しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月18日(月)

きょうの潮流

 「兄さん、お嫁にいくよ」といったきり二度と会いに来なかった妹。はじめて外出許可をもらい家に戻ると、「もう二度と帰ってきてくれるな。兄や姉たちにも迷惑がかかるといけないから」といわれた父の言葉…▼国の誤った隔離政策によって、故郷や家族と引き裂かれたハンセン病の元患者たち。それは本人だけにとどまらず、肉親をも長く苦しめました▼真っ白になるまで消毒された実家。村八分で故郷を追われた一家。社会から受けてきた、ひどい扱いの数々。世間から離れ、息をひそめて生きてきた彼らもまた、偏見と差別にさらされた苦痛の歴史に刻まれています▼「悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受けとめ、深くおわびする」―。ハンセン病家族にたいして、補償と名誉回復をはかる法律が国会で成立しました。元患者や家族は喜びとともに差別をなくす一層の努力を国に求めています▼壁は厚く、いまだ根強い。この訴訟でも原告の多くは匿名で参加。1996年に元凶となった隔離政策が廃止されてからも、宿泊を拒んだホテルがありました。人権回復のたたかいは、一人ひとりが大切にされる社会につながっています▼いま国立ハンセン病資料館では没後60年を迎えたハンセン病詩人、志樹逸馬(しき・いつま)の作品に光をあてています。「あなたも生きているように私も生きる。私も生きるようにあなたも生きる。一つの生命をみつめる。今日の努力を生むこの痛みこそ、私の生活を助け、この癩(らい)の社会にも激しい愛情を感じる」


pageup