人口統計をとると、世代が50年違うと、その年齢の人口数が半分に減る傾向がでています。このままでは、50年たったら人口が2分の1、100年たったら4分の1になってしまう計算になります。日本の社会そのものの衰退、社会の存続にかかわる危機がひきおこされてしまいます。

 なぜ、このようなことになったのでしょうか。日本が、どんどん子どもを生み育てることが大変な社会になってきたからです。いまの政治が、国民のくらしを痛めつけ、個人の生活も家族の一員としての責任も無視した「働かせ方」を野放しにしてきたためです。国民のくらしをささえ、人間らしい生活をとりもどす“ルールある経済社会”の方向への転換こそ、少子化傾向を克服する道です。そのため、次の四つの対策にとりくみます。

 第1は、長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方にすることです。

 激しいリストラのなかで、長時間労働・サービス残業がひどくなり、とくに、子育て世代の30代は、男性の4人に1人が週60時間以上働くなど、もっとも労働時間が長い世代になっています。

 働くルールの確立で、人間らしい生活を取り戻します。子育て中の労働者には、男女ともに、変則勤務や夜間勤務、単身赴任を制限し、残業も本人同意を必要とするなどの措置をとります。育児休暇を男女ともとりやすくするため、育休中の賃金保障を6割に引き上げる、代替要員の確保、職場への原職復帰、育休取得による不利益をなくすなどの改善をすすめます。

 第2は、若者に安定した仕事をつくることです。

 若者の5人に1人がフリーターという不安定な仕事しかなく、完全失業者の半分が若者です。政府も「若年の雇用が悪化し、経済的基盤が弱くなっているため、子育てへの経済的な負担感がますます高まり、少子化がさらに進むことが懸念される」(国民生活白書)としています。パート・アルバイトで働く若者の6割が年収100万円未満という低賃金です。これでは自立して子どもを生み育てる経済的な基盤がありません。

 大企業は、この間、若者の正社員を108万人も減らし、派遣や臨時、アルバイトなどの不安定な雇用に置き換えてきました。政府と大企業の責任で若者の安定した仕事をつくるべきです。

 第3は、男女差別・格差をなくし、女性が働きつづけられ、力を生かせる社会にすることです。

 日本の労働者の4割にのぼる女性の力を正当に評価し、生かせないようでは、産業や企業の未来もありません。男女賃金格差の是正、女性差別の解消など、企業に雇用のすべての面で「男女平等」をつらぬかせるようにします。

 第4は、出産・育児と仕事の両立を応援することです。

 少子化のなかでも保育所への待機児童は増えつづけ、昨年10月には6万2000人に達しました。産休明け、育休明けなどに機敏に対応できるよう保育所の増設と保育条件や保育時間の改善、高い保育料の負担軽減は急務です。すべての小学校での学童保育をめざし、国の補助金を増額します。

(2)教育条件を向上させ、国の統制から「地域発・学校発」の教育改革にきりかえる

 (1)政治の仕事の中心を教育条件整備にきりかえ、遅れた教育条件を欧米並みに引き上げる

 教育に対する政治の第1の責任は条件整備です。ところが、日本の国・地方の教育予算の水準は欧米に比べて7割の低さです。そのため、欧米では1学級30人以下なのに日本は40人学級、ヨーロッパでは幼稚園から大学まで無料の国が多いのに日本は法外な父母負担、などとなっています。

 日本共産党は教育条件の本格的な向上にとりくみ、「30人学級」実現、義務教育費国庫負担金制度の縮小・廃止の阻止、私学助成の抜本的増額と私立学校の父母負担軽減、学費値下げと奨学金制度の拡充、学校耐震化などの施設整備の推進、障害児学級廃止などを許さず特別なニーズをもつすべての子どもへの行き届いた教育、学校図書館や公立図書館の拡充、夜間中学校の増設などをすすめます。

 (2)国の教育介入をやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が中心の教育改革にきりかえる

 自民党政治は、教育にお金をださずに、教育の中身に口をだすことばかり熱中してきました。国連からもその異常性が問題にされる競争教育、管理教育で、学校を荒廃させてきました。学習指導要領を「とにかく内容を3割減らせ」といっそう系統性をなくし、学力への不安を広げています。国の研究所の研究員の調査でも、校長をふくめ九十数%の教員が、「いまの教育改革は現場の実態とかみあっていない」と回答しています。

