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2020年3月4日(水)

主張

検察官の定年延長

無法押し通す政府の支離滅裂

 東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題をめぐり、安倍晋三内閣の矛盾だらけで支離滅裂な対応が際立っています。検事長を含む検察官には国家公務員法が定める定年延長は適用されないとしてきた従来の法解釈を強引に百八十度転換したからです。三権分立が確立した日本国憲法下での検察官の職責の特殊性を顧みず、司法の独立を破壊する無法です。それを押し通すため、つじつま合わせのむちゃくちゃな説明を繰り返す安倍内閣の行き詰まりは明らかです。

「言い間違え」通らぬ

 焦点の一つは、政府がいつ解釈を変更したかという問題です。

 人事院は2月12日の衆院予算委員会で、1981年に国家公務員法(国公法)に勤務延長を含む定年制を導入した際、「検察官については適用除外されていると理解していた」と述べ、「現在までも特にそれについて議論はなかったので、同じ解釈を引き継いでいる」と明言しました。これに対し安倍首相は翌13日の衆院本会議で「検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と、解釈の変更を明らかにしました。

 しかし、政府が黒川氏の定年延長を閣議決定したのは1月31日です。人事院の答弁通り、2月12日の「現在まで」、従来と「同じ解釈」であれば、閣議決定は違法となります。人事院は19日の衆院予算委で、「現在まで」とは法務省から相談のあった「1月22日まで」のことだと修正し、間違った理由については、驚くべきことに「つい言い間違えた」と答えました。あまりにも不自然な答弁です。

 法務省は、解釈変更について1月17~21日に内閣法制局、翌22~24日に人事院と協議し、了承を得たと主張しています。人事院と法務省はそのことを示す文書の提出を野党議員から求められます。ところが、提出された文書には肝心の日付が入っていませんでした。

 森雅子法相は2月20日の衆院予算委で、法務省の文書は「必要な決裁を取っている」と述べましたが、同省は翌21日の衆院予算委理事会で「口頭で決裁を取った」とし、書面による決裁を取っていないことを明らかにしました。しかし、森法相は25日の記者会見で「口頭の決裁も正式な決裁」とあくまで強弁します。法治国家として不可欠な文書主義さえかなぐり捨てたものです。

 重大なのは、法務省が2月26日に衆院予算委理事会に提出した「検察官の勤務延長について」と題するメモの中身です。

 メモは、司法の独立のない戦前の大日本帝国憲法下で検事の定年延長を認めていた「裁判所構成法」を持ち出して、趣旨は国公法の定年制度と差異はないとし、今の検察官にも適用することを正当化しようとしています。

戦前の法まで持ち出す

 戦後の司法制度は、司法権を天皇が握り、治安維持法などによって極めて苛酷な人権弾圧をもたらした戦前の反省に立ってつくられました。メモは、その一環として制定された検察庁法が、時の政権の介入を排し、政治的中立を保つべき検察官の定年延長を削除した経緯を無視するものです。

 「国政私物化」のため、でたらめな国会答弁や説明などを繰り返す安倍政権をこれ以上許すことはできません。


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