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2020年2月14日(金)

新型感染症・緊急事態条項・中東派兵で討論

BSフジ番組で小池書記局長

 日本共産党の小池晃書記局長は12日夜放送のBS番組「プライムニュース」に出演し、新型コロナウイルス感染症、緊急事態条項を書き込む改憲論、自衛隊の中東派兵問題などについて自民党の中谷元衆院議員・元防衛相、森本敏元防衛相・拓殖大総長と議論をしました。


新型コロナ感染

不十分な国内対策―人員の充実にこそ力を

 小池氏は新型コロナウイルスの感染拡大について「とても深刻な事態だ」としたうえで、「グローバル化が進む中で日本の感染症対策が極めて不十分だということが明らかになった」と述べました。

 小池氏は、国立感染症研究所の研究費が10年間で60億円から40億円に削減され、全国の保健所が850カ所から472カ所に減らされたことを示し、「公衆衛生、特に感染症対策が国家公務員定員削減の対象になっていることは重大だ。感染症対策の人員は定員削減の対象から外し、もっと充実させていく。国の“安全保障”はこういうことにこそ力を入れていくべきだ」と主張しました。

 小池氏は、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」について「閉鎖された空間の中で、感染が広がる状態が生まれているのではないか。乗客・乗員のストレスも増している。総力あげて全員のウイルス検査を早くやって、陰性の人から下船していただくべきだ」と述べました。

 感染の有無を調べるPCR(遺伝子)検査について、小池氏は「民間を含めれば、日本には十分な技術があるわけだから、広域的に全国の力を結集して、緊急に検査態勢を拡充すべきだ」と強調しました。

 小池氏は、水際対策は引き続き重要だとした上で、「すでに国内で感染が広がっている可能性が高い。このままだと、高齢者や基礎疾患を持つ人などは深刻な事態になりかねない。対策の重点を国内での診療態勢づくりへ切り替える時期だ。率直に言って政府の対応は後手、後手になっているのではないか」と批判しました。

緊急事態条項創設

今の憲法で対応が可能―人権制約に歯止めなくなる自民改憲案

 番組では、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、憲法に緊急事態条項を書き込む必要があるとの主張が安倍晋三首相や自民党内から出ていることがテーマとなりました。

 「憲法改正しないとできないのか」との司会の反町理氏の質問に、中谷氏は「事態に迅速に対応するために法律を作る場合、私権の制限は『必要最小限』とか『民意の尊重』などの条件がつく。考慮の余地がないように憲法の規定が必要だ」と主張しました。

 小池氏は「人権への配慮は必要であり、改憲は全く必要ないし、危険だ」と反論。新型コロナを1月末に指定感染症にしたが施行は2月7日までできないことを理由に自民党の伊吹文明氏が憲法改正を主張していたことについて、国会での指摘もあって施行を前倒ししたことを挙げ、「憲法を変えなくてもできることが証明された」と語りました。

 さらに、現行憲法でも、人権を無制限に認めるものでなく、個人の人権が相互に衝突するとき「公共の福祉」という概念で調整するのが憲法の考え方だと指摘。今回も一定の感染拡大防止のために私権の制限が行われていると述べ、「今の憲法で十分に感染症にも対応が可能だ」と強調しました。

 その上で、「個人の人権は何物にも代えがたい最高の価値だ。だからこそ個人の人権を制約することができるのは、別の個人の人権だけだ。日本の憲法は、『公の秩序』などを国が決めれば人権制約できるというものではない。『緊急事態条項』が設けられればそれが根本から否定されてしまう」と語りました。

 森本氏は「緊急事態条項は必要だ」と述べつつ、それは東日本大震災のような「やむを得ない事情」のときであり、今回の事態への対応は「法律でできる」と明言。コロナ感染症を利用した緊急事態条項を持ち出す議論に疑問を呈しました。

 小池氏は「今回の事態によって国家に情報や権限を独占させてしまうのは危険だということが、中国の事態などを見ても証明されたのではないか」と語りました。

 自民党改憲案の緊急事態条項について、司会の反町理氏は「私権への国家権力の介入に歯止めがかかるのか」と問題提起しました。

 小池氏は「自民党改憲草案ではいくらでも拡大解釈できる。国会にはからず内閣が政令をつくり、期間にも対象にも制限がない。ナチスの授権法と同じだ。こういう条項を設ければ人権制約に歯止めがなくなる」と指摘。現行法でも災害対策基本法で首相による災害緊急事態を布告できることなどを指摘し、「(同法では)公共の福祉を守るために緊急政令も制定できる。憲法を変えなくても対応はできる」と語りました。

 中谷氏が「法律で縛られては自衛隊が自由気ままにできない」と述べたのに対して、小池氏は「自衛隊が自由気ままにというわけにはいかないではないか」と批判。中谷氏ががれきや車で道路がふさがっているときに勝手に動かせられないと述べたことに対しても、「災害対策基本法の改正で、放置車両の撤去もできるようになった」と指摘しました。

自衛隊の中東派兵

米軍の武力行使との一体化も―「米は核合意に戻れ」との外交努力を

 安倍首相が自衛隊の中東派兵について、野党の国会質問に「アメリカ軍との情報共有は航行の安全確保のための一般的な情報交換の一環。実力の行使には当たらず憲法9条との関係で問題ない」と答弁したことについて、小池氏は「例えば不審船が見つかり、米軍と自衛隊がそのそばにいたときに自衛隊が情報を米軍に提供し、米軍が武力行使したらどうなるか」と指摘。「自衛隊が提供した情報をもとに米軍が武力行使したら、米軍の武力行使との一体化になるのではないか。それを『想定されない』の一言で、全く答えないのは無責任だ」と批判しました。

 森本氏は「一体の軍事行動と、武力行使の一体化は違う。具体的な情報をもって武力の行使をする場合に一体化という。それ以外は一体化とは言わない」と主張。反町氏が「そういう一般的な情報と特定的な情報の区別というのはイランの革命防衛隊から見たときに彼らからは区別できますか」と質問すると、「わからないでしょうね」と述べ、イラン側から広く敵対行動と見られる可能性を認めました。

 中谷氏が「どうやって日本の船を守るのか」と述べたのに対し、小池氏は「自衛隊を中東に派遣し、アメリカと一体の軍事行動をしていると見られても仕方ないという状況こそが、日本の船を危険にさらすことになる」と強調。今後の対応として「今回の緊張をつくったのは、トランプ政権がイラン核合意から離脱したことにある。『米政府は核合意に戻れ』という外交努力を徹底してやることが日本の役割だ」と述べました。


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