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2019年12月21日(土)

綱領一部改定案、野党連合政権

BSフジ番組「プライムニュース」 志位委員長、大いに語る

 日本共産党の志位和夫委員長は19日放送のBSフジ番組「プライムニュース」に出演し、党綱領一部改定案や野党連合政権の実現への展望などについて語りました。聞き手は、フジテレビの反町理解説委員長と長野美郷キャスターです。


立民・枝野氏との党首会談――「政権を代え、立憲主義を取り戻す」で一致

 冒頭、15日に立憲民主党の枝野幸男代表と行った党首会談について「なぜこのタイミングで」と問われた志位氏は、「臨時国会では野党共闘がずいぶん前進しました。そして(11月24日投票の)高知県知事選挙でもみんなで協力してがんばった。そのご苦労さん会ということで話し合いを持ちました」と述べ、「大きな一致点としては『安倍政権を倒し、政権を代え、立憲主義を取り戻す』という点で一致しました」と述べました。

 反町氏は、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業絡みで、東京地検特捜部がIR担当の内閣府副大臣だった秋元司衆院議員=自民、東京15区=の地元事務所などを家宅捜索した受け止めを質問。志位氏は「強制捜査が始まったということですから、疑獄事件になる可能性をもった深刻な事態だと見ています。どれだけの深さと広がりがあるか、よく見ていきたい」と表明。来年の通常国会でも秋元氏の疑惑をただす必要があると述べました。またカジノについても「ギャンブル依存症は、現状でもたいへん深刻な問題になっています。カジノは日本の庶民のふところから巻き上げて、アメリカのカジノ産業に貢ぐだけ。私たちは反対です」と述べました。

なぜ綱領一部改定か――16年間の世界情勢の変化にそくして改定案を作成した

 番組では、フリップで党綱領一部改定案の主なポイントを説明。(1)世界情勢論の組み立ての見直し――志位氏「二つの体制の共存する時代という特徴づけは成り立たなくなった」と説明、(2)資本主義の諸矛盾、貧富の格差、気候変動を特記(3)紛争の平和的解決を原則とした平和の地域協力の枠組みを北東アジアに築くと明記(4)中国について「社会主義をめざす新しい探究が開始され、21世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしている」としていた部分を削除――という4点をあげ、「なぜいま、大幅な綱領の改定に踏み切ろうとしているのでしょうか」(長野氏)とたずね、やりとりになりました。

 志位 いまの綱領は2004年に改定したものなんですね。それから16年たち、世界の情勢の大きな変化が起こっています。いまの世界の情勢に照らして、あわなくなった部分もある。中国の評価などはあわなくなってきた。こういう部分は削除をする。そして同時に、新しい流れとして、希望ある流れも出てきた。そういうものはきちんと明記する。こういう形で、私たちは綱領改定案を提案し、討論をしているところです。

 反町 (世界情勢論の組み立ての見直しに関して)「資本主義と社会主義の二つの体制が共存するという特徴付けは成り立たなくなった」と説明されていますよね。どういう時代になったということなんですか。

 志位 これまでの綱領では、世界の大きな見方の一つとして、一方に、資本主義の体制がある、他方に、1世紀前のロシア革命で始まった資本主義から離脱した流れがある。ソ連はつぶれたけれども、「社会主義をめざす新しい探究が開始されてきている」として、中国などで(社会主義をめざす)流れが続いているという見方に立っていました。しかし、いまの中国の現状を見ますと、「社会主義をめざす新しい探究を開始」している国と判断する根拠はもはやなくなったと考え、そこは削除するということを提案しています。

 反町 そうすると、いま世界は資本主義だけ?

 志位 全部が資本主義一色というふうに言うつもりはありません。しかし、「二つの体制が共存する」という特徴づけは、世界史的な流れとしては、中国について、先ほど言ったような見方の変更をするということになりますと、もはや「二つの体制の共存」という規定づけは成り立たないとはっきりさせました。

中国をどうみるか(1)――98年の両党関係正常化と、その後の中国の変化

 反町 それはソ連や、中国など、いろんな国にある共産党、社会主義政党に対して一定の歴史的な役割は終えたという意味でおっしゃっているんですか。

 志位 ソ連共産党については、ソ連はすでに崩壊したわけですからもう終わっているわけですね。あと大きな流れとして、中国という流れがあったわけです。私たちは中国についてはいろいろな評価をしてきたけれど、2004年の(綱領改定の)段階では、社会主義の事業に対して「真剣さ、誠実さ」をもって取り組んでいると判断しました。

