しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年10月29日(火)

主張

受験「身の丈」発言

文科相として資格欠いている

 2020年度からの大学入試共通テストで導入予定の民間英語試験について、地域や経済力で差がつくと懸念が出ている問題で、萩生田光一文部科学相が「自分の身の丈に合わせて」と発言しました。矛盾と問題だらけの新たな仕組みに不安を募らせる受験生らの切実な声に向き合おうとしないばかりか、経済格差などを当然視し、憲法が掲げる教育の機会均等をあからさまに否定する暴言です。こんな言葉を平然と口にした萩生田氏は教育行政トップの資格を欠いています。国民の批判を受け同氏は「陳謝」しましたが、それで済まされる問題ではありません。

差別的な発想そのもの

 萩生田氏の発言は、24日放送のBSフジ「プライムニュース」の中で、民間英語試験をめぐり、お金や地理的な条件で恵まれている人の試験を受ける回数が増えるなど不公平さを指摘する声がある、との司会者の質問に答えたものです。萩生田氏は「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるようなことはあるかもしれないが、そこは自分の身の丈に合わせて」などと主張しました。

 これは“お金のない受験生は、その範囲で分相応に我慢しろ”という前近代的で差別的な発想そのものです。経済格差の固定・拡大を露骨に認める議論です。「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めた憲法26条に真っ向から逆らう暴言という他ありません。

 だいたい萩生田氏の発言は、家庭の経済力の違いなどで、人生の大きな転機といえる大学受験の機会が奪われかねないと心底心配し、危機感を抱く受験生らの苦悩を真面目に受け止める姿勢がありません。地方から民間英語試験を受けに出なければならない受験生についても、「故郷を出て試験を受ける緊張感も大事」などと“精神論”にすりかえました。一連の発言は、教育にたずさわる文科相の資質を根本から疑わせるものです。

 萩生田氏の発言は、受験生の願いに反し、教育の機会均等をゆがめる民間英語試験導入の危険な姿を改めて浮き彫りにしています。いま高校2年生の大学入試から開始予定とされる民間英語試験の深刻な矛盾は解決されていません。

 この仕組みでは、英検、GTEC、TOEFLなど民間事業者が行う七つの資格・検定試験のいずれかを最大2回受験し、成績が各大学に提供されるというものですが、その成績を合否判定に使う大学は全体の6割にとどまります。

 1回の受験料も高いものでは2万5千円を超えることや、試験会場が大都市にしかなく地方の受験生ほど交通・宿泊費の経済的負担が重くのしかかる問題についての抜本的な打開策もありません。文科省は、民間事業者に受験料軽減や会場変更などを求めるくらいの対応しかしていません。実施ありきの姿勢をやめるべきです。

延期と見直しが不可欠

 全国高等学校長協会は、延期と制度見直しの要望を文科省に提出しています。これは教育現場の不安が払しょくされておらず、懸念が高まっていることの反映です。日本共産党などの野党が、民間英語試験の導入延期法案を国会に提出したのは、受験生をはじめ国民の声にこたえたものです。延期と見直しの決断こそ必要です。


pageup