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2019年9月29日(日)

高知沖 米軍機墜落事故

能力欠如黙認し訓練

著しい安全軽視/沖縄でも事故

報告書公表

 2018年12月5日未明に高知県沖で米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18D戦闘攻撃機とKC130空中給油機が空中給油訓練中に衝突・墜落した事故をめぐり、米海兵隊はこのほど、事故報告書を公表しました。そこから浮かび上がったのは著しい安全軽視、モラルハザード(倫理欠如)とも言うべき、米軍のズサンな実態です。

偽って資格得る

 事故は、給油を終えたFA18Dが状況認識を失い、給油機の左側から右側へ位置を変えようとした際、給油機の後部に衝突し、両機とも墜落。FA18Dの乗組員2人は緊急脱出し、1人が死亡。給油機の乗組員は5人死亡という大惨事でした。

 空中給油は給油機と平行して高速で飛びながら給油管を接続するもので、高度な技量が要求されます。夜間に行えば、さらに難度が上がります。16年12月に沖縄県名護市沖で発生したMV22オスプレイ墜落も、夜間の空中給油訓練で発生したものでした。

 報告書によれば、FA18Dの飛行士は空中給油の資格を得るために、給油管の接続を6回行う必要があるのに、1回しか行っていませんでした。それでも教官は資格を与えていたとしています。

 さらに、365日以上夜間の給油実績がなければ資格が消滅しますが、この飛行士は517日間行っていませんでした。また、過去90日間で60飛行時間が必要とされていましたが、13飛行時間にとどまっていました。

 しかし、飛行士はその事実を部隊に報告しませんでした。その結果、高知県沖で暗闇の空中給油訓練を初めて経験。報告書は、飛行士が「(本来)夜間空中給油を行う資格がなかった」ことが事故の主要な要因だとしました。

 加えて、もう1人の乗組員は飛行中、催眠薬を服用しており、判断能力が低下していたことも発覚しました。所属部隊(第242海兵全天候戦闘攻撃中隊)の上官は、こうした能力欠如や薬物摂取をまともにチェックせず、見落としました。

 さらに、同部隊が3年前の16年4月28日、沖縄県の嘉手納基地上空付近で、同様の事故を起こしていたことも明らかになりました。

 今回と同じFA18DとKC130が夜間の空中給油で接触事故を起こし、機体が損傷。「クラスC」(損害額5万ドル以上50万ドル未満)に該当する事故でしたが、部隊は損害額を低く評価し、報告を怠っていました。事故の調査も行われませんでした。報告書はこの時、きちんと調査していれば「将来(今回)の事故を防げていた」と指摘しています。

 こうした経過をみると、事故は起こるべくして起こったといわざるをえません。また、報告書は飛行士やその所属部隊だけに責任を押し付けており、構造的な背景には切りこんでいません。

地位協定改定を

 米軍機は日米地位協定に基づいて日本の上空を自由に飛び回り、地位協定上、認められていない空域ですら、「安保条約の目的達成のため」として飛行が容認されています。今回の事故は海上で発生しましたが、地上で発生しない保証は何らありません。地位協定の改定は急務です。


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