 1998年に日中両共産党の関係正常化がありました。1966年、毛沢東の時代に「文化大革命」があり、このとき中国式の武装闘争を日本共産党に押し付けてくる、乱暴な干渉をやったんです。それで関係が断絶した。しかし(98年の関係正常化にあたり)当時の中国共産党は「真剣な総括と是正」を行ったと公式に表明しました。干渉の誤りを認めたんですよ。おそらく中国共産党が公式に誤りを認めたのは、このケースだけだと思います。そういう中に、私たちは「真剣さ、誠実さ」を見て評価もした。

 しかし、2008年~09年くらいから中国に変化が起こってきました。新しい大国主義・覇権主義があらわれてきた。

 反町 習近平体制になったことによって、ということになりますよね。

 志位 胡錦濤体制の2期目の最後の時期くらいから、いろんな後ろ向きの変化が出てくるようになりました。その都度、私たちは率直に意見を言ってきたけれど、慎重に検討するなかで、これはもう「社会主義をめざす新しい探究を開始」している国と判断する根拠はなくなったと考えまして、一部改定案ではその部分を削除したのです。

中国をどうみるか(2)――新たな大国主義・覇権主義と人権侵害の深刻化

 長野 志位さんは、先月の党中央委員会総会(8中総)で、中国について「中国公船による尖閣諸島の領海侵入、接続水域入域が激増・常態化している。両国関係の『正常化』を喧伝(けんでん)しながら、領海侵犯を常態化させるというのは、きわめて不誠実な対応だ」と述べています。この他にも、香港情勢で中国を批判するなど、志位さんが中国を批判する発言が最近は目立つわけなんですけれど、いま中国に対してはどんな思いでいらっしゃるんでしょうか。

 志位 大きく言って、二つの問題が出てきたと思っております。

 一つ目の問題は、新しい大国主義・覇権主義です。

 これがどこにあらわれているかと言いますと、一つは核兵器問題です。かつて中国は、核兵器廃絶を主張していました。核兵器禁止条約を唱えていた時期もある。ところが、この10年くらいは後ろ向きの態度をとり、核兵器禁止条約に対しても反対、妨害するという立場に立っている。アメリカと一緒になって核兵器廃絶に反対するという大きな変質が起こりました。

 もう一つは、東シナ海と南シナ海における覇権主義的なふるまいです。尖閣諸島の周辺海域で、中国公船による領海侵入を含む接続水域への入域がどうなっているか。(海上保安庁の資料を示しながら)これは最新のデータなんですけれど、今年2019年のデータで、延べ隻数で1053隻。去年の1・7倍で過去最多なんです。これまで年間1000隻を超えたことはありません。激増しているんです。

 この間、日中首脳が相互往来して、「日中関係は完全な正常の軌道に戻った」と宣伝しながら、こうやって領海侵入や接続水域入域を激増させるのは、非常に不誠実な対応だと(思います)。日本が実効支配している地域に対して、どんな言い分があったとしても、力ずくで現状変更を迫るのは国連憲章に反する。だから私たちはこれに抗議し、中止することを強く求めています。

 もう一点の問題は、香港、ウイグル自治区で人権侵害が深刻化していることです。人権問題というのは国内問題でなく国際問題です。人権を擁護し発展させるというのは国際社会に対する義務であり、そのための条約があるわけです。そういうことに照らして、香港で起こっていることは非常に深刻だと(考えます)。私は11月14日に香港での弾圧を即時中止すべきだという声明を出し、中国政府にも伝達しました。

 この香港の事態をみる際に、日本のメディアで「どっちもどっち」というような報道があるでしょ。

 反町 学生側もちょっと荒っぽいやり方をしているということですね。

 志位 香港警察の暴力も問題だけど、デモ隊の暴力も問題だ、どっちもどっちだと(いうものです)。私はこれは間違っていると思っています。私たちも、デモ参加者による暴力には反対です。平和的な方法で自分の意見を表明することは大事だということは私たちも求めています。しかし、警察の暴力は次元が違いますよ。

