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2019年11月25日(月)

国が国保料値上げ圧力

ペナルティーで自治体を誘導

 いまでも高すぎる国民健康保険料・税の問題で、国が自治体に大幅・連続値上げを迫る“圧力”を強めています。厚生労働省は、国保料の値上げを抑えたり、引き下げたりするために一般会計から国保特別会計に独自に公費繰り入れを行う市区町村に対し、国からの予算を減らすペナルティー措置を2020年度から導入する方針です。高額負担に苦しむ住民生活を無視した、公費削減ありきの姿勢を露骨に示したものです。


 ペナルティー措置を新たに設けるのは、国保の「保険者努力支援制度」により国が出す交付金です。国保財政の運営責任を市区町村から都道府県に移し、大幅・連続値上げを迫る仕掛け=「国保の都道府県化」に合わせ、18年度に創設されました。市区町村分と都道府県分とでそれぞれ年500億円ほどの規模です。

 同制度は、都道府県と市区町村の国保行政を国が採点し、“成績が良い”自治体に交付金を増やす仕組みです。採点項目には、市区町村独自の公費繰入金を減らすよう都道府県が“指導”した場合に、都道府県分の交付金を増やすことなどを盛り込んでおり、繰入金の削減による国保料値上げを誘導しかねないことが問題になっていました。

 20年度はさらに、支援制度の「配点のメリハリを強化」します。市区町村にも、公費繰入金の削減・解消の取り組みを進めれば交付金を増やす“アメ”を用意するうえ、削減・解消の取り組みを進めないと交付金を減額する“ムチ”を市区町村と都道府県の双方に設けます。(表)

 厚労省はこれまで、公費繰り入れは「自治体の判断」でできると国会答弁してきました。自治体独自の施策を禁止すれば、憲法が定める地方自治の本旨を侵すことになるためです。にもかかわらず、安倍政権は憲法の趣旨に反して、公費削減への圧力を強化しているのです。

 しかし、国保料はいまでも高すぎるため、加入者の大半を占める非正規雇用・低所得の労働者や年金生活の高齢者らは耐えがたい高額負担を強いられているのが現状です。大幅・連続値上げとなれば、住民の命と健康、暮らしをいっそう脅かすことになります。

 国保料の高騰が止まらなくなったのは、国が国庫負担金を減らし続けてきたのが原因です。国保料の抜本的引き下げのため、全国知事会など地方3団体が求めてきた国庫負担金の増額にかじを切ることこそが国の責任です。

地方自治体を生活守る防波堤に

 市区町村が国保料・税の独自軽減のために行う公費繰り入れにペナルティー措置が導入されても、厚労省が国会答弁してきたように、公費繰り入れが「自治体の判断」であることは変わりません。

 さらに、厚労省は、国保料負担を全面的に抑える公費繰入金は「赤字」だとして「削減・解消」を迫る一方、自治体が条例を通じて行う、被災者、子ども、生活困窮者などの国保料の独自減免に充てる公費繰入金は「赤字」に分類せず、20年度以後もペナルティーの対象外としていく方針です。この間、各地でこの“赤字にならない繰入金”(決算補てん等目的以外の繰入金)を活用した取り組みが広がっています。

 子どもの国保料均等割部分について、18年度からは▽東京都清瀬市は第2子以降を最大5割減額▽同昭島市は第2子を5割減額。3子以降9割減額▽埼玉県富士見市は第3子以降を全額免除―などが実施されました(対象年齢や所得制限の有無で差があります)。

 国の悪政言いなりではなく、住民生活を守る防波堤となるかどうかが問われています。


 国保「保険者努力支援制度」で支援金が減額される主なケース(2018年度の実施状況を採点)

 〈市区町村〉

 公費繰入金の削減・解消計画策定対象だがつくっていない

 同計画のなかで削減の目標年次・削減額・具体的取り組みのいずれかを定めていない

 18年度までに解消が見込まれるとして計画未策定だが、18年度に前年度以上の公費繰り入れを行った

 〈都道府県〉

 計画策定対象の市区町村のうち1割以上が上記ケースのどれかに該当している

 市区町村の計画の取りまとめと公表を全く行っていない


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