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2020年2月27日(木)

原爆症認定で最高裁判決

司法の役割果たさず

国は被爆者救済に責任を

 病気の経過観察を続けていた3人の被爆者が認定を求めていた3訴訟の判決で、最高裁判所第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、原爆症と認定しない判決を示しました。行政に追随し、司法の役割を果たしませんでした。

 被爆者援護法にもとづく原爆症の認定は、(1)原爆の放射線で病気になったこと(放射線起因性)、(2)現在医療が必要な状態にあること(要医療性)―の条件をみたす必要があります。

厳しいハードル

 最高裁判決は、この「要医療性」について新たな条件をつけ、その門を狭くしました。

 条件とは、経過観察自体が治療行為を現実的な目的として行われていることや、経過観察自体がその病気を治癒するため必要不可欠な行為であり、かつ、積極的治療行為の一環として評価できる特別な事情があるなど、きわめて厳しいハードルです。

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の木戸季市(すえいち)事務局長は25日の会見で、裁判所はギリギリのところで被爆者の声に耳を傾け判断してくれていたという印象を持っていたが、「最高裁は、被爆者の声に耳を傾けなかった」と述べ、逆行ぶりを批判しました。

 最高裁判決を前に、日本被団協は、どこで、どんな被爆体験をし、どんな人生を送ってきたかをつづった「最高裁への手紙」を全国の被爆者から142通集め、最高裁に提出してきました。

 それらの手紙には、「被爆患者の苦しみを言葉で伝えることは本当に難しい。最高裁まで争わなければ理解してもらえないとは残念でなりません。どうか高齢化する被爆者の声にご理解いただき、適正な判断を」などのメッセージが書かれていました。

 原爆症認定は、被爆者に対する国の責任を果たすために制定されたものであるはずです。被爆者手帳を持っている人は現在約14万人います。被爆によって病気が引き起こされているにもかかわらず、「要医療性」の判断によって認定・更新が足切りされることがあってはなりません。

制度の見直しを

 木戸事務局長は、「原爆被害への国家補償を求めて、憲法9条を守っていく運動に余生をささげていく決意だ」と語り、政治的決断を求めて要求していく姿勢を示しました。

 日本被団協は提言で、原爆症認定制度の抜本的見直しを政治の責任で行うよう求めています。国はこうした声を受け止め、被爆者救済に責任を果たすことが求められています。


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