 いくつかポイントがあるんですが、今年6月に基本的に平和的な200万人のデモが起こったでしょ。あの当初の段階から中国政府と香港政府は、「組織的暴動」とレッテルを貼って抑圧的措置をとった。これが一つ。もう一つは、丸腰の若者の腹部に向かって実弾を撃った。これは野蛮で言語道断の暴挙だと思うんです。さらにもう一点言いますと、深圳に武装警察部隊を展開させて威嚇をした。武力による威嚇です。

 そして、これを指導・承認しているのは中国の最高指導部です。習近平主席が香港の行政長官と会って、もっとしっかりやりなさいと言い、その督励のもとでやっているわけですよ。ですから、中国政府の直接の責任が問われる。私たちはそう考え、人権弾圧は直ちに中止すべきということを強く求める声明を出しました。

 反町 アメリカの場合は関税戦争を仕掛けた後から、別の形で中国に対して人権問題の解決に向けた圧力をかけている。どう考えますか。

 志位 私は、今、アメリカがやっているやり方は賛成しかねます。

 反町 あくまでも話し合いですか。

 志位 話し合いというよりも、国際世論が何よりも大切です。国際世論によって、どこがどう間違っているのかをしっかり突きつけていく。国際世論によって中国による人権蹂躙(じゅうりん)を包囲し、やめさせていく。一定の(制裁)措置を取り始めますと、やはりエスカレーションが起きる。そういう問題があるんですよ。ですから私たちは、何よりも世論で包囲していくことが大事だと考えています。

 反町 あくまで言論戦で決着を、ということなんですね。

 志位 それが大切です。実は3年前の第27回党大会決議に「中国に新しい大国主義・覇権主義があらわれている」という批判を入れたんですよ。そうしましたら、党大会の直前に程永華中国大使(当時)が中国共産党中央委員会の代表という立場で日本共産党本部を訪ねてきて、私に対して、決議にある中国批判の部分の削除を求めてきました。私は、もちろんきっぱりと拒否し、なぜ中国が間違っているかを、一つひとつじゅんじゅんと話しました。「削除してほしい」と言ってくることは、逆にいえば理詰めの批判は手痛いわけです。

問われる政府の対中外交――言うべきことを言わない外交でいいのか

 反町 尖閣の問題では「(中国は)来るな、来るな」というだけですか。

 志位 そもそもそれを言ってないじゃないですか、日本政府は。日本政府の一つの大きな問題は、習近平氏を国賓で来春呼ぶことが先にありきで、言うべきことを言っていないことです。日中両国首脳が会ったプレス(発表)を見ても、まともに言っている形跡はありません。尖閣の領海侵犯などに抗議し、「止めなさい」と言った形跡はない。香港についても「弾圧はやめるべきだ」と全然言わない。尖閣は日本の領土ですよ。香港はすぐ近くの国の人権問題ですよ。これぐらい言わなくてどうするのか。

 反町 習近平主席の国賓来日について共産党としては反対なんですか。

 志位 国賓で招くということが先にありきで、言うべきことを言わないというのは大問題です。まずはこの態度を改めるべきだと思います。

 反町 現状は言うべきことを言っていないから、国賓として招くべきではないという理屈にはならないんですか。

 志位 言うべきことを言わないで、国賓――最高待遇の訪日ありきというのは問題だと思います。そこまでは言っておきたい。

 反町 国賓となると、天皇陛下が習近平主席をお迎えしての晩さん会などさまざまな歓迎行事があります。天皇陛下がそういう形で習近平氏と向き合うことについては皇室の政治利用に当たるのかどうか。

 志位 かつてこういうことがあったんですよ。1989年の中国の天安門事件で中国の軍隊がたくさんの学生を殺害したことに対し、私たちは糾弾の声明を出し、国際社会も糾弾した。その直後の時期(1992年)に(日本が)天皇訪中を行い、それが国際的制裁が緩和されていく契機とされたということがあります。そういうことを繰り返してはいけないということを言っておきたいと思います。

 反町 今回迷う理由はどこなんですか。なぜイエスかノーが言いにくいんですか。

 志位 やっぱり国と国ですから、いろいろな交流一般を私は否定しているわけじゃない。ただ、いま一番問われているのは、国賓に招くということで、相手の嫌がることは一切言わないというやり方をまず改めなさいということです。それを日本政府がきちんとやるかどうかなのです。

 (それを)やった場合に中国が来るかという問題もある。中国はまさに日本がどう出るか見ているわけですよ。ですから、まだ中国は(来日の)回答していない。日本が中国に対して言うべきことを言ってきた場合にはもう行かないぞという姿勢なわけですね。

 反町 そうすると先に国賓待遇だというカードを切ってしまった安倍政権の対中姿勢に問題がある?

