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2019年12月25日(水)

正当化生む定義・事例残す■就活生・フリー救済明記せず

パワハラ指針労政審了承 公募意見を無視

 厚生労働省の労働政策審議会の分科会は23日、職場のパワーハラスメント防止に関する指針を決定しました。指針案に1139件の公募意見が寄せられ大半が修正を求めていましたが、「すでに議論ずみ」だとして修正なく了承されました。

 指針は、ハラスメント防止措置を義務付ける法改定を受け、パワハラの定義や防止措置などを示すものです。

 指針では、パワハラの定義に関して、「優越的な関係を背景とした言動」など三つの要件に、「適正な業務指示や指導はパワハラに該当しない」との文言を明記しました。

 パワハラかどうかの判断でも「労働者の行動が問題となる場合は相対的な関係が重要」だと指摘しました。

 「適正な指導」と考えられたり、労働者の行動に「問題」があれば、パワハラを正当化する理由に使われる危険を抱えた規定です。

 指針では、「暴言」などパワハラの六つの類型ごとに、それぞれ問題事例と容認される事例を示しました。

 これらの事例は「使用者の弁解カタログ」(日本労働弁護団)だとして、労組などが削除を求めましたが、大半が残されました。

 リストラに使われかねない「処分を受けた労働者に別室で研修を受けさせる」ことや、「社会的ルールを欠いた労働者に一定程度強く注意する」ことは該当しないとしました。「一定程度」という恣意(しい)的解釈の余地を残したままです。

 救済対象に「就活生」や「フリーランス」などを含めるかどうかについて、指針では「必要な注意を払うよう配慮」との表現にとどまりました。

 国際労働機関(ILO)のハラスメント禁止条約では、顧客や取引先など第三者、フリーランスにも保護の範囲を広げており、指針の遅れが際立ちます。

 法改定と指針を受けて企業は、就業規則の整備や相談窓口の設置をはじめ防止措置に取り組むことが義務付けられます。大企業は来年6月から、中小企業に2022年4月からです。取り組まないと行政指導が行われ、従わない場合は企業名の公表もあります。

 職場でのたたかいとILO条約に見合うさらなる法改正の取り組みが焦点となります。


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