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2020年2月8日(土)

きょうの潮流

 生まれたのは60年前の冬でした。おとなしく手のかからず、物心がついてからも無理をいわない子だったといいます。それが海外留学だけは、どんなに反対されても諦めませんでした▼高校のときから夜は英語の学校に通い、大学も神戸市の外語大に夜間で学びました。昼間はアルバイトで費用をため、黙々とがんばる。そして82年の春、見知らぬ世界に夢をふくらませながら、有本恵子さんはロンドンへ旅立ちました▼心配する両親に帰国の予定を知らせる便りが届いたのは1年後。しかし、指折り数えて待っていた日にも帰ってきません。音信は途絶え、時間だけがむなしく流れていく日々。北朝鮮にいることがわかったのは同じ拉致被害者からの手紙でした▼両親の苦闘が始まります。役所や警察、国会議員や政府…。あらゆる所を回り、「家族会」をつくって署名を集め、救出を訴えました。北朝鮮が「死亡」を伝えてからも▼長年帰国を待ち続けてきた母の嘉代子さんが無念のまま亡くなりました。毎日神棚に手を合わせ、娘の食事をつくり、誕生日にはケーキを用意する。病床についても「とにかく恵子を取り返してほしい」と▼子どもとの再会を果たせぬまま、力尽きてゆく肉親たち。安倍首相は「痛恨の極み」と口にしますが、何をしてきたのか。強硬と圧力の一辺倒。トランプ大統領に従って態度を変えてみたものの解決を難しくしただけです。もう一度、会いたい―。その思いにこたえられない政権。ここにも、害悪はあります。


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