日本共産党

2003年4月17日(木)「しんぶん赤旗」

米国「ネオコン」の実態

ジェームズ・ローブ米IPS通信記者に聞く


 ブッシュ米政権によるイラクへの先制攻撃に大きな影響を及ぼしたと国際的に注目されているのが「ネオ・コンサーバティブ(新保守主義者)」(ネオコン)と呼ばれる米国の超タカ派勢力です。彼らの実態について、「ネオコン」に詳しい米IPS(インタープレス・サービス)通信のジェームズ・ローブ記者に聞きました。(ワシントンで坂口明)


タカ派の三つの潮流

 現在ブッシュ政権の周辺にいるタカ派は三つの潮流に分かれます。

 第一は共和党の伝統的な右派であり、ラムズフェルド国防長官やチェイニー副大統領らがそうです。彼らは、力の政治の信奉者、強固なナショナリストで一方的行動主義者です。

 第二がネオコンです。多くは元左翼やトロツキストなどの極左です。「左翼」が「保守」になったので「ネオコン(新保守)」と呼ばれるのです。多くはユダヤ系ですが、米国内のユダヤ系の少数派です。彼らも強固なナショナリストです。

 米国は民主主義という点で世界的な使命を担っており、世界中に関与すべきだ、という考え方です。またイスラエルと米国の戦略的利益は、ほぼ共通しているとみなしています。国連がイスラエルに批判的だということを理由に反国連の態度をとっています。

 その代表的人物は、ウルフォウィッツ国防副長官、ファイス国防次官、ボルトン国務次官、リビー副大統領首席補佐官、エイブラムス国家安全保障会議(NSC)中東担当、パール前国防総省・国防政策委員長、ウルジー元中央情報局(CIA)長官、クリストル『ウィークリー・スタンダード』誌編集長らです。

 第三はキリスト教右派です。彼らはホワイトハウスで大きな影響力をもち、ブッシュ大統領の上級顧問のカール・ローブが彼らに非常に近い。その特徴は一方的行動主義で、より孤立主義的、またとても地方主義的(世界的関与を好まない偏狭な立場)です。

 三つの派閥には共通点と違いがあり、それはイラク攻撃後の政策をめぐっても表れています。

陰うつな世界観

 私が強調したいのは、これらのタカ派が結びついてできた世界観が極めて陰うつなものだということです。それは(万人の万人に対するたたかいという)ホッブズ的な世界観です。

 問題は、今の米国がものすごい力をもっているため、たとえ米国民がこれらタカ派が嫌だと言っても、ブッシュ政権が現在のような政策の遂行によって米国に対する大きな怒りを世界中で生み出してしまい、彼らの空想する「米国にとって敵対的な世界」が本当にできてしまう、自己増殖されてしまうことです。

 また源流にトロツキストをもつネオコンは、組織力があります。戦術的に極めて巧みであり、時に応じ、さまざまな勢力と同盟関係を結んで生き延びます。

 「リアリスト」である父親のブッシュの政権ができた時には、レーガン前政権で幅を利かせていたネオコン派が追放され、「これでネオコンは終わりだ」と言われたのです。ネオコンの将来は予断を許しません。

ネオコンの起源は

 ネオコンが発生したのは一九六〇年代後半です。(1)六七年の第三次アラブ・イスラエル戦争でイスラエルが攻勢に立ったこと(2)ベトナム反戦運動(3)市民権運動との複雑な関係―背景になりました。

 六七年(の第三次中東)戦争は、ホロコースト被害者のユダヤ人とは違う「戦士ユダヤ人」の誕生としてユダヤ系の人々に大きな誇りを与えました。

 しかし国連がイスラエルの占領地からの撤退を求めたため、これらの人々は国連に幻滅しました。

 ベトナム反戦運動ではネオコン派は、これが孤立主義的な運動となることを警戒しました。米国がベトナムから手を引いたら、世界の他の問題からも手を引くことになってしまう。ホロコーストは米国が孤立主義の立場をとり世界に関与しなかったから起こった、米国が世界に関与したらホロコーストは起こらなかったという考え方です。彼らは、第二次世界大戦でヒトラーをやっつけた米国と自己を一体化させています。


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