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2019年12月28日(土)

トランプ政権へ“助け船”

自衛隊中東派兵 閣議決定

安保法制成立後 初の派兵

 安倍政権は27日、中東への自衛隊派兵を決定しました。1991年のペルシャ湾への掃海艇派遣、93年のカンボジアPKO(国連平和維持活動)以来、積み重ねられてきた海外派兵の歴史に、新たなページが加えられることになります。

 とりわけ、自衛隊の海外での武力行使に道を開く安保法制成立後、初めての新たな派兵です。事態の推移によっては、憲法との深刻な矛盾を抱える危険があります。

国会審議経ず 駆け込み

 今回の派兵は、閣議決定自体に「日本関係船舶の防護の実施を直ちに要する状況にはない」と明記しており、その必要性そのものに疑義があります。国会審議も経ないまま、年末の閣議で駆け込み的に決定したのは、来年1月に米主導の有志連合「海洋安全保障イニシアティブ」が活動を本格化するのに間に合わせようとしたものであることは明らかです。

 現在の中東情勢の発端は、2018年5月、トランプ米政権がイランとの核合意(別項)からの一方的離脱と経済制裁を表明したことにあります。

 イランはただちに、ウラン濃縮再開などの対抗措置に着手。一方、米側は今年5月以降、空母打撃群やB52爆撃機を派兵し、米軍を3000人規模で追加するなど、中東への兵力大増強でイランに圧力を加えました。

 こうした流れの中で、6月13日にオマーン湾で日本関係船舶への攻撃事件が発生。7月には英国のタンカーがイランに拿捕(だほ)され、9月にはサウジアラビアの石油施設への攻撃などの事態が相次いで発生しています。

 米中央軍は7月19日、ホルムズ海峡周辺などで船舶の安全確保などを行う「センチネル(番人)作戦」の実施を表明。米国は日本を含む60カ国を招いて説明会を開催し、有志連合参加を呼びかけます。これが中東派兵の出発点となります。

イランとの矛盾 深まる

 しかし、欧州諸国は対イラン政策で米国と距離を置いています。有志連合への参加は進まず、現時点での参加表明は6カ国のみ。部隊派遣済みは豪州1カ国のみです。

 こうした中で、トランプ政権の圧力とイランとの歴史的な友好関係の板ばさみになった安倍政権は深刻な矛盾を抱えることになりました。今年に入り、安倍晋三首相はロウハニ大統領らと3回にわたって会談。首相はイラン側に核合意順守を繰り返し要請するものの、トランプ政権には一度たりとも、核合意復帰を求めず、自衛隊派兵への「理解」を要請。「米寄り」の立場を鮮明にしました。

 安倍政権の決定はまさに、孤立するトランプ政権を助けるものにほかなりません。

百害あって一利なし

 日本は原油の9割を中東に依存していることから、米国の中東政策とは一線を画し、中東諸国との良好な関係を築いてきた歴史があります。いま、日本政府がなすべきことは、こうした立場に立ちかえり、イランに自制を求めるとともに、米国に核合意復帰を促すことです。トランプ政権の顔色をうかがうための自衛隊派兵は、「百害あって一利なし」です。(竹下岳)

■自衛隊中東派兵をめぐる動き

 18・5・8 トランプ米大統領がイラン核合意からの離脱表明

        イランはウラン濃縮再開など対抗措置を表明

 19・5・9 米軍が中東に空母、B52戦略爆撃機を派兵

   6・12~安倍首相がイラン訪問。ハメネイ師、ロウハニ大統領と会談

   6・13 オマーン湾で日本関係船舶など2隻への攻撃

   6・20 イラン革命防衛隊が米無人機を撃墜したと発表。トランプ大統領は一時報復攻撃を承認し、その後撤回したと発表

   7・19 米軍、ホルムズ海峡などに多国籍の有志連合創設を表明

   9・14 サウジアラビアの石油施設への攻撃が発生

   11・7 米主導有志連合の司令部がバーレーンで発足

  12・20 イラン・ロウハニ大統領が来日、安倍首相と会談

  12・27 自衛隊の中東派兵を閣議決定


 イラン核合意 核兵器開発の疑惑があったイランと米英仏独中ロが2015年7月に結んだ合意。イランが核開発を大幅に制限する見返りに、16年1月に米欧が金融制裁や原油取引制限などの制裁を緩和しました。


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