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2020年3月3日(火)

主張

「一律休校」開始

不安や疑問に答えないままだ

 新型コロナウイルスの感染拡大に対処するとして安倍晋三政権が要請した小中高校と特別支援学校の「一律休校」が始まりました。現場が混乱するなどとして当面休校しないと自主的に判断した自治体もあります。準備が整わず、休校実施日を後ろにずらした自治体も少なくありません。子どもの安全な居場所をどう確保するのか。親が休む場合の収入補償はどうなるのか。子どもの気持ちをきちんとフォローできるのか。沸き上がる不安と疑問に首相の説明は具体性を欠いています。首相の独断専行による一律休校の道理のなさは浮き彫りになるばかりです。

専門家の意見を聞かず

 首相による突然の休校要請をめぐる現場の戸惑いや不安はおさまりません。臨時休校に入ったところも自治体ごとで対応はさまざまです。子どもを受け入れるため教室を開放したところもあれば、通常午後から開所する学童保育を朝から始めたところもあります。子どもの安全にとって必要な職員をどう確保するかなど体制づくりのため多くの関係者が準備に追われています。働く親たちは子どもが安全に過ごせるため、親族・知人らのつてをたどるなど頭を悩ませています。まさに“走りながら”の対応を強いられています。

 一律休校が国民の負担と混乱を招いているのは明白です。ところが首相は、なぜ全国一律が必要か、根拠はなにか、一向に語りません。一律休校の要請(2月27日)からようやく2日たって記者会見した首相は、従来方針を突如変えた理由を記者に問われると「判断に時間をかけるいとまはなかった」と釈明しました。2日の参院予算委員会の質疑でも、同じ答えを繰り返すとともに、「専門家の意見を伺ったものではない」と首相の独断だったことを認めました。

 政府は新型コロナウイルス対策の専門家会議を設けており、同会議が発表した見解によって2月25日の基本方針を決めています。そこには地域ごとに判断することを盛り込んでいますが、「全国一律」とは一切ありません。専門家会議の構成員からは一律休校の効果に疑問が示されています。科学的な根拠がない今回の要請について、首相がいくら「ご理解を」といっても国民はとても納得できません。

 一律休校が子どもの生活や親の働き方に及ぼす深刻な影響や問題について、首相は具体的な対策を示しません。政府は国の予備費2700億円を活用し、10日にも緊急対策をまとめるとしています。休みを取らざるを得ない保護者の所得減少を支援する助成金制度創設などを掲げますが、不明な点が多いままで、親は不安を抱えています。学童保育の財政支援といっても、もともと職員配置などギリギリで運営している学童の体制強化につながるのか懸念は消えません。現場に矛盾を押し付けることはあってはなりません。学校給食の停止で、学校向けの牛乳や野菜などの生産者に影響が広がっており、対策が欠かせません。

財源確保し具体化を急げ

 感染症対策で政府に求められるのは、独断専行の政治判断ではありません。専門家の知見に基づき、党派を超えて知恵を出し合うことです。なにより思い切った財源の裏付けのある具体的な医療・検査の体制、休業補償の仕組みを早急に打ち出すことが求められます。


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