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2019年12月2日(月)

きょうの潮流

 師走の都会の杜(もり)に現れた巨大なスタジアム。日曜のきのうは完成した新国立競技場を一目見ようと、色づく神宮外苑の周りを大勢が散策していました▼およそ120年前に近代オリンピックが始まってから、夏の五輪を複数回開いた都市は4都市。しかも同じ主要会場となるのは東京の国立競技場が2例目となります。五輪史にも刻まれる日本スポーツの拠点はしかし、暗く悲しい歴史を背負っています▼もとは明治天皇を祭るために造られた神宮。その外苑に競技場建設が据えられ、そこで行われる競技は「明治神宮に奉納する宗教儀式」として位置づけられました(後藤健生著『国立競技場の100年』)▼国内初の大規模な近代スタジアムは完成近くで関東大震災に遭い避難所に。軍国主義の強まりとともにスポーツは変質させられ、行軍訓練や国防競技が増え、国民を戦争に駆り立てる舞台となっていきました。出陣学徒の壮行会はその帰結ともいえます▼戦後は駐留米軍に接収され、返還後は自衛隊の前身にあたる保安隊の観閲式にも。その後、64年東京五輪の中心となる国立競技場として生まれ変わりますが、今回の建て替えでは周辺住民の追い出しや工期優先の過酷労働による過労自殺が起きています▼全国の人びとが心を一つに―。そんな願いをこめ、新国立の軒びさしや屋根には全都道府県の木材が使用されているそうです。歩んだ道のりを省みて長く平和の発信地となれるか。将来にわたり国民の財産として親しまれる条件です。


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