日本共産党

2003年9月6日(土)「しんぶん赤旗」

チュニジアの七日間(13)

中央委員会議長 不破哲三

バルドー博物館を訪ねる (上)


写真
バルドー博物館の古代ローマ時代のモザイク・コレクションを見る不破さん(左から2人目)。後ろは森原さん、手前は説明を通訳をする尾崎さん=7月29日、チュニス

古代ローマ時代のモザイク芸術にひかれて

 七月二十九日・到着第三日。今日は、各国代表団の三方面に分かれての視察日である。

 前の日に、(1)チュニス市内のバルドー博物館、(2)ナブール市とハマメット市、(3)スース市、この三つの選択肢が示され、希望を聞かれたので、無条件で(1)を選んだ。(2)は比較的近い二つの都市、(3)は九世紀以来の旧市街が「世界遺産」に登録された都市、それぞれに魅力はあるが、バルドー博物館の世界一とも言われるモザイク・コレクションは、ぜひとも見たいと思っていたからだ。

 モザイクというのは、大理石その他の石やガラスを小片にし、それでさまざまな絵画を描きだす芸術である。源流は、紀元前のメソポタミア(現在のイラク)だと言われるが、ともかく古代ローマで一つの飛躍的な発展をとげたらしい。古代のチュニジア、つまりカルタゴがローマの支配下に入った時、流入したローマ文明の一部としてモザイク芸術が盛んになり、二世紀から四世紀にかけて、無数の作品を生み出した、という。

 チュニジア各地に、発掘された作品をおさめた博物館があるが、量質ともに抜群の収集を誇っているのが、バルドー博物館だとされる。「世界一」との評判もあるからには、収集の規模には、本家のイタリアを越えるものがあるのかもしれない。

 モザイク芸術というのは、あまり見たことがない。それだけに胸をふくらませる期待は大きい。

ブラジルの代表といっしょになる

 集合は八時半。ハマム氏の昨日の別れの言葉は、例の「シャープ」ではなく、「八時半ですから、朝を『エレガント』(優雅)にお過ごしください」だった。毎日定例の「しんぶん赤旗」記事の作成と送稿を終え、食事も「優雅に」すませたあと、ロビーで「優雅に」出発を待つ。

 行く先別にバスに乗り分けてみると、バルドーを選んだ代表はたいへん少なかった。まずあいさつをかわしたのは、エリトリアの「民主主義と正義の人民戦線」のアリー中央委員。エリトリアは、もとイタリアの植民地で、イタリアの支配から脱したのち、一時エチオピアに合併されていたが、三十年にもわたる内戦をへて一九九三年に分離・独立を実現したアフリカ北東部の国、その意味では比較的歴史の新しい国である。

 私たちの前の席に座ったのは、ブラジルの代表。日本ほどではないが、大西洋を越えるかなりの長旅をしてきた代表の一人である。

 ブラジルといえば、昨年十月の大統領選挙で庶民派の大統領が当選したことが、国際的にも大きな話題となっている。ちょうど、パリからチュニスへの途中で見たフランスの雑誌『ヌーベル・オプセルバトゥール』と新聞リベラシオンに、新大統領ルラの人気の高さを大きく報じる特集記事が出ていた(「見た」といっても、私の場合には、緒方さんが「読んで」いるのを、隣からのぞいただけだが)。

 その話をすると、大いに喜んで、「私は新大統領の与党・ブラジル労働党の国会議員だ」と名乗る。選挙区はサンパウロだというので、「私はサンパウロの日本語新聞には、依頼されて何度か寄稿したことがある」と話すと、「その新聞ならよく知っている」という。職業が弁護士で大学教授。今回は、大統領の特使として来た、とのこと。

 大会後に、彼がチュニジアの首相と会い、ラテンアメリカとイスラムの首脳会議開催を提案する大統領のメッセージを手渡した、という報道を、新聞でみた。ここにも、現在の世界の動きの大きさを感じさせるものがあった。

建物はオスマン・トルコ時代の宮殿

 バスは、バルドー博物館に着いた。

 バルドー博物館は、その建物自体が、チュニジアの近代史を体現している。もともとは、オスマン・トルコによる支配の時代(十六−十九世紀)に、その総督(ベイ)の宮殿として建築されたものだった。一八八一年、フランスが支配権をにぎると、翌年、ここをアラウイ博物館に変え、一九五六年、チュニジア独立の年に、バルドー博物館として新たな出発をしたのである。その意味では、建築物としても興味深いもののようだったが、短時間の観察では、とてもそこまで見ることはできなかった。

 三階建てで三十を超える展示室があり、さまざまな時代にわたる展示品があるが、やはり圧巻は、ローマ時代のモザイクである。

 (つづく)


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