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2020年2月16日(日)

主張

マイナス金利4年

弊害が明白な政策は転換を

 2016年2月16日に日本銀行がマイナス金利政策を導入して4年がたちます。銀行の貸し出しが増えて経済が活性化するというもくろみは外れ、地域金融の衰退など弊害だけが際立っています。

 日銀のマイナス金利政策は、民間金融機関が日銀に持つ当座預金の一部にマイナス0・1%の「金利」を課すというものです。通常、金融機関にお金を預ければ利子がつきますが、逆に預金する側が0・1%の「利子」を払うという異例の政策です。

経済活性化に効果なし

 マイナス金利政策はアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「第一の柱」に位置づけられた「異次元の金融緩和」の一環です。「年2%の物価上昇を2年間で実現する」ことを目標に大規模な金融緩和をすれば「経済の好循環」につながるという触れ込みで13年4月に異次元緩和を始めましたが、実体経済を押し上げる効果はありません。そこで「追加的な措置」として導入されたのがマイナス金利政策です。日銀の黒田東彦総裁は「実質金利が全般にわたって下がり、消費や投資にプラスに効く」(16年1月29日の記者会見)と強調しました。

 金融市場で金利はこれ以上下がりようのない水準に低下しました。しかし銀行の貸出金の増加率は毎年2%程度です。マイナス金利の導入前後でほとんど変わりません。安倍政権下2度の消費税増税によって消費は落ち込みました。家計の実質消費支出は、消費税増税前の13年平均の水準をいまだに下回っています。17日に公表される予定の19年10~12月期国内総生産(GDP)はマイナス成長と予想されています。マイナス金利政策が消費や経済にプラスに働くことなどありませんでした。

 一方、超低金利は銀行の収益を圧迫しています。銀行の本業は資金調達コストと貸し出しの差である利ざやで利益を得ることです。利ざやはマイナス金利導入以降、急激に低下し過去最低の水準です。東京商工リサーチの調査によると、19年3月期決算で14の銀行が、貸せば貸すほど損失が増える「逆ざや」でした。うち12行が地方銀行と第二地方銀行です。

 加えて、金融庁の方針が地域金融機関を追い詰めています。同庁の19年度金融行政方針は、収益性が懸念される銀行に「早期警戒制度」を発動して監視や指導を強めることを打ち出しました。地域金融機関から「貸し出しが増えても低金利で経営が悪化したら早期警戒制度が発動されるという矛盾した政策だ」との声が上がっています。

地方や預金者にしわ寄せ

 金融庁は地方の銀行の合併・統合を進めています。支店が削減され、金融窓口のない地域が増えて地方の過疎化に拍車をかけています。日銀は10日、銀行の「口座維持手数料」に言及したリポートを公表しました。銀行に口座を持っているだけで預金者が手数料を徴収される仕組みです。金融業界で導入について議論が起きています。日銀の超低金利政策による銀行の損失を顧客にしわ寄せすることは許されません。

 マイナス金利政策によって金利を無理やり抑え込もうとしても経済と金融にひずみを生じるばかりです。弊害が明らかな政策は転換すべきです。


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