 志位 (中国側に)カードを切ってしまった、招待してしまったわけです。それで(中国は)好き勝手をやっている。これでいいのかということですね。少なくとも尖閣と香港という二つの問題を抱えているわけだから、きちんと日本は道理に立って「間違いは間違いです」と言う。それを中国がきちんと受け入れて日本に来るというんだったら迎えることもあるでしょう。そういう関係じゃないでしょうか。

 反町 今月の末に日中韓首脳会談が中国・成都であります。その場において、尖閣問題で対応善処を求める、ないしは香港問題に対する強い憂慮の念を伝えるということを安倍総理からやった場合、(国賓訪日の)環境は整ったと?

 志位 河野防衛相が訪中し会談しましたが、尖閣の問題は「強い懸念」といっただけで抗議もしなければ中止要求もしない。香港情勢に対しても「憂慮」しか言わない。「弾圧をやめろ」とは言わない。それを言えるかどうかなんです。

 反町 なるほど。言葉として。

 志位 言葉として、です。尖閣については(中国公船による領海侵入を含む接続水域への入域が)1・7倍にもなっている事実を突きつけて「力による現状変更はやめなさい」と。中国側に言い分があったとしても、「国際ルールに違反している。だからやめなさい」と言えるかどうか。香港については「弾圧を即時やめなさい」と言えるかどうか。この二つが大きな試金石だと思います。

 私たち日本共産党としては、孔鉉佑駐日大使が先日党本部にお見えになった時に、尖閣と香港についてわが党の立場を伝え、本国にも伝えてほしいと言いました。議論になりましたけれども、最後に大使は「本国に伝える」と言いました。

 中国問題をめぐるやりとりの最後に、志位氏は次のように述べました。

 志位 二つ言いたい。

 中国が軍事で来たから、日本も軍事を強めようという「軍事対軍事の悪循環」には私たちは反対です。事実と道理を突き付けて、じゅんじゅんと説く外交が必要だというのが一つ。

 もう一つ言いたいのは、私たちは中国指導部の間違った行動は批判します。しかし反中国というのをあおっていく排外主義、あるいは過去の侵略戦争を美化するような歴史逆行に私たちは反対します。

 (中国の批判をする場合でも)そこはきちんと節度をわきまえた批判をやっていきたいと思います。

貧富の格差の拡大――資本主義の“総本山”のアメリカで社会主義の「復権」が…

 長野 綱領改定案の報告で志位さんは、資本主義の矛盾として貧富の格差の拡大を問題視する一方で、資本主義の発達が遅れた国々における社会主義的変革は難しいという指摘もしています。共産党は今の資本主義と社会主義の関係をどうとらえているんですか。

 志位 私たちは、「二つの体制が共存するという特徴づけは成り立たなくなった」と表明したんですけれども、それでは資本主義の方が万々歳かというと決してそんなことはない。

 利潤第一主義ということが資本主義の原理です。その矛盾が噴出している。(綱領一部改定案では)とりわけ貧富の格差の世界的規模での拡大と地球的規模での気候変動について、まさに人類の生存のかかった大問題として世界資本主義の矛盾の焦点になっていると特記しました。

 貧富の格差について言いますと、アメリカの『フォーブス』誌は「世界のビリオネア」―10億ドル以上の資産保有者がもっている資産総額が、なんとアフリカのGDP(国内総生産)の4年分に匹敵すると(発表しています)。そのぐらい世界の格差が目もくらむような勢いで広がっている。

 反町 なるほど。

 志位 それから先進国の内部でも、ほぼ例外なく格差が広がっているという状況があるんですね。その中で私がたいへん印象深かったのが、資本主義の総本山であるアメリカでの二つの世論調査です。

 一つは、大手世論調査機関の「ピューリサーチ」。今年4~5月に実施した調査では、20代~30代の若者の半数が資本主義より社会主義がいいと答えた。社会主義に希望を見いだしている。

