日本共産党

2003年5月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

大学法人法審議

説明不能のうえに採決強行とは


 学問の自由を脅かす国立大学法人法案の採決が衆院文部科学委員会で、日本共産党をはじめ野党の反対を押し切って強行されました。与党はきょうにも衆院通過をはかる構えです。国家百年の計にかかわる重要法案を参考人質問を含めわずか五日の審議で採決するのはあまりにも無責任であり断じて認められません。

政府説明の根拠崩れ

 審議では、法案のもつ深刻な問題点が次つぎと明らかになり、遠山文部科学大臣は何度も説明不能となりました。「審議が尽くされた」(与党)どころか、究明されるべき多くの課題が残されているのです。これでは、「審議を恐れての採決」といわれてもしかたがありません。

 政府は、法案提出の理由を「法人化によって大学の自主性を拡大する」と説明してきました。ところが、日本共産党などの追及によってこの根拠は崩れました。「各大学が自ら決める教育研究の目標をなぜ大臣が定める必要があるのか」「そのような例が欧米にあるのか」「独立行政法人化は教育研究の発展を阻害するとした九七年の文相見解をなぜ変えたのか」などの質問に、文科相はまともに説明できなかったのです。

 しかも、大学が文科相の認可を受ける中期計画について、大臣の変更命令に従わなければ罰金を科せられること、六年後に教育研究の門外漢である総務省の勧告をうけて、文科相が「廃止や民営化」を含む措置をとることも明らかになりました。

 また、大学の設置者を法人に変え、国の財政責任を弱めることも、学費値上げなどの問題を引き起こすことになります。法案では、国立学校特別会計が抱える一兆三千億円の借入金を各大学におしつけます。それによって大学法人としての経営は成り立つのか、学費値上げを引き起こさないのかを問う質問に、遠山文科相は「各大学が負う債務であり、大学の責任」と言い放ちました。

 大学法人になれば、人事院規則にかわって労働者の生命と安全を守る労働安全衛生法の適用対象となります。しかし、国が大学の施設整備を放置してきたために、その基準を満たさないで出発せざるをえないことが、審議で浮き彫りになりました。遠山文科相は、この解決をはかる予算額も計画も示すことができず、その責任追及に「来年四月の法人化までに一生懸命やるからいいじゃないか」と開き直りました。国会審議をないがしろにし、自らの責任を放棄することは許されません。

 まさに法案は、大学の自主性を脅かし、教育研究への国家の介入、統制を強めるとともに、国が果たすべき責任を大学におしつけ、大学に混乱と違法状態を生み出す欠陥法案といわなければなりません。

 審議入り前には、法案の廃案を求めて四百人の大学関係者が国会要請を行い、毎回の委員会審議に、大学の行く末を憂慮する多くの人々が傍聴につめかけました。法案への批判的見解を表明する教授会決議も相次いであがっています。

たたかいはこれから

 国会内外のたたかいが結び付いて法案の問題点が明らかになり、野党各党が慎重審議を求めたことは、政府・与党の痛手になりました。問題点がさらに国民の前に明らかにされれば、政府・与党をいっそう追い詰めることは間違いありません。

 私たちは、衆院の採決強行に抗議するとともに、「熟慮の府」としての参議院の徹底審議を要求し、法案を廃案とするために国会内外のたたかいに力を尽くすものです。


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