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2020年3月25日(水)

きょうの潮流

 7歳の男の子が夏の終わりを描いた詩。それを赤でペケした先生にお願いしました。「この子は丸い形ではなく、横に長い楕円(だえん)形のような子。だから先生、この子に合った形で教育をしていただけませんか」▼だめな子なんかひとりもいない。人間は愛され、信じられていると思ったとき、才能がほとばしる―。その信念のもと、日本で初めての肢体不自由児の養護施設「ねむの木学園」をつくった宮城まり子さんが亡くなりました▼きっかけはミュージカルの役づくり。歌手や女優として活躍していた頃、脳性まひの子どもを演じることに。見学に通った施設で「就学猶予」という言葉を知り、衝撃とともに大きな疑問を抱きました▼だれもが教育を受ける権利があるのに、障害のある子は学校にこなくてもいいという。自分の意思ではないのに…。そんな制度にがまんができず、自力で苦労しながら静岡の海が見える小高い丘に「心を学ぶ学校」を設立しました▼絵や音楽、工芸。子どもたちの作品展を国内外で開くなど、園長として個性や感性をのばす独自の教育にとりくみました。「すべての子に可能性がある」との一貫した思いと行動。命をえり分ける優生思想とは対極をなす存在でした▼まだ法や制度にも障害者にたいする偏見や差別が色濃かった時代の先駆け。かつて本紙日曜版で“福祉は文化である”と語っています。「人が幸せに自分の能力をのばし、きちんと暮らすのが文化なら、それは福祉ではありませんか。そう信じている」


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