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2019年12月24日(火)

主張

75歳以上の負担増

長生き脅かす痛みを強いるな

 安倍晋三首相が議長の全世代型社会保障検討会議が先週、中間報告をまとめました。75歳以上の後期高齢者医療制度では、現在原則1割の窓口負担に「2割負担」を新設することを打ち出しました。病気になりがちな高齢者に新たな経済的負担を強いることで、社会保障予算を削減・圧縮するのが狙いです。いまでもお金のことを気にして通院を控える高齢者は少なくありません。窓口負担の「2倍化」を導入すれば、必要な受診を我慢する人たちが続出しかねません。長生きの土台を掘り崩す負担増は、きっぱり撤回すべきです。

「2割負担」導入を明記

 全世代型社会保障検討会議は9月、安倍首相が第4次再改造内閣発足時に設置を表明したもので、政権の“目玉”という位置付けです。検討会議メンバーは、経団連会長など財界代表や政府の意向を代弁する「有識者」で構成され、議論の開始当初から高齢者に負担増を求める声が上がっていました。

 19日公表の中間報告は、75歳以上で「一定所得以上の方については、その医療費の窓口負担割合を2割とし、それ以外の方については1割とする」と明記しました。2022年度実施に向け負担増の対象者を具体化する方針です。

 2割負担の導入は、08年に発足した後期高齢者医療制度で続いてきた「1割負担」原則の大転換です。当時の首相だった麻生太郎・現財務相は、現役世代より低い1割負担という「高齢者が心配なく医療を受けられる仕組み」は「ぜひ維持したい」と明言していたはずです。幅広い医療団体が「制度の根幹である高齢者が必要な医療を受ける機会の確保」のため「1割負担維持」を求めていたにもかかわらず、その声に逆らい負担増を盛り込んだことは重大です。

 政府は「負担能力に応じたもの」と主張します。しかし、現役並み所得の75歳以上は制度開始時からすでに3割負担です。保険料は75歳以上も年金収入などに基づき負担しています。保険料は改定のたびに上昇傾向の一方、低所得者の軽減措置は次々撤廃されています。負担に耐えられず保険料を滞納する75歳以上は年間約20万人に達し、滞納を理由に財産を差し押さえられた人も増加の一途です。

 年金が実質目減りする中、医療にかかる費用をどうまかなうか日々苦しんでいるのが、圧倒的多数の高齢者の現実です。この実態を無視し、新たな負担増を高齢者に押し付ける口実に「応能負担」を持ち出すことは極めて乱暴です。75歳以上の親を介護している現役世代への打撃も計り知れません。

 「応能負担」と言うなら、大もうけしている大企業・富裕層に応分の負担を求めるべきです。

仕組み自体に無理がある

 病気を発症することが多く受診回数が増える傾向にある75歳以上のほとんどは、収入が少なく暮らしも不安定です。そのような人たちを、年齢で差別した一つの独立した医療制度に押し込め、費用負担を求めるやり方自体に無理があります。行き詰まった後期高齢者医療制度は廃止し、元の老人保健制度に戻し、負担が増える仕組みをなくすべきです。「年齢を基準に『高齢者』とひとくくりにすることは現実に合わない」(中間報告)と記しながら、年齢で差別する後期高齢者医療制度の存続に固執することに道理はありません。


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