 日本共産党は、政府の教育介入の仕組みをやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が中心の「地域発、学校発の教育改革」にきりかえます。そのため(1)教育委員会を、住民に開かれた、民主的な機関にする。小中学校の教員人事権は基本的に県から市町村に移行、(2)学校運営への父母、子ども、教職員、住民の参加を重視します。こうしたなかで、基礎的な学力の保障や市民的道徳の教育、競争と管理の教育の改革などをすすめます。

 (3)教育基本法の改悪の動きに反対し、基本法を生かす方向にきりかえる

 政府・自民党は、今日の教育の荒廃の原因を教育基本法にもとめ、その改悪の策動を強めています。しかし、これには根拠も道理もありません。反対に、政府・自民党が長年にわたって、「人格の完成」を教育の目的とし国家権力による「不当な支配」を許さないなどの、教育基本法に明記された理念と原則を踏みにじってきたことが、教育の荒廃をつくりだしたのではないでしょうか。日本共産党は、教育基本法改悪のたくらみをやめさせ、基本法を教育に生かすようにします。

〈9〉社会の道義的危機の克服を、国民的対話と運動をつうじてすすめる

 重大で衝撃的な少年犯罪があいつぎ、いじめ、児童虐待、少女買春などが頻発していることにたいして、多くの国民が不安をもち、心を痛めています。

 わが国の社会が直面している道義的危機を克服する課題、わけても子どもたちに健全な成長を保障することは、21世紀に民主的な社会をきずいていくとりくみの重要な内容です。日本共産党は、国民的な対話と運動をひろげ、みなさんとともに問題の解決の方向を探求し、現状打開のための努力をつよめます。

 社会の道義的危機の大もとには、自民党政治のもとでの国民の生活・労働・教育などでのさまざまなゆがみや矛盾、困難の蓄積があります。たとえば、リストラ、雇用破壊、長時間労働は、「家族そろって夕食を」のだんらんや家族のあいだのコミュニケーションを奪っています。弱肉強食の競争主義は、国民にゆとりのない生活を押しつけ、精神生活に否定的な影響をおよぼしています。国連からも「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもたちが発達のゆがみにさらされている」と批判されるほど異常な競争主義・管理主義の教育は、子どもたちの心と成長を大きく妨げています。政界・経済界であいつぐ不正・腐敗事件も、子どもたちにはかりしれない有害な影響をもたらしています。さらに、他国への戦争、テロを容認しあおり立てる政治家の発言が大問題になりましたが、この根っこにあるアジア諸民族を蔑視(べっし)する独善的な排外主義の台頭も深刻な問題です。

 日本共産党は、これらのゆがみや矛盾、困難を民主的に打開し、「民主的なルールある社会」をきずきあげるたたかいを、国民のみなさんとともにすすめます。

 同時に日本共産党は、社会が独自にとりくむべき問題として、次の四つの角度でのとりくみを重視します。

 ――民主的社会にふさわしい市民道徳の規準をどう確立してゆくか……市民道徳は、「天皇のために命をささげること」を最高の道徳とした戦前の「教育勅語」のようなものからは生まれません。私たちは、侵略戦争の反省からつくられた憲法や教育基本法が、市民道徳を形成する土台になると考えます。同時に、市民道徳の規準は、政府や一政党が決めるものではありません。広範な国民的な討論と合意で形成することを何より大切にします。

 ――子どもをまもるための社会の自己規律をどうきずくか……子どもをまもることは、社会の当然のルールです。ところが、この分野で日本は国際的にも遅れが深刻な社会です。とくに児童買春や性の商品化では、国連子どもの権利委員会からきびしい勧告がだされています。メディアでの暴力や性の表現が、子どもに野放しになっている点などでも立ち遅れています。子どもをまもるという社会の規律を各分野で確立するために努力します。

 ――子どもが自由に意見をのべ、社会に参加する権利をどのように保障するか……子どもは社会の一員として尊重されてこそ、自分と他人を大切にし、社会のルールを尊重する主権者として成長することができます。子どもの権利条約で保障された「意見表明権」や社会参加を保障する社会をつくります。学校運営への参加や地域社会への子ども参加などの流れを大きく前進させます。

 ――子どもの成長をささえあう草の根からのとりくみをどうすすめるか……市民道徳は、言葉だけでなく、現実の人間関係、社会関係をつうじてこそ、身についていくものです。子どもの成長をささえあう、草の根の多様な運動がひろがっています。私たちもその一員として力をつくすとともに、とりくみの協力、共同をひろげます。