 もう一つは、NBC系メディアの世論調査で、女性の55%が資本主義より社会主義の社会に住みたいと答えていることです。

 反町 民主党上院議員のサンダース氏の政策は共産党から見たら「マル」なんですか。オッケーなんですか。

 志位 すべて「マル」とは言わないけれど、ずいぶん接点がある。

 反町 アメリカの人たちのソーシャリスト、ソーシャリズムが意識するのはサンダース氏ですよ。

 志位 サンダース氏あるいは民主党下院議員のアレクサンドリア・オカシオコルテスさんらの政策を見ますと、富裕層に増税をと(主張しています)。

 反町 再分配を強化しますと。

 志位 それから、社会保障をきちんとやろうという方向です。再分配をしっかりやる。1%のための富裕層や大企業のための政治から、99%の国民のための政策に切り替えようというのは、私たちと向いている方向は一緒です。

 資本主義の“総本山”のアメリカで、一種の社会主義の「復権」が起こっているというのはたいへん重要なことだと思いますね。

ロシア革命と中国革命――社会主義にすすむ前提のないところからの出発だった

 反町 ロシア革命のころに比べて、もっと大きな貧富の格差が生まれているのであれば、いまこそ社会主義革命の時期が目の前に来ているんだぞという意味でおっしゃっているんですか。

 志位 ロシアで起こった革命というのは、第1次世界大戦という状況下で起こったものです。特別の状況下で起こった革命なのです。レーニンの時代、とくに晩年の時代には、ずいぶん合理的な探究がされたんですけども、スターリンになって専制主義・覇権主義という大きな変質が起こって(ソ連)崩壊に至ったわけですね。このロシアの革命を見るときに、スターリンの誤りは決定的に大きいんですけども、やはり出発点の遅れというものは大変なものがあったんですね。

 反町 出発点の遅れ?

 志位 たとえば、レーニンが最晩年に書いている論文を読むと、ロシアで文字の読み書きができる識字率は、1920年の統計で(国民全体の)3割、女性は2割です。ですから、レーニンは、“自分たちは社会主義の革命をやったが、これから文明をつくらなければいけない”と言っています。生産力の水準も低い、まだ主要部門で電化さえされていないところからスタートしなければならない難しさがあった。つまり社会主義に進むうえで不可欠な、高度な生産力、自由と民主主義の制度、人間の豊かな個性――いろんな前提がないところから始めなければならなかった。

 反町 今はできている?

 志位 マルクスの考え方のなかに、「資本主義の高度な発展は次の社会――社会主義・共産主義に進んでいく条件をつくる」と(いうのがあります)。

 一つは、高度な生産力。二つ目は、経済の社会的な管理と規制の仕組み。たとえば銀行制度など経済の社会的な管理の仕組みができてくると。三つ目に、人民のたたかいによって労働時間の短縮など「暮らしと権利を守るルール」ができてくる。

 反町 いまそういうのが進んでいるような気がしますけど。

 志位 ええ。四つ目に、自由と民主主義の諸制度がつくられる。最後に五つ目に、人間の豊かな個性が、まだ搾取制度はあるけど生まれるんだと。こういう五つの要素が資本主義の発展の中でつくられてくる。もちろん、いま述べた要素のうちのいくつかは、人民のたたかいによって初めてつくられるし、たたかってこそ先に進めるんですけれど、資本主義の高度な発展のなかで、次の社会に進む物質的な条件、客観的な条件、そして主体的な条件がつくられてくるというのが、マルクスの展望だったわけです。

 そういうことから考えると、ロシア革命が開始された時代、それから中国革命の出発点では、そういう諸条件というのは整っていない。あるいはきわめて未成熟です。そういうところから始めた場合は、革命のあとにそういう条件をつくらなければならなかったわけです。これが非常に難しかった。

日本における未来社会のもつ大きな可能性――「人間の自由で全面的な発展」が目標

 反町 今は、どうなんです?

 志位 私たちは、今の日本で、一気に社会主義にいこうというプログラムではありません。まず、アメリカ従属と財界中心というゆがみをただす民主主義革命を行い、そのうえでその先(社会主義・共産主義)に進もうというプログラムなのですが、日本の場合、いま言った五つの要素がみな熟しているではないですか。ですから、社会主義に進むならばはるかに大きな可能性と展望が開けてくる。

 反町 今の日本にこそ社会主義革命の条件は整っているということですか。

 志位 そこに進むいろんな要素が熟してきていると思います。

 反町 社会主義革命をめざすという心を共産党は捨ててはないのですよね。

 志位 もちろんです。私たちは「社会主義的変革」という言葉を使っています。

 反町 革命ではなくて、変革なんだ。革命はやはり武力を使うこと?

