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2019年12月15日(日)

きょうの潮流

 自分は何のために、だれのために働いているのか。低賃金で長時間の過密、そのうえ不安定。人間を否定するような働かせ方はいまや世界共通の課題です▼EU離脱を唱える保守党が大勝したイギリスも同様です。2008年の金融危機後に政府がとってきた緊縮財政は福祉を後退させ、働く現場をより過酷にしました。増大する非正規や名ばかりの個人事業主の多くは労働者の基本的な権利さえも与えられずに▼仲間から尿瓶(しびん)を渡され、時間に追われながら馬車馬のように働く宅配運転手の父親。介護士として他人の生活の面倒をみながら、自分の子どもたちとの時間がとれない母親。やがて、いちばん大切な家族のきずなも壊れていく―▼労働者や社会的に弱い立場に置かれている人たちを描いてきたケン・ローチ監督の新作「家族を想(おも)うとき」が13日から公開されています。あらゆるものを犠牲にしてまで働くことをやめられない現実、搾取や貧困の実態が迫ってきます▼「もがけばもがくほど、大きな穴の中に沈んでいく」。必死に家族を支えようとする母親の悲しい嘆きは、もうけ最優先のしわ寄せに苦しむ労働現場を代弁するかのよう▼だれもが尊厳ある人生を送るために、社会の構造的な問題を明らかにしたい。テレビの是枝裕和(ひろかず)監督との対談で語っていたローチさん。人として大切なものを失っていく社会とは何のために存在するのか。その問いかけは、人間らしく働き生きられる世界をめざす、すべての人びとに向けられています。


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