〈10〉「政治とカネ」のよごれた関係を断ち切り、民主的政治制度の実現を

 国会が開かれるたびに、自民党議員の金権腐敗が問題になる――いったい、何年こんなことが繰り返されてきたでしょうか。この間も、鈴木宗男議員の汚職、さらには公共事業をめぐって、加藤紘一自民党元幹事長、井上裕前参議院議長、大島理森前農水相らが、議員辞職や大臣辞職に追い込まれたように、税金を食い物にする腐敗事件が相次ぎました。この根源に、企業・団体献金があります。

 また、選挙制度を改悪して、気に入らない野党を国会から締め出し、主権者国民の声を反映しない国会に変質させる策動も強まっています。

 日本共産党は、憲法の主権在民と民主主義の原則に反するこのようなくわだてに強く反対し、民主主義をつらぬく政治の仕組みにあらためます。

 (1)企業・団体献金をただちに全面禁止する

 いかに利益をあげるかが目的の企業が、なんの見返りもなしに多額の政治献金をするわけがありません。日本経団連の奥田会長が、「日本経団連がもとめる政策を実現してくれる政党、政治家には献金をあっせんする」とのべたように、「金の力で政治を買収」し、思い通りに動かそうとするのが企業献金のねらいです。大企業からのヒモつき献金にたよっていて、どうして国民のための政治ができるでしょうか。

 金の力で政治が動かされれば、国民の声は踏みつぶされてしまいます。たとえば、これまで住民が反対するムダな公共事業がどれほど強行されてきたことでしょう。そのほとんどが、自民党議員によって利権化され、巨額の企業献金が吸い上げられていきました。赤字で法人税を納めていないゼネコンですら、自民党に巨額の献金をしています。公共事業を受注するためです。

 日本共産党が、現に実行しているように、企業・団体献金を全面的に禁止します。

 また、それ以前にも、公共事業受注企業からの献金禁止、政党支部をトンネルにした企業献金の抜け道づくりをきびしく規制します。自民党、公明党、保守新党の与党がねらっている、献金の公開基準の引き上げに反対します。

 (2)国民の税金を政党が分け取りする政党助成法を廃止する

 日本共産党は、政党助成金制度がつくられる際、国民の税金が支持もしていない政党に流れることは、憲法が保障する「思想・信条の自由」を侵すことになるとして反対しました。また、政党助成金制度をつくっても、企業・団体献金を禁止しないかぎり汚職・腐敗はなくならないと指摘しました。現状は、まさにこの指摘どおりになっています。しかも、政党助成金は、いったん政党に渡れば、あとは飲み食いなど、何に使おうと勝手放題という“つかみ金”になっています。

 民主主義を唱える政党なら、政治資金は草の根の活動を通じて、国民一人一人から浄財を集め、それで活動するのが当然です。現に、日本共産党は、政党助成金を受け取らず、国民のみなさんのカンパや「しんぶん赤旗」の売り上げ、党費でまかなっています。

 国民の税金を分け取りする政党助成法は、廃止します。

 政官財の腐敗を一掃するために、天下り禁止や行政を監視する制度をつよめます。

 (3)選挙制度の改悪に反対し、民意を反映する選挙制度改革を

 主権者国民の「政治監視の目」が行き届くことこそ、金権腐敗根絶のいちばんの保障です。そのためには、選挙制度を民主的に改革し、有権者の選択が公正・正確に議席に反映させることこそ必要です。

 ところがいま、これに逆行するくわだてが強まっています。2000年の総選挙の前には、国民のなかにある多様な意思や要求を国政に反映できなくする定数削減が強行されました。自民党内には、衆院選挙制度を改悪して比例代表制を廃止しようという動きが根強くあります。野党の民主党も、こんどの「マニフェスト」で、「衆議院比例代表制議席定数を80議席削減する法案を国会に提出」するとしています。ほかの野党を国会から追い出して、自民党・民主党の「2大政党制」をつくりだす方針からです。比例代表制は、民意を比較的正確に反映する制度です。比例代表制を切り縮めて小選挙区制中心の制度になれば、国民のなかにある少数意見がまったく切り捨てられるだけでなく、国会の構成を、民意を反映しない極端にゆがんだものにしてしまいます。こういうやり方に反対です。