 志位 違う、違う。私たちの立場は議会で多数を占めて、平和的に進むということです。

 反町 そうか、暴力的革命というのはすでに捨てているんだ。闘争手段としては。

 志位 それは決してやらない。平和的な手段でやっていくのですが、革命というのはいわば権力が移るということです。

 私たちも入って民主主義的な革命を実行したとするじゃないですか。そうした民主主義的な政権が今度は国民の多数の合意で、社会主義に進もうといった場合に、同じ勢力が中心になって社会主義の道に進むという可能性がかなり高いですよね。その場合は、革命というより「社会主義的変革」という言葉が、適切になると思います。

 反町 民主的議会制度に基づいた、徐々な変化。

 志位 そうです。一段一段とやっていくということです。

 このやりとりの最後に志位氏は次のように述べました。

 志位 一番大事なのは労働時間が短縮され、たとえば1日3時間や2時間、週3日とか4日でもやっていけるようになるということです。残りの自由な時間で、すべての人々に眠っている潜在的な能力を自由に開花させ、自分の能力を豊かに全面的に発展させることができるようになる。すべての人間の自由で全面的な発展を保障する社会――これが私たちのめざす社会主義であり、共産主義なんですね。

野党連合政権――いま安倍政権に代わる政権構想を示すことがどうしても必要

 長野 共産党がめざす野党連合政権はどういうもので、どんな形になるんでしょうか。

 志位 私たちは野党共闘という道を2015年9月からずっと追求して、3回国政選挙をやりました。一定の成果が上がってきたと思うのですよ。

 ただやはり大きな課題として、野党がみんなで力をあわせて政権をつくろうという合意をつくり、安倍政権に代わる野党の政権はこうだというのを示すことがどうしても必要だと(考えています)。それがないと、国民のみなさんは自民党がおかしなことをやっていても、別の受け皿が見えてこなかったら、なかなか動かないと思うのですね。ですから、それをやろうじゃないかと言っています。

 反町 共産党さんはその時には政権に参加するんですか、閣外協力ですか。

 志位 閣内か閣外か、私たちは今から、どっちでなければいけないということを言うつもりはありません。

 反町 協力はするけれども(閣内に)入らないかもしれない。

 志位 その可能性もあると(考えています)。また、入った方がいいとみんなが判断して、われわれも判断すれば、入ることもあるでしょう。

 反町 志位さん、総理を狙っています?

 志位 それは狙っていません。(笑い)

 反町 なんで狙わないの。政権を狙わない政党は、ネズミを捕らない猫ともいう話もあります。

 志位 基本的には野党第1党の党首が総理候補ですから。

 反町 そんなことないでしょ。野党第1党でないところから、細川さんなんか総理になっているじゃないですか。

 志位 それはもう、みなさんがそういうふうにまとまった場合には、何だってやりますよ(笑い)。ただ、基本的には、野党第1党の党首が総理候補だろうということを、私は言ったのです。

天皇の制度――憲法の規定をきちんと守っていくことが何よりも大切

 反町 野党連合政権になったときの基本的な政策についていくつか伺いたいのですが、共産党さんは野党連合政権になったら天皇制にたいしては、どう向き合いますか。

 志位 これは、今の憲法上の制度について手を付けるとか、変えるとかいうことは考えていません。私たちは今の天皇の制度について、憲法の規定をきちんと守るということを求めます。つまり、天皇は「国政に関する権能を有しない」(第4条)という制限条項を、きちんと守るということを求めます。憲法1条も含めて全条項を守るというのが、私たちの立場です。

連合政権と自衛隊――安保法制を白紙に戻すことが共通の大目標

 反町 自衛隊はどうするんですか。

 志位 私たちの党の立場としては、自衛隊は憲法と両立しないという立場は変わりません。ただ、この立場を政権の中に持ち込むつもりはないんです。

 反町 えっ? どういうことですか。

 志位 私たちが参画する野党連合政権がとるべき態度として自衛隊違憲論をとれということを主張するつもりはありません。

 自衛隊と憲法について野党が一致しているのは、2015年の安保法制を白紙に戻す、集団的自衛権の行使はできないようにするということです。だからここまできちんとやるというのが憲法と自衛隊についての私たちの主張です。野党連合政権ではこれを実行すればいい。

