日本共産党

2003年5月2日(金)「しんぶん赤旗」

主張

大学法人化法案

教育研究の自主性奪うだけ


 国立大学法人法案の審議が衆議院で始まっています。日本共産党をはじめ野党各党は「この法案では国家百年の計を誤りかねない」と指摘し、慎重審議を求めています。審議を通じて、法案が「学問の自由」を脅かす重大な問題をもつことが、いよいよ明らかになってきました。

独法化の深刻な矛盾

 十六日の衆院文部科学委員会で、日本共産党の石井郁子議員の質問に対し、遠山文部科学大臣は「学問の自由を尊重する」、「大学の教育研究は大学が自主的に決定した方針に基づいて行われるべきだ」とのべました。ところが、「それなら、なぜ法案で、大学の教育研究の中期目標を大学ではなく大臣が定めるのか」との質問に、遠山文科相は「あらかじめ大学の意見を聞く」とのべるだけで、まともな答弁ができません。

 「大学の自主性」をいいながら、大学の目標を大臣が定め、教育研究への国の介入を強める。こんな矛盾した法案はありません。それは、教育研究とは相いれない独立行政法人制度を、大学に適用しているからです。独立行政法人とは、国の行政組織を数年間の中期目標を定めて効率的に企業経営させるために、自民党政府が導入した制度です。

 かつては文部省(当時)自身、「文部大臣が目標を提示し、大学がこれに基づき計画を作成、実施するしくみは教育研究活動を阻害する」などとして、国立大学の独立行政法人化に反対しました。ところが、その後これを翻し、国立大学の独立行政法人化にふみ出しました。その結果は、いくら「教育研究の特性に配慮する」といっても説明不能となる矛盾をもつのは当然です。

 法案では、文科省におく評価委員会が中期目標に対する大学法人の教育研究業績を直接評価し、その結果にもとづき国が予算を配分します。ところが、この委員会がどんなものか、どんな基準で評価するのかなど肝心なことは政令で定めるとしています。また、この委員会が行う評価について、教育研究の“門外漢”である総務省の委員会がダブルチェックするとしています。これでは、大学の教育研究が国のさじ加減で大きく左右されかねません。

 この理由を、総務省などは「(国立大学法人も)独立行政法人と同じ扱いをするため」と答弁しました。どこに「教育研究の特性に配慮」があるのでしょうか。

 国立大学のあり方を根本から変える法案に、大学からは厳しい批判がだされています。遠山文科相は、「(国立大学協会から)法案の基本的な枠組みは理解を得ている」と強弁しました。

 ところが、国大協は、法案に対して総会の議論をへての態度表明をしていないばかりか、「法案の概要」に対しては二十四大学から厳しい意見が提出されています。東京大、一橋大、千葉大、東京外大、山形大などの教授会も、法案を批判する見解を表明しています。

 一橋大大学院社会学研究科の見解は、「大学の果たすべき教育研究の自由な営みを開花させる大学像とは相容(い)れない」と断じ、「法案の根本的な見直しと再検討」をもとめています。

徹底審議し廃案に

 国立大学法人法案は、教育研究への国家統制を強め、大学の自主性を根こそぎ奪うなど、学術の衰退をもたらす悪法です。わが国の将来に重大な禍根を残してはなりません。

 国会はこの法案を徹底審議し、問題点を明らかにすることによって、廃案とすべきです。


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