日本共産党

2003年4月11日(金)「しんぶん赤旗」

国は金出さず、口出す

国立大法人法案で大学は…


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 審議入りした国立大学法人法案は、従来国が負ってきた国立大学の財政責任を後退させる一方で、国が各大学の研究目標を決めるというものです。いわば「金を出さずに、口は出す」しくみに、大学関係者から、法人化で、日本の学問研究がさらに弱体化する、との批判がおきています。

学問の貧困さらに

 「暖房費がなく震えながら研究している」「七つの机を十五人で使っている」「実験室が狭くて消防法違反の状態」─。

 「大学の貧困」と呼ばれる事態が深刻化しています。

 国立大学法人法案(以下、法案)をまとめる際、大学側から「国が高等教育の充実・発展に責任をもつこと」(宇都宮大学)、「財政面を含む国の責任が一層明確になる工夫を」(山形大学)との意見が相次いだのは当然でした。

 しかし法案は、その意見を正面からふみにじりました。法人化を準備してきた文部科学省の調査検討会議が求めていた“国が国立大学の設置者であること”をほごにしたことです。法案は、国立大学を設置するのは「国」ではなく「国立大学法人」としました。

 文科省は、これまで国が面倒をみてきた国立大学への財政上の責任は各大学法人が直接負うことになると説明。国は、いま以上に国立大学への財政負担の義務を後退させようとしているのです。

 国は「運営交付金」を各国立大学法人に出すことになります。それは、国が各大学法人の研究や業務の優劣を点検し、その評価に応じて格差をつけたもので、使い道自由の資金です。従来の、各大学の教員や学生の数を基礎にして配分してきた基盤的な経費とは異なります。

 調査検討会議でさえ、委員から「現下の厳しい財政状況のもとで独法化する場合、安定的な研究費、人件費等の確保の保障がなく…国立大学では学術研究水準が低下し、科学技術立国をめざすわが国の発展はのぞめない」との意見があがっていました。

 すでに国や企業が重視する研究にばく大なお金が集中し、そうでないところでは研究を続ける資金さえないという状況が生まれており、法人化は学問全体を沈下させるとの声があがっています。

到達目標、国が決定

 国が各大学法人を評価する基準となるのが、「中期目標」です。中期目標は、六年間で大学法人がやり遂げるべき教育研究や業務の到達目標をまとめたものです。法案では文科大臣が中期目標を決めるとし、六年後、目標の達成ぐあいで、大学法人の廃校まで勧告できるとしています。

 「大学法人の中期目標を定める際、(文科大臣は)大学の意見を配慮はするが拘束されない」

 文科省はこうのべ、大学側の意向と違う目標を押しつけることもあり得ることを隠しません。国が大学の目標を決めるというのは世界に例がありません。

 こうみてくると、法案は、いわば“国は大学の学問研究にお金は出さずに口を出す”ものです。

 また大学法人は「民間的な発想」で企業のように経営しなければならなくなるので、赤字ばかりだと廃校になるおそれがあります。業績をあげるため、学費値上げや公務員でなくなった教職員の解雇や賃下げがおこなわれる可能性があります。

大学の自治を破壊

 大学運営では、学長が、経営から教育研究、人事まであらゆる事項の決定権をもち、予算など重要事項の議決権をもつ理事を任命できる一方で、学長の勝手放題をチェックするしくみがありません。

 「各大学法人の理事には、国からの天下りがあってもよい」(文科省)

 法案は、経営と教学を分離させ、経営協議会には二分の一以上は学外者を参加させるとしています。

 「学外者には企業経営者や政治家、役人などさまざまあり得る」(同)

 教育研究評議会が教学面を担いますが、これまで教員人事権をもっているとされていた教授会についてはその規定がありません。

 法案は、戦前の苦い反省から戦後、制度として確立した、「大学は…権力または勢力の干渉を受けることなく、全構成員の意志に基づいて研究と教育の自由を行使する」(『広辞苑』)という「大学の自治」を破壊するものです。


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