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2019年11月15日(金)

主張

NHKへの圧力

放送の独立を揺るがす問題だ

 かんぽ生命保険の不正販売を告発したNHK番組に対し日本郵政グループが執拗(しつよう)に抗議し、NHK経営委員会(委員長=石原進JR九州相談役)がNHKの上田良一会長に「厳重注意」したことが国会審議などで問題になっています。高市早苗総務相は経営委の行為を問題視しない姿勢を示していますが、そんなことではすまされません。一連の経緯を見れば、放送の独立を揺るがす深刻な事態であることを浮き彫りにしています。

日本郵政から執拗に

 NHK番組「クローズアップ現代+」が、「郵便局が保険を“押し売り”!? 郵便局員たちの告白」を放送したのは昨年4月です。その際、NHKは番組の続編をめざし、情報提供を呼びかける動画をホームページに掲載しました。

 これに対し郵政グループが動画の削除を求め、NHK側がそれに応じ、続編の放送も見送ったことが、今年9月末に明らかになりました。さらに郵政側がNHKのガバナンス(企業統治)を問題にして体制の強化を要求し、NHKの経営委員会が上田会長に「厳重注意」した上、NHK放送総局長が上田会長名の「謝罪文」を郵政に届けていたことも分かりました。

 番組の続編は今年7月末まで放送されず、それが結果として、視聴者への警告を遅らせ、不正販売の被害拡大につながった可能性があります。自らの不正を改めるのでなく、番組制作に介入した郵政の責任は重大です。しかも、郵政側は、鈴木康雄上級副社長がNHKを監督する立場の官庁である総務省元事務次官という経歴を前面に出してNHKへの「抗議」を主導することまでしていました。

 郵政に屈し、会長を「厳重注意」した経営委の姿勢は問題です。経営委による番組制作現場への露骨な介入は、放送法に違反する行為です。放送法3条は“番組は何人からも干渉、規律されることがない”と定め、32条は、経営委に3条に抵触する行為を禁じています。番組制作と経営との分離は、日本が侵略戦争に突き進んだ戦前・戦中の反省の上にたった原則です。今回の経営委の行為は、痛苦の教訓に反するものです。

 とりわけ石原経営委員長の姿勢が厳しく問われます。NHKが公表した経営委の「議事経過」によると、石原氏は、異論があったにもかかわらず、経営委の「総意」として、会長への「厳重注意」に踏み切りました。こんなやり方がまかり通ることは大問題です。

 上田会長らNHK執行部は「自主・自律や番組編集の自由が損なわれたことはない」と圧力に屈したことを認めません。しかし経営委のこうした介入が、番組制作現場を萎縮させることは明白です。

「放送支配」を許さず

 今回の問題は、安倍晋三政権下で強まる「放送支配」と無縁ではありません。石原氏は、政権との関係重視が持論で、「政府が右というものを左というわけにはいかない」と述べた籾井(もみい)勝人氏をNHK会長(2017年退任)に選任した張本人です。籾井会長時代に専務理事(放送総局長)を務め、その後、退いた板野裕爾氏を専務理事に復帰させた今年の経営委の人事も、「官邸の意向」とされます。首相に近い高市氏の総務相への再起用も「放送支配」の狙いからです。放送の独立を守る国民の声を広げていくことが重要です。


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