日本共産党

2003年1月22日(水)「しんぶん赤旗」

「認証評価機関」創設をめぐって

全大学に義務づけ

統制強化、選別・淘汰の恐れ

細井 克彦


 昨年十月の臨時国会に提出された「学校教育法の一部を改正する法律案」は、大学関係者にもあまり知られないうちに成立したが、「改正案」の重要な内容をなす「認証評価機関」の創設はこれからの大学制度の根幹にかかわる問題を含んでいる。

 「改正案」は、大学の設置認可事項の規制緩和、法令違反大学に対する是正措置、高度専門職業人養成のための専門職大学院の創設などとともに、大学の自己点検・評価の実施とその結果の公表の義務づけ、および文部科学大臣の認証を受けた「認証評価機関」の創設から成り立っている。このうち、大学の自己点検・評価はすでに一九九一年の設置基準改訂の際に義務づけられており、国立大学には二〇〇〇年の国立学校設置法「改正」で大学評価・学位授与機構による評価が義務づけられている。これに対して、今回は省令ではなく法律によって「認証評価」がすべての大学に義務づけられることになる。これにより、大学評価の位置づけや性格、およびその機能が根本的に変わってくる可能性がある。

私立大にも拡大

 文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を「認証評価」というが、これが国公私立のすべての大学に一律に義務づけられるとともに、新たに設けられる専門職大学院にも義務づけられる。「改正案」によって、特にこれまで第三者評価が義務づけられていなかった私立大学に対しても「認証評価」が義務づけられることに注目すべきである。しかも、「認証評価」を受けなければ、法令違反となり是正措置の対象になりうる。

 ところで、文部科学大臣に評価機関として認証されるための要件に、大学評価基準や評価方法、評価体制などが含まれ、しかも、これらの事項を変更する場合にはあらかじめ文部科学大臣に届け出なければならない。また、認証評価機関は、認証評価を行った結果を、遅滞なく、大学に通知するとともに、これを公表し、かつ、文部科学大臣に報告しなければならない。文部科学大臣は、「認証評価」が公正かつ適確な実施に支障があると判断されれば是正勧告を行い、なお改善されないときは認証を取り消すことができる。

資金配分に反映も

 ここに見るように、大学が自主的に第三者機関による評価を受ける仕組みではなく、「認証評価機関」という国からの自律性がほとんどなく、第三者機関の名による事実上国の評価をすべての大学に義務づけることになる。しかも、国会の審議でも明らかなように、文部科学省は「認証評価」の結果を資金配分に反映することを否定していない。

 一方、現在すすめられている教育行政による評価の動きの中で顕著になっている、数値目標を掲げさせその達成を評価する目標管理のシステムが大学にも持ち込まれれば、「認証評価」が大学の選別と淘汰(とうた)の手段に容易になりうることである。「認証評価」が学問の自由に抵触し、官僚統制を強めるだけでなく、大学のリストラの有力な手段たりうることに目を向ける必要がある。

 (ほそい かつひこ・大阪 市立大学大学院教授)


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