日本共産党

2003年4月17日(木)「しんぶん赤旗」

法相も読まなかった、受刑者の「情願」とは?


 〈問い〉 名古屋刑務所の事件をきっかけに、法務大臣も読んでいないことがわかった受刑者の「情願」とはどういうものですか。(東京・一読者)

 〈答え〉 昨年相次いで発覚した名古屋刑務所での受刑者暴行致死・致傷事件は、以前から問題になっていた刑務所の人権侵害状況と法務省の秘密体質を、改めて浮き彫りにしました。受刑者が刑務所内の人権侵害などを直接法務大臣に訴える情願書が、大臣には渡らず法務省内で処理されていたことも、最近明らかになった事実です。

 監獄法の第七条は、受刑者が監獄の措置に不服あるときは、法務大臣または巡閲官吏に情願できると定めています。法務大臣への情願の仕方は、監獄法施行規則の四条で▽本人が情願書を書いて封かんし、職員は披閲(開いて見ること)できない▽所長は情願書を速やかに法務大臣に進達する―規定しています。刑務所という閉鎖的空間におかれた受刑者が、刑務所長の措置を法務大臣に直接訴える文書であるため、第三者が見ることを厳しく禁じているのです。

 ところがごく最近まで、情願書が法務大臣に届かず、もっぱら法務省矯正局内で開封処理されていたことが、国会での追及から明らかになりました。法務省は、省内の文書決裁規程にもとづく大臣権限の委任による処理だと説明しましたが、省内部の決裁規程が、監獄法や施行規則に反した権限委任を正当化する法的根拠にはなりません。

 情願は、刑務所長の非を訴える受刑者の限られた権利であり情願書を読むことは法務大臣の「責務」というべきものです。これを一般的な事務委任のように処理して受刑者の情願権を侵す違法状態が、相当以前から行われてきたこと自体、法務省の根本が問われる大問題です。

 二〇〇一年十二月の消防ホース高圧放水による暴行致死事件では、被害者は二〇〇〇年に情願を出しましたが、事件直前に却下されていました。情願がまともに扱われていれば、事件は防げたはずだとも指摘されています。(博)〔2003・4・17(木)〕


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