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2020年2月17日(月)

主張

米国の小型核配備

北東アジアの軍拡加速許すな

 米国防総省は今月上旬、新たに開発した低爆発力の小型核弾頭W76―2を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を米海軍が実戦配備したと発表しました。“使いやすい核兵器”と言われる新型小型核の配備は、核使用のハードルを下げ、核戦争の危険を増大させるとともに、ロシアや中国などとの核軍拡競争をさらに激化させます。日本の安全保障にも深刻な影響を与えます。核兵器禁止条約の成立など、「核兵器のない世界」に向けた動きへの重大な逆流に他なりません。

計り知れない被害生む

 米国防総省が今月4日に明らかにした新型小型核の配備は、トランプ米政権の核戦略指針である「核態勢見直し」(NPR)報告に基づいたものです。

 2018年2月に公表された同報告は、ロシアや中国、北朝鮮、イランに対する「核抑止」などを口実に、新たな核戦力の強化・近代化計画を打ち出しました。その一つが、14隻を保有している弾道ミサイル潜水艦(オハイオ級戦略原潜)に配備しているSLBMの一部に、改良した低爆発力の核弾頭を取り付けることです。

 全米科学者連盟(FAS)は先月下旬、W76―2搭載のSLBMがオハイオ級戦略原潜「テネシー」に初配備され、同原潜が大西洋で既に任務に就いていることを指摘していました。オハイオ級戦略原潜は、日本への寄港はないものの、太平洋にも配備されています。

 FASの核問題専門家であるハンス・クリステンセン氏らによると、W76―2の爆発規模は約5キロトン(TNT火薬換算、広島に投下された原爆は約15キロトン)とされます。使用されれば、計り知れない被害が生まれることは明白です。

 トランプ政権のNPRは小型核の開発・配備計画をめぐり、▽オバマ前政権が退役を決めた核巡航ミサイル(核トマホーク)に代わる新型の海洋発射型核巡航ミサイル(SLCM)を開発するための研究を直ちに始める▽F35戦闘機を核搭載可能にするなど、核・非核両用任務の戦闘機を北東アジアなどに前方配備する能力を保持することも明記しています。

 SLCMに関しては、退役が発表された核トマホークが特にアジアの同盟国に「抑止力」を与えてきたとし、これを強化するため低爆発力の新たなオプション(選択肢)が必要になったことを強調しています。

 日米間には、核を搭載した米軍機や米軍艦船による日本への飛来・寄港や領空・領海通過が日本政府との事前協議なしに自由にできるという密約があります。トランプ政権の核戦略の下、日本に寄港を繰り返している攻撃型原潜や、沖縄に暫定配備されたこともあるF35Aなどによって核兵器が持ち込まれる危険が現実のものになろうとしています。

核密約の廃棄今こそ

 トランプ政権は、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の廃棄に伴い、地上発射型中距離弾道ミサイルをアジアに配備することも検討しています。北東アジアの核軍拡を一層加速させることは許されません。

 今年は広島・長崎の被爆から75年です。核密約を公式に廃棄し、核兵器禁止条約に署名するなど「核なき世界」の先頭に立つ政府をつくる運動を強める時です。


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