日本共産党

2003年2月28日(金)「しんぶん赤旗」

イラク問題で公明党

米国の立場で反戦の声敵視

冬柴幹事長「利敵行為」発言に批判続く


 「戦争反対は利敵行為だ」――イラク問題をめぐる公明党・冬柴鉄三幹事長の発言が、米国のイラク攻撃を懸念する多くの人たちからの批判を浴びています。そんな批判を気にしてか、公明新聞は連日のように、「公明は“平和外交”を展開」(二十一日付)、「国際協調で平和解決を」(二十二日付)とやたら「平和解決」を強調しますが……。

 冬柴氏の発言は、世界中で高まる戦争反対の世論を「(米国の)圧力を抜くような利敵行為」(NHK「日曜討論」十六日)と敵視し、武力行使に反対しているフランス、ドイツ、ロシア、中国は「間違っていると思う」(テレビ朝日「サンデープロジェクト」十六日)というもの。「『アメリカの戦争路線を支持しないものはイラク側だ』という反民主主義的な二分法」(日本共産党・志位和夫委員長)の暴言です。

「驚いた」とヨルダン大使

 「小泉首相や冬柴議員が『反戦運動は利敵行為だ』と言っています。私たちはこれを聞いてショックを受けました」――十八日、首相に提出された「高校生戦争協力拒否宣言アピール署名」に添えられた高校生の要請文は訴えました。

 二十四日の衆院予算委員会では、民主党の菅直人代表が冬柴発言をとりあげ、「かつての『非国民』という言葉を何か連想させる」「公明党としての正式な考え方か」と追及。しかし、公明党出身の坂口力厚労相は「冬柴幹事長としての考え」と逃げました。

 十九日に公明党がアラブ六カ国の大使を招いて行った会談では、ヨルダンのナウーリ駐日大使が冬柴発言の説明を要求。公明新聞二十日付によると冬柴氏は、「国際社会が一致して査察への全面協力を求め、イラクに圧力をかける時であり、意見を対立させ、団結を揺るがすべきではない」などと弁明しています。

 『週刊朝日』三月七日号は、「公明党が米国べったり小泉首相に同調する理由」と題する記事の中で、この会談の内容を詳報。それによると、同大使は、「幹事長の発言に驚いた。どういうことなのか」と問いつめ、弁解する冬柴氏に「仏独もサダムに協力しているとは思わない。言葉が過ぎたのでは、と理解している。(国連安保理の)新たな決議は必要ではなく、査察を続行すべきではないか」とたたみかけました。結局、冬柴氏も「言葉が過ぎたかもしれない」と認めたというのです。

発言撤回せず火消しに躍起

 実際、十七日付の公明新聞は同氏の十六日のテレビ発言について、「今、イラクへの圧力を抜くような行為はサダム・フセインに利益を与えることになる」と紹介しただけ。問題の「利敵行為」という言葉はなく、仏ロ独中に対する批判の言明もまったくふれられていません。

 その後、冬柴氏の口からも、公明新聞からも「利敵行為」の言葉は出てきません。しかし、「利敵行為」発言そのものを公式に撤回したわけではありません。

 それどころか冬柴氏は、「産経」二十二日付のインタビューでも、「全世界で反戦デモが起きているが、大量破壊兵器などの廃棄を求める圧力を戦争と連想しているようだ」と改めて戦争反対の声を批判。あわせて「新たな決議がないまま米国が攻撃に踏み切った場合…原理主義的に『支持しない』と言うほど頭が固いわけではない」と、米国の対イラク戦争を容認する姿勢すら示しています。

 二十四日、米英などが国連安保理に査察の中止を求め、武力行使に道を開く決議案を提出しました。これに日本政府はいち早く支持を表明。公明党の神崎武法代表は川口順子外相の説明に「わかりました」と応じたものの、明確な態度表明を避けています。

 戦争か平和かという重大局面を迎え、冬柴発言に象徴される公明党の米国の戦争路線への同調が、深刻な矛盾に直面しているのです。


冬柴発言を厳しく批判

NHKテレビ 市田書記局長

 冬柴幹事長の「利敵行為」発言が飛び出した十六日のNHK日曜討論では、この問題をめぐり、日本共産党の市田忠義書記局長と冬柴氏との間で激しいやりとりがありました。

 市田 きわめて重大な発言。「利敵行為」をやめようと思えば、戦争をやればいいということになる。

 冬柴 アメリカは圧力をかけている。戦争をやりますよといっているけど、やっていないわけですから。圧力をかけているわけ。それと違うことをいうということは、相手にとって利敵じゃないですか。

 市田 だから、戦争反対は利敵行為なんですね。

 冬柴 戦争反対もクソもない。圧力ですよ、圧力。

 市田 ごまかしたらダメですよ。


出所は“ベーカー(駐日米大使)さん”

 冬柴発言の“出所”ともいえるのが、十三日に行われた同氏とベーカー駐日米大使との会談。十六日のテレビでも「ベーカーさん」を連発しました。

 「十三日にベーカー大使と一時間お話しした」「ベーカーさんは、査察が成功しつつあるのもアメリカが圧力をかけているからだとおっしゃっていた」「ベーカーさんは二週間前に(ブッシュ)大統領とお会いして、この問題についてよく話した」

 いわばベーカー仕込みの「利敵行為」発言というわけです。冬柴氏は続けます。

 「アメリカは圧力をかけている。戦争をやりますよと言っているけど、やっていないわけですから、圧力かけているわけ。それと違うことを言うということは、相手にとって利敵じゃないですか」

 アメリカは「戦争をやる」といっているが、実際にはまだやっていない、圧力をかけているだけだ、そのアメリカと「違うこと」をいったり、やったりするのはけしからん――要するに、米国がやることはすべて正しいので、それに異を唱える戦争反対の運動も、査察継続を主張するフランス、ロシア、ドイツも「まちがっている」ということです。

 「日本は米国の何番目かの州みたいなものだから」とは、イラク問題をめぐる“属国日本”の実態を正直に語った久間章生・自民党政調会長代理の言葉(「朝日」十四日付)。米国の“スピーカー”となった公明党の対米追随ぶりは自民党も顔負けでしょう。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp