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2020年3月24日(火)

いま、五輪がすべきこと 苦しむ人思いやる心

選手の声が世界を動かす

 世界の選手が事態を動かした―。今回、国際オリンピック委員会(IOC)や組織委員会にかじを切らせたのは、選手の健全な声だったことは間違いありません。

 この間、国内外の選手らが「練習すらできない」「私たちを危険にさらしたいの?」と声を上げました。22日にはカナダの五輪委員会が東京への「選手派遣拒否」を表明していました。新型コロナウイルスの世界の広がりからみればあまりに当然のことです。

 本来ならもう少し早く解決に動くべきだったという思いはあるものの、それをきちんと受け止めたIOCの姿勢も評価に値するものです。アスリートファースト(選手第一)が健全な形で発揮されたといえます。

 今後、延期を含めた検討が始まります。テレビ放映権や財政的な問題、競技場の確保などさまざまな課題がありますが、どの局面でもこの姿勢を貫くことが解決の大道であるはずです。

 同時に選手らの発言の中には、さらに豊かなメッセージが含まれていたと思います。

 それは自分のことより、世界の苦しむ人々に思いを寄せる姿です。

 「いま五輪よりも深刻な問題がある」「人道的な観点を第一に考えるべき」。日本のある五輪選考会では「(五輪を)予定通り開催してほしいが、人の命を優先してほしい」と訴える選手の姿がありました。

 ここにスポーツの本質があると思います。

 スポーツは心身の健康のためにあり、「平和でよりよい世界」への貢献が五輪の目的の一つです。人の命を守り「よりよい世界」のために力を尽くす、その人道的な立場がその本質です。

 さらに、スポーツ選手には相手を深く思いやる、フェアな心情の発露があります。

 1カ月後、IOCや組織委員会は検討結果の発表を行います。その際でもいいし、その前でもいい。IOCは選手の率直な思いを束にして、世界に伝えてほしい。ともにコロナとたたかい、命を守るために力を尽くす―。この世界的な危機の中で、スポーツが社会に向けて何ができるのか。その根本のところが深く問われています。

 (和泉民郎)


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