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2019年10月10日(木)

ノーベル化学賞 リチウムイオン2次電池

PC・携帯電話の爆発的普及可能に

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吉野さんが開発したリチウムイオン電池のしくみ(スウェーデン王立科学アカデミーの資料から)

小型で軽量 充電が可能

 今年のノーベル化学賞は、吉野彰旭化成名誉フェローら3氏に贈られることが決まりました。授賞対象となったリチウムイオン電池は現在の私たちの生活に不可欠な存在です。

 電池には、充電できない1次電池と、充電が可能な2次電池があります。1990年代のノート型パソコン、ビデオカメラ、携帯電話などの爆発的普及を可能にしたのは、小型軽量の2次電池の実用化でした。

 80年代当時、2次電池として使われていた鉛電池やニッケル・カドミウム蓄電池、開発中だったニッケル水素電池は、電解質に水を使います。このタイプの電池は、水が電気分解する電圧より小さい1・5ボルト程度しか取り出せないという原理的な限界があり、小型軽量化の弱点となっていました。

 一方、電解液に水を使わない金属リチウム1次電池はすでに商品化されていたものの、2次電池化には性能や安全性の問題で障害がありました。

 そこで出てきたのがリチウムイオン電池。その登場は、その後の社会に大きな影響を与えました。

電極の材料 新素材工夫

 開発のカギは、マイナス極に炭素、プラス極にコバルト酸リチウムという新しい組み合わせの電極材料を採用したことでした。充電時にはリチウムイオンがプラス極から放出されてマイナス極に取り込まれます。放電ではその逆反応が起こります。リチウムイオンがプラス・マイナス極を行き来することで電気エネルギーを蓄積・放出するしくみです。

 コバルト酸リチウムがプラス極の材料になることは80年ごろ、英オックスフォード大学で材料研究をしていたジョン・グッドイナフ氏が発見しました。

 吉野氏は、マイナス極の材料としてポリアセチレンに注目。コバルト酸リチウムと組み合わせて2次電池として作動することを確認しました。ポリアセチレンにはいくつかの欠点があったため、新しいマイナス極材料を探索。ある炭素材料を使えば長時間安定的に動作することをつきとめました。その後も、電池の構造や電極の形状などさまざまな工夫を加えました。

 90年代には、4ボルト以上の起電力をもつ小型軽量のリチウムイオン電池が実用化され、電子機器などに使われるようになりました。電気自動車やハイブリッド自動車の動力源などにも用途が広がっています。また太陽光・風力発電など発電量が変動する自然エネルギーの利用に重要な蓄電装置としても、大きな可能性が期待されています。(中村秀生)


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