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2020年2月21日(金)

論戦ハイライト

検事長定年延長 法解釈変更を厳しく追及 藤野議員

“三権分立の根幹壊す”

 安倍晋三首相が刑事告発され、秋元司衆院議員の逮捕・起訴、河井克行前法相への家宅捜索などが相次ぐ中、政府は1月31日に安倍政権に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の定年延長を閣議決定しました。黒川氏が次期検事総長に就任する余地を残した人事ではとの疑惑があります。さらに検察官の定年延長ができるように法の解釈変更まで行いました。日本共産党の藤野保史議員は20日の衆院予算委員会で、こうした許されない解釈変更について「まさに三権分立の根幹にかかわる問題で、国会の存在意義も問われる」と追及しました。


写真

(写真)衆院予算委で質問する藤野保史議員=20日

藤野氏 検察官には公益の代表者として特殊性がある

森法相 委員のおっしゃる通り

 藤野氏は、「なぜ検察官に特別な制度があるのか」として、検察庁法の立法趣旨を過去の国会答弁から明らかにしました。(表)

 藤野氏は、戦前、治安維持法による弾圧や特高警察などによる人権侵害が相次いだ痛苦の歴史経験を踏まえて現行憲法に世界に類を見ない多くの人権保障規定がおかれたことを指摘し、「まさに憲法の理念に基づいて検察庁法がつくられた由来をしっかり踏まえる必要がある」と強調しました。

 その上で藤野氏は、1981年の国家公務員法改正で盛り込まれた公務員の定年制度が検察官に適用されないのは、まさにこの検察の職責の特殊性が理由だと指摘。政府が、国家公務員法の規定が検察官の勤務延長にも適用されると解釈の変更を行った問題を追及しました。

 検察官は刑事訴訟法により、「唯一の公訴提起機関」と規定されています。藤野氏は、「検察官の職務執行が公正に行われるかどうかは直接、刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼす。だから検察官は公訴権を独占する公益の代表者ともいわれている」と述べ、検察官の「職責の特殊性」を強調しました。

表

 藤野 こうした検察官の公益の代表者としての特殊性は今も変わらないと思うが。基本的な認識を。

 森雅子法相 委員のおっしゃる通りだ。

 藤野氏は、検察官の「職責の特殊性」があるからこそ、身分保障のあり方も一般の公務員とは違うと指摘し、国家公務員法施行後も検察官の定年延長は一般公務員とは「おのずからその取り扱いを異にすべきもの」(1949年5月11日、参院法務委・高橋一郎法務庁事務官)とされていたことを紹介。「検察官に国家公務員法の定年制度は適用されない。これが確固とした解釈だ」と強調しました。

 森法相は「行政官という意味の懲戒処分も裁判官と違って適用される。準司法官という身分を検討した結果、勤務延長制度の趣旨は検察官にも等しく及ぶと解釈をした」と強弁しました。

 藤野氏は「大臣が答弁したように検察の職責の特殊性が変わらないからこそ、定年制も変えられない。曲解以外のなにものでもない」と批判しました。

藤野氏 1975年の内閣法制局長官答弁は

近藤内閣法制局長官 法律の解釈は行政府がみだりに変更することなどはありえない

 さらに藤野氏は、内閣法制局長官が、1975年2月7日の衆院予算委員会で「行政府が勝手に法律の解釈を変えられるのかどうか」と問われていたことを指摘しました。

 藤野 当時の内閣法制局長官は何と答弁しているか。

 近藤正春内閣法制局長官 法律の解釈は客観的に一義的に正しく確定されるべきものであり、行政府がこれをみだりに変更することなどはありえない。

 藤野氏は、政治の介入による解釈変更の異常さを浮き彫りにしました。

 森法相は黒川検事長の定年延長について、職員の定年を規定した人事院規則11の8の7条3号の「業務の性質上」を挙げ、「担当者の交代が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生じるときに該当するとして勤務延長させるところとした」と正当化しました。

 藤野氏は、公訴権を独占する検察には、全国的につねに一体的な検察事務を行う「検察官一体の原則」があると指摘。「巨大な権限を持っている検察が政府の不当な干渉によって左右されれば、司法の独立が有名無実になる」と強調。「『業務の性質上』は『検察官一体の原則』と矛盾する。黒川氏へのあてはめは制度を乱用するものだ」と批判。「検察人事まで手をつけることは絶対に許されない」と指摘しました。


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