日本共産党

2003年8月6日(水)「しんぶん赤旗」

日本映画振興へ支援を

日本共産党国会議員団 文化庁、経産省に申入れ


 日本共産党国会議員団の日本映画振興チームは、五日、経済産業省と文化庁を訪れ、「日本映画振興への実効ある施策と公的支援拡充について」の申し入れをしました。

 「申し入れ書」は、さる四月、映画振興に関する懇談会が発表した提言「これからの日本映画の振興について」日本映画の再生のために」を受け、国の責任で映画支援を抜本的に強化するために、総合的な支援機関の創設など、八項目にわたって要求しています。

 経済産業省では、平沼赳夫経済産業相が応対し、西山とき子参院議員(チーム会長)、大森猛衆院議員(事務局長)、瀬古由起子衆院議員、大沢辰美、畑野君枝両参院議員らが出席しました。西山議員は、「『提言』を『提言』どまりにさせないために」と今回の「申し入れ書」の趣旨を説明。平沼経済産業相は、「地方で映画館が少なくなりましたね。みなさんの趣旨に賛成です。厳しい予算のなかでも『完成保証』の制度化など、提起も踏まえてやっていきたい」と述べました。

 文化庁では、西阪昇芸術文化課長らが「申し入れの趣旨をよく踏まえ、関係者の方々と連携を深めて映画文化を振興していく立場でやっていきたい」「近々撮影所で働く人たちの実態把握も進めたい」とこたえました。


日本映画振興への実効ある施策と公的支援拡充についての申し入れ

2003年8月5日 日本共産党国会議員団日本映画振興チーム

 日本共産党国会議員団日本映画振興チームが五日おこなった「日本映画振興への実効ある施策と公的支援拡充についての申し入れ」は全文つぎのとおりです。

 二〇〇一年に文化芸術振興基本法が制定されました。芸術・文化をつくり、鑑賞することが国民の権利であると位置付けられ、そのための環境整備を図る国と自治体の責任がうたわれています。映画は国民にとってなくてはならない文化です。

 しかし、日本映画は、わが国映画市場の三割程度を占めるにとどまっており、しかも東京など大都市を除くと映画館が消え、国民が日本映画をみる機会が難しくなっています。

 映画をつくる側にとっては、伝統ある撮影所の閉鎖や縮小が続き、製作資金を確保することも難しい状況があります。今年四月、映画振興に関する懇談会の「これからの日本映画の振興について――日本映画の再生のために」(以下、「映画提言」)とした提言が発表されました。そのなかには、すべての日本映画のフィルムを保存することや、撮影所への支援、映画従事者の社会保障や著作権問題の解決など、関係者の切実な要望がもりこまれています。そうした映画関係者などの要望をふまえて、今度こそ日本映画再生に確実につながる支援を強めることが求められています。日本共産党国会議員団は、現場の調査をすすめ、日本映画の振興のための公的支援を充実するよう求めてきました。

 以下、申し入れます。

 記

 一、総合的な支援を従来の施策にとどめず、国の責任で支援を抜本的に強める必要があります。関係各省庁の連携を強め、思い切った予算の拡充を求めます。また、映画人の力を生かしつつ、イギリスのフィルム・カウンシルや韓国の映画振興委員会などにみられるような総合的な支援機関の創設などすすめることを求めます。

 二、国の責任で国内で製作され公開された映画作品を文化遺産として保存・継承を進めるためにも、法定納付制度などフィルムセンターにおける保存制度の抜本的な充実が急がれます。

 1、国民の貴重な文化財である映画のフィルムの散逸を防ぎ、その保存について国立国会図書館法の改正など法定納付制度を含め、早急に対策を講ずること。

 2、保存にあたってはプリント代実費を国が代償金として支払うなど、納入費用の便宜をはかること。著作権を侵害しないよう、十分配慮すること。台本やポスターなどの映画素材についても、映画関係機関と協力して納入をすすめること。

 3、過去の作品の多くが失われ、現存するものも破損がすすみ、時間との勝負になっており、収集・修復・複製・保存の計画を立て実現をはかること。研究・調査など必要な手立てについて、国は思い切って支援を充実させること。

 4、著作権の適正な利用のもと、広く国民が映画遺産に接することができるよう、当面、フィルム・アーカイヴでの「非商業上映」をいっそうすすめること。

 5、フィルム・アーカイヴとしてのフィルムセンターの体制を抜本的に拡充し、現行の独立行政法人国立美術館の一機構ではなく、独立させること。

 三、「映画提言」では、「日本映画の創造活動を活性化させ、多様で優れた日本映画作品の生産を継続し得る、製作と上映の創造サイクルの確立を目指す」とし、製作支援については、「新たな製作支援形態の導入」を提起しています。

 1、文化庁や芸術文化振興会によって行なわれている現在の助成について、わが党の国会質問に、文化庁も「システムとして検討課題」と答えたように、映画製作の実情にそぐわない「後払い」方法の「前払い」への転換など改善・拡充をはかること。

 2、映画を製作する団体・企業に対する公的融資について、映画関係者による「日本映画振興基金」の提案も参考に、すみやかに制度化を図ること。

 3、映画やアニメを日本の大切な誇るべき文化産業として国内外で発展する様、経済産業省など関係省庁が連携して抜本的な振興対策をおこなうこと。

 四、撮影所は、「映画界全体の製作基盤」であり、諸外国でも国の支援が強められています。既存の撮影所を維持・活性化するために、固定資産税の減免やスタジオの改修などへの助成を行うこと。公的なオープンセットは、映画人の要望をよく聞き、すみやかに実現すること。

 五、映画従事者の労働条件の改善について、わが党の国会質問に、文化庁は調査が必要な段階にきていること、そのため、「撮影所で働いている方」「労働組合に入っている方」から「実態をうかがう」と答弁しました。労働現場を直ちに調査し、労災保険の適用や実態に合わせた雇用保険制度を実現すること。

 六、著作者の創作意欲を高めてよい映画を生み出す環境整備を図るために、映画の著作権についての協議をすすめることを求めます。

 七、観客がより多様な作品を鑑賞できるようにするための国の上映支援が切望されています。文化芸術振興基本法の精神に則り、国民が自由に映画を享受できるよう、国はすみやかに映画館の地理的偏在の実態を把握するとともに、必要な手立てをつくすよう求めます。

 1、既存の映画館への税制優遇や映画館が存在しない地域で、公立文化施設などの使用条件の改善、映画上映設備や公設民営映画館などの創設支援をすすめること。また、シネコンでの日本映画の上映を促進する手立てを講ずること。日本映画を上映しようとする団体や中小の製作者にたいして、支援策をとること。

 2、学校での上映機会が増えるように、学校運営費での助成制度の対象とすることを検討すること。子どものために映画館での上映をすすめる関係者への支援を行うこと。

 八、人材養成については、民間だけでは及ばない部分もあり、国としても目配りする必要があります。

 1、新人監督にたいして、製作支援だけでなく、上映支援を具体化すること。

 2、演出、技術を中心とした民間の人材養成機関や撮影所を国が支援し、映画製作技術の継承に努め、人材育成を図ること。俳優の養成について、新国立劇場の演劇の養成・研修機関を直ちに実現すること。

 3、国が責任をもつ公的な高等教育機関の設置・充実をはかること。


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