 衆議院の選挙制度は、小選挙区制を廃止し、全国11ブロックの比例代表制のみの制度への改革をはかります。

〈11〉イラク派兵と先制攻撃戦略への参加に反対する

 (1)自衛隊の海外派兵に反対する

 小泉内閣は、アメリカのイラク戦争に、世界中のきびしい抗議の声を無視してまっさきにもろ手をあげて賛成し、国民の反対の声を踏みにじって、自衛隊をイラクに送り込む法律を強行しました。米英の軍事占領にたいするイラク国民の不満と怒りが日増しに高まり、占領政策そのものがゆきづまり、戦争の口実とされた「大量破壊兵器」も見つからず、米英国内でも疑問と批判が大きくなっているいま、この法律を発動して、戦後はじめて地上軍を外国に派兵しようとしています。

 アメリカのイラク占領に自衛隊を送り込むことは、イラクの復興に結びつくどころか、混乱状態をいっそう深刻にし、イラク国民をますます苦しめるだけです。さらに、わが国もまた、無法な占領支配の共犯者として、アラブ・イスラムの人びとの全体を敵にまわすなど、とりかえしのつかない道に踏み入れることになります。小泉首相が、「殺し、殺されることがありうる」とのべたように、イラクの民衆に発砲し、自衛隊員が殺されるということが現実になる危険もあります。憲法9条とあいいれないことは明らかです。イラクへの自衛隊派兵はきっぱり中止すべきです。

 数千億円から1兆円にのぼるといわれる巨額のイラク占領費の負担はやめさせます。

 日本共産党は、アメリカの戦争に自衛隊を参戦させ、国民を罰則つきで強制動員する有事法制や海外派兵法の発動を阻止し、自衛隊のイラク派遣を具体化させないために、広範な国民のみなさんと共同を広げることに力をつくします。

 (2)米軍基地の異常をただし、米軍の横暴勝手をやめさせる

 無法な米軍の空母艦載機などによるNLP(夜間離着陸訓練)や超低空飛行訓練は、米本国はもちろん、他のどの同盟国でもやっていません。こんな勝手放題をきぜんとした外交でやめさせます。米兵による女性暴行事件や傷害事件などのたびに大問題になる日米地位協定問題でも、自公保政権は、国民の強い改定要求に背を向けて、「運用改善」にとどめています。日本共産党は、日米地位協定を抜本改正し、世界に例のない米軍優遇の特権措置をなくします。

 佐世保基地を中心にした「遠征攻撃群」の新編成や三沢基地への太平洋艦隊の電子スパイ機部隊司令部の移転、横須賀基地の原子力空母母港化は、沖縄の名護市への最新鋭基地建設とともに、世界への出撃拠点として、21世紀中にもわたって基地を固定化、強化しようとするものであり、断じて認められません。

 米軍の無法な活動を支え、米軍が居座る根拠にもなっている「思いやり予算」は、中小企業予算の1・3倍にまで膨張しています。安保条約上も何の義務もないものであり、ただちにやめさせます。

 ミサイル防衛やヘリ空母の導入などの新たな軍拡計画は、米国の先制攻撃戦略、軍事介入態勢に日本をいっそう深く組み込み、強化するもので、世界とアジアにとっての脅威以外のなにものでもありません。いま平和外交こそ力を発揮する時代であり、抜本的な軍縮をすすめます。

 日本共産党の国会での追及により、アメリカが核兵器を日本に持ち込む密約の存在が明確になりました。政府に密約の全ぼうを公開させ、核持ち込みの心配がない日本にします。核兵器廃絶を緊急課題として、被爆国日本がその先頭にたつようにします。

 (3)「ミサイル防衛戦略」への参加に反対する

 アメリカのブッシュ政権がすすめている「ミサイル防衛戦略」は、相手国のミサイル攻撃を打ち破り、無力化する態勢をつくることによって、アメリカの核戦略の優位を絶対的なものとし、報復の心配がなく先制攻撃を可能にしようとするものです。

 日本政府は、その開発・配備に参加することを事実上約束しましたが、これは巨額の財政支出をともなうだけでなく、憲法を踏みにじった「集団的自衛権」の行使そのものとなり、地球的規模のアメリカの核戦略に日本を組み込む事態をまねくことになります。この計画には、すでに中国やロシアも強い懸念と批判を表明しており、アジア太平洋地域の国ぐにとの緊張を激化させる危険も重大です。