 反町 国を守るための自衛力は、共産党さんは警察だけでいいのか、軍事力まで持つべきなのか。そこはどうなのですか。

 志位 憲法9条というのは、軍事力の保持を禁止しているわけです。ですから、将来的な目標としては、9条の完全実施という目標に進む必要がある。しかし、これはすぐにはできません。国民多数が(9条の完全実施で)合意していく状況をつくるためには、日本を取り巻く国際環境をよくして、国民の多数の合意が成熟して初めて前に進める。それまでは、自衛隊と当然共存していく一定の期間が生まれるというふうに考えています。

連合政権と日米安保――新ガイドラインをただしていく

 反町 日米安保はどうするんですか。

 志位 日米安保も私たちは、安保条約はこれは諸悪の従属の根源ですから、これも国民多数の合意によって廃棄をすると。そして日米友好条約に変えるという大方針は変えません。

 ただ、これも、野党連合政権にそれを持ち込んだら、一致しませんよね。ほかの党と。だから、持ち込まない。

 そうすると安保条約の問題をどうするか。どこを変えるかというと、新ガイドライン(日米軍事協力指針)です。つまり、新ガイドラインに基づいて安保法制をつくったわけだから、新ガイドラインについては、これをたださないといけない。これを求めていくというのは、野党内で一致しうると思います。

消費税――5%減税で野党が足並みそろうように力をつくす

 反町 消費税は、「れいわ新選組」さんを入れるか入れないかどうかは別として、みんなバラバラではないですか。共産党さんは「消費税は5%に戻せ、廃止」を?

 志位 緊急にまず5%に戻せと。将来的な目標は廃止ということです。これはよく話し合ってみたいと思っています。

 10%に上げたことで、すでにたいへんな景気悪化が起こっているじゃないですか。家計消費も落ち込む、景気動向指数も落ち込む、それから日銀短観も悪化する。すべてが悪くなっているじゃないですか。ですからこれは、大失政だったことは明らかで、5%に戻すべきだと(主張しています)。5%に戻して景気回復を図るということで、野党の足並みがそろうように、私たちとしては努力したいと思います。

 反町 5%(減税分の)11兆円はどこから持ってくるんですか。

 志位 私たちの財源政策は、富裕層や大企業に対する優遇税制をただす。そして(所得税などの)最高税率を引き上げる。法人税についても、安倍政権で下げたものは戻すということを考えています。軍事費についても、イージス・アショア、辺野古の埋め立て費用など、メスをズバリ入れていく。「国債を乱発して減税する」というのは理解されないわけであって、やはり歳出・歳入の改革で、財源をこうやってつくります、という政策を具体的に出しています。

「北東アジア版TAC」は大いに可能性がある

 反町 共産党さんのお考えというのは、最終的には自衛隊を憲法違反の存在だからなくし、日米安保もなくして、ほかの友好条約のネットワークを張り巡らすという意味で、非武装中立論ですか。

 志位 先ほど北東アジアに平和協力の枠組みをつくろうといいましたが、これを緊急にやろうということです。

 反町 これはどういうイメージなんですか。

 志位 ASEAN(東南アジア諸国連合)ではTAC――東南アジア友好協力条約という条約を結んでいます。あらゆる紛争問題を話し合いで解決しようという条約を結んでいる。とことん話し合いをやって、紛争が起こっても戦争にしない知恵が働いているわけです。こういう平和の地域協力の枠組みがASEANでできている。同じような枠組みを北東アジアにもつくろうではないか。これが「北東アジア平和協力構想」です。2014年の党大会で提案しました。

 反町 どこの国、地域を対象としてあげているんですか。

 志位 国のイメージは6カ国協議の構成国です。つまり、日本、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ。

 反町 アメリカもここに入れるんですか。

 志位 入れます。この6カ国で「北東アジア版TAC」を結ぶということです。つまりあらゆる問題を武力ではなくて、平和的話し合いで解決することを締約国に義務付けるTACを結ぶ。これは不可能な話ではないと思います。

