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2019年10月11日(金)

主張

日米貿易協定署名

承認の阻止へ力を合わせよう

 安倍晋三政権とアメリカのトランプ政権が7日、日米の貿易協定に正式調印しました。両国政府は来年1月1日の発効を狙います。安倍政権は開会中の国会での承認を強行しようとしています。

 日米貿易協定は、日本が牛・豚肉や一部の乳製品など、約72億ドル(約7600億円)分の米農産物に対する関税を撤廃・削減することになっており、日本の農畜産業に大打撃を与える中身です。協定の国会での承認を許さず、日本の経済主権・食料主権を守るために、力を合わせましょう。

日本の一方的譲歩が鮮明

 日米貿易交渉は、トランプ政権が12カ国の環太平洋連携協定(TPP)から離脱した後、米国内で日本への農畜産物などの輸出で不利になったとの不満が噴出したため、トランプ大統領が安倍首相に2国間交渉の開始を迫って始めたものです。来年の大統領選を前に、国内の農家などに“有利”な合意を取り付けるのが狙いです。4月の交渉開始からわずか半年足らずで合意しました。

 安倍首相は、日米双方に利益がある「ウィンウィン」の合意だといいますが、正式に署名された協定を見れば、日本が一方的に譲歩し、アメリカだけが「ウィン」の中身であるのは明らかです。杉山晋輔駐米大使とライトハイザー米通商代表の署名式に立ち会ったトランプ大統領も、「農家と牧場主にとって大きな転換点だ」と述べ、米国の農家に大きなメリット(利益)があることを強調しました。

 実際、協定は、牛肉に対する輸入関税を38・5%から最終的に9%まで削減するなど、日本側が大幅に市場を開放します。さらに協定には「米国は、将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求する」とし、今後さらに日本に市場開放を求めることも明記しています。

 日本が農畜産物の大幅な市場開放を認める一方、日本がアメリカに輸出する自動車や部品の関税撤廃は見送られました。日本側の一方的な大幅譲歩が鮮明です。自動車などについては協定の付属文書で、「さらなる交渉を要する」としているだけで、撤廃の保証はどこにもありません。

 安倍首相は国会答弁などで、協定はTPPの枠内に収まったかのように主張しています。しかしTPPはもともと、輸出大国や多国籍企業に有利なルールづくりで、その枠そのものが重大なものです。しかも今回の協定を見れば、アメリカからの牛肉の低関税での輸入枠を実質的に拡大するなど、「TPP超え」は明白です。文字通り、日本の農畜産業などにとって“売国”の協定です。

日本の農家の不安は深刻

 日本農業新聞(4日付)が報道したモニター調査では、日米貿易交渉の合意は「米国に有利な結果になった」が66・3%と3分の2に近く、「日本に有利な結果となった」は1・1%しかありません。日本の農業への影響が「強まる」が78・9%に上ります。農家の不安は深刻です。

 今回の協定発効後、投資や金融の自由化を含む「第2段階」の交渉を行うことも、9月末の日米首脳会談で合意しています。日米貿易協定の国会承認を阻止するとともに、自由貿易協定(FTA)につながる包括的な交渉に反対する世論と運動が急務です。


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