 日本共産党は、「ミサイル防衛戦略」に反対し、日本の参加をただちに中止することを強く要求します。

〈12〉北朝鮮問題の解決、東アジアの平和と安定のために

 北朝鮮問題の解決は、東アジアの平和と安定にとって欠くことのできない課題です。

 ――朝鮮半島で戦争をおこさせない……北朝鮮問題は、東アジアで戦争がおこる現実の発火点になる危険をはらんでいます。北朝鮮が、核開発にむけた動きをすすめ、“核カード”をもてあそぶ瀬戸際外交をつづければ、アメリカに先制攻撃の絶好の口実をあたえ、数十万人の犠牲者が予想される戦争に発展しかねません。戦争の火種をなくし、軍事衝突の危険をとりのぞくことは、国際社会が一致して追求すべき最優先目標です。

 日本共産党は、あくまで外交的・平和的手段によって北朝鮮問題を解決するよう、強く主張します。8月におこなわれたアメリカ・北朝鮮・中国・日本・韓国・ロシアによる6カ国協議は、各国の主張に大きなへだたりはありましたが、「対話をつうじた平和的方式」で問題を解決する努力をつづけること、お互いに「情勢をエスカレートあるいは激化させうる言行をとらない」ことで共通の認識に達するという重要な一歩を踏み出しました。北朝鮮問題の解決のために、この外交交渉を継続・前進させることを強くもとめます。

 ――国際社会が立つべき3つの原則……日本共産党はそのさい、国際社会が次の原則を堅持して解決にあたることが重要だと主張します。

 (1)北朝鮮にたいして、核兵器開発路線を放棄し、国際社会との安定した外交関係をうちたてることこそ、みずからの安全保障にとってなによりも重要であることを、道理をもって説くこと。

 (2)そのためには、北朝鮮がこれまで犯してきた、日本人拉致事件、ビルマ・ラングーンでの爆破テロ事件、日本漁船銃撃事件、大韓航空機爆破事件、麻薬など不正取引などの国際的無法行為を清算することがなによりも大切です。これらをきっぱりと清算し、真の意味で国際社会の仲間入りをするよううながすこと。

 (3)すべての当事国が、軍事対応の悪循環におちいるのではなく、それを断ち切る立場にたつこと。とくに、アメリカが北朝鮮を先制攻撃の対象の一つにしていること、北朝鮮が“核カード”を使った瀬戸際政策を繰り返していることは、平和への脅威をつくりだしています。アメリカ・北朝鮮の双方が強く自制するとともに、日本をふくむ各国が、両者の軍事的対立を抑制する方向で対応すること。

 ――日本人拉致事件を理性的に解決する……日本人拉致事件の解決は、被害者・家族にとってはもちろん、北朝鮮が国際的な無法行為を清算してゆくうえでも重要な意味をもちます。拉致事件の解決は、日朝の2国間問題にとどめず、無法行為の清算をもとめるという国際社会全体がとりくむべき課題のなかにも位置づけることができます。

 日本共産党は、北朝鮮が、1960年代後半に危険な「南進」政策をとろうとしたさいにも、70年代に当時の指導者・金日成の個人崇拝を押しつけてきたさいにも、拉致問題をはじめとする国際的無法行為にたいしても、自主独立の立場から先駆的に、もっともきびしく批判してきた党です。国会の質問で、拉致疑惑の存在を政府にはじめてみとめさせたのも日本共産党です。そして、この問題を交渉によって解決することを積極的に提言してきたのも日本共産党です。この立場を堅持して、拉致事件の解決に力をつくします。

 日本共産党は、昨年の日朝首脳会談で「日朝平壌宣言」が発表されたさい、志位委員長談話で、北朝鮮政府にたいして、日朝首脳会談であきらかにされたものが、北朝鮮がかかわる拉致問題のすべてであるのか、拉致犯罪をおこなった責任者はだれなのか、拉致被害にあった方々がどのような扱いをうけたのかなど、真相を全面的にあきらかにすること、責任者の厳正な処罰と、被害者への謝罪と補償をおこなうことをもとめましたが、これらをあらためて強く要求します。また、北朝鮮に残された家族の帰国をもとめることは、人道上当然です。

 こうした道を通じて、北朝鮮問題が道理ある解決をみれば、東アジアの平和・繁栄・友好に大きな展望が開けます。日本国民にとっても、平和と安心が確保されます。日本共産党は、国の内外で、北朝鮮問題の理性的解決のために全力をあげます。


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