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2019年9月21日(土)

マルクスの学説 到達点鮮明に

新版『資本論』刊行記念講演会開く

志位氏あいさつ 不破氏が講演

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(写真)新版『資本論』刊行を記念し、講演する不破哲三党社会科学研究所所長=20日、東京都新宿区

 日本共産党中央委員会社会科学研究所が監修し、30年ぶりに全面改訂した新版『資本論』(新日本出版社)の刊行記念講演会が20日、党中央委員会と新日本出版社の主催で東京都内で開かれました。志位和夫委員長が党中央を代表してあいさつ。不破哲三・社研所長が新版の特徴と意義を「『資本論』編集の歴史を踏まえてマルクスの学説の到達点を鮮明にした」と語りました。

 志位氏は新版について、1980年代に刊行された訳書から30年間に、マルクスの残した膨大な草稿の主要な部分が日本語訳で刊行されるなど新しい条件が生まれたもとで、エンゲルスの編集の問題点も検討し、訳語・訳文・訳注の全体にわたる改訂を行ったと語りました。

 志位氏は「新版の刊行によりマルクスが到達した理論的立場の全体像が奥行きをもって立体的につかめるようになった」と強調。一例として、党綱領が、当面する経済の民主的改革として掲げる「ルールある経済社会」づくりを挙げ、「『資本論』には綱領のこの方針の基礎となる大事な解明が随所にちりばめられています」とのべ、資本は最大の利潤を上げるためには労働時間の最大限の延長を追求すること、これを食い止めるには社会による「強制」によって労働時間を規制するしかなく、資本の民主的規制が避けて通れないと述べている(第一部「労働日」の章)ことなどを詳しく紹介しました。

 志位氏は、マルクスの資本主義観と革命観を大きく変えた「恐慌の運動論」の発見がエンゲルスの編集では利用されなかった問題があったが、新版では、マルクスの恐慌論の到達点の全体が読めるようになったことや、未来社会論の核心部分を語った論述についてしかるべき位置に移し、その意義が明瞭になるようにするなど、「新版『資本論』のもつ意義はきわめて大きい」と語り、「マルクスを学び、研究する多くの方々がぜひとも新版を活用していただきたい」と呼びかけました。

 不破・社研所長は、まず、マルクスが最初の草稿にかかってからエンゲルスの編集で最後の巻が出るまでの37年間の歴史を紹介、その間、マルクスの構想に大きな転換が起こったことを解明しました。この転換の中心点は、資本主義の没落のとらえ方にかかわるものです。

 それまでマルクスは、利潤率の低下が恐慌を引き起こし革命を必然とするという理論に立っていたが、1865年、『資本論』第二部の草稿執筆に取り組む中で、恐慌が別の仕組みで起こることを発見。そこから、『資本論』の新たな探究が始まり、資本主義の搾取と抑圧のもとでの労働者階級の成長とたたかいこそが資本主義没落の推進力となるという新しい没落論を展開したのでした。

 続いて不破氏は、悪条件のもとで、残されたマルクスの草稿から『資本論』第二部、第三部の編集にあたったエンゲルスの活動を振りかえり、苦闘の様子を紹介しながら、そこに歴史的限界が残されたことを率直に指摘し、エンゲルス編集の問題点を解決したところに新版『資本論』の重要な意義があると強調しました。

 不破氏が指摘した問題点の第一は、マルクスが1865年に恐慌の運動論を発見し、利潤率の低下が恐慌と革命を生み出すという「没落論」を過去のものにしたことに気づかず、古い「没落論」を第三部にそのまま残したことです。

 不破氏は、エンゲルス編集に残されたその他の点にもふれながら、これらについて訳注でマルクスの理論的到達をより鮮明にしたと報告。「その立場で翻訳・編集した『資本論』新版の刊行はこれまで世界に例がないものだが、これをやり遂げることは、マルクス・エンゲルスの事業の継承者としての責任・義務であると考えてこの仕事にあたってきた」と結んで大きな拍手をあびました。

 萩原伸次郎・横浜国立大学名誉教授が「21世紀のいま、なぜ新版『資本論』を学ぶのか」を語り、山口富男・社研副所長が大幅に増えた訳注などを具体的に紹介しました。


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