 なぜかというと、いまあげた6カ国は、すでにASEANとの関係では、みんなTACを結んでいるんです。ですからTACを北東アジア域内での平和のルールにしていくことは可能だと思います。まずこの地域を、戦争の心配のない平和と安定の地域にしていく。そのためにはやはり北朝鮮の核問題の解決はどうしても必要です。いまこう着状態や逆行もあるけど、なんとか始まった対話による解決の流れを成功させることができれば、6カ国による「北東アジア版TAC」への道が、大いに開けてくる可能性があると思っています。

「提言」は「多様性のなかの統一」――「三つの転換の方向」をみんなで共有

 最後に志位氏は、「政権交代を実現させるために」を「提言」を求められ、フリップに「多様性のなかの統一」と書いて説明しました。

 志位 野党はそれぞれ別の党ですから、それぞれの主張、違いがあっていい。違いがあっても、お互いその違いを認め合って、お互いに敬意を払って、リスペクト(尊敬)して、一致点で協力しよう、つまり、多様性を大事にしながら一致点でしっかり協力していこうと。多様性を大事にしながら、団結を図っていくというのが一番強いのではないでしょうか。

 反町 自民党政治打倒の一点が目標化していませんか。

 志位 そんなことはありません。野党間ではすでに13項目の政策合意があります。この中には経済の問題もある、原発の問題もある、辺野古の問題もある。きちんと包括的な合意があります。これを土台にしつつ、「三つの転換の方向」をみんなで共有してすすもうではないかといっているんです。

 一つは、憲法に基づき、立憲主義、民主主義、平和主義を回復する。

 二つ目は、格差をただし、暮らし・家計応援第一の政治にきりかえる。

 三つ目は、多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する政治を築くというものです。

 この三つは、当たり前のことのように見えるけど、みんな安倍政権にないものですよ。立憲主義もない、格差是正もない、多様性の尊重もない。ですから、安倍政権からの転換の理念を示していると思います。

 しかも、この三つは、私は野党がみんな合意できるのではないかと思う。だから、この方向性をしっかりと掲げて、理念もしっかり掲げて、野党が立ち向かっていけば、国民のみなさんの大きな支持は得られるのではないかと考えています。

憲法通りの政治をやったら大改革となり、豊かな日本の展望が開ける

 志位氏に対し視聴者から「時代の流れにより共産党は綱領を改定しましたが、時代の流れ、および変化に伴い憲法は改正しなくていいのですか」(福岡県の30代の男性)の質問が寄せられました。

 志位 今の日本国憲法はすごく先駆的なもので、むしろ憲法で書いてあるいろんな問題が実現していない。例えば、憲法24条には「両性の平等」とありますが、日本はジェンダーギャップ指数・世界122位。一番下のほうですよね。あるいは、憲法25条には「社会保障の増進」とあるけど、社会保障の切り捨てばかりやっている。

 ですから変えるべきは憲法ではなくて、憲法をちゃんとやっていない政治の方を変えるべきだというのが、私たちの主張なんです。私は、憲法に書いてある通りの政治をやったら、ものすごい大改革になると思うし、豊かな日本の展望が開けると思っています。

資本主義を乗り越え、先に進むことが大局的に求められている

 また、「新綱領の趣旨にかんがみ、共産党という名称を変えるべきときを迎えたのでは」(東京都の60代・男性)という意見も。

 志位 これは(綱領一部改定の)「趣旨にかんがみる」と、ますます共産党という党名が大切だと思っています。

 資本主義の矛盾が噴出し、貧富の格差が広がっています。気候変動は果たして、資本主義という枠組みで解決できるのかという問題があります。もちろん、私たちは資本主義の枠組みの中でも最大限の真剣な取り組みをやって解決のために努力しなければならない。しかし同時に、この問題に取り組んでいる運動をやっている側から、「今のシステムで解決の方策が見つからないのなら、システムそのものを変えなければならない」――つまり、利潤第一――環境より利潤を上に置くような経済システムそのものを変えなければいけないのではないかという議論が起こっているじゃないですか。

 ですから、今の資本主義の矛盾――貧富の格差、気候変動、この二つの大矛盾からしても、資本主義を乗り越えて、先に進むということが大局的には求められていると思います。それが社会主義であり、共産主義なんです。

 反町 のれんは変えないと。

 志位 変えません。


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