しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年9月20日(金)

東北で呼びかけた学生たち

フラワーデモ 思いつなげて

絶望のなか一輪の希望

 相ついだ性暴力の無罪判決をきっかけに、性暴力をなくそうと全国に広がっているフラワーデモ。東北では学生が中心になって行動しています。仙台市と青森県弘前市で呼びかけた学生の思いを聞きました。(前田智也)


性暴力なくそう 広がる開催地

写真

(写真)青森県弘前市で9月11日

 フラワーデモが最初に呼びかけられたのは、4月11日のことです。性暴力に関わる不当判決が相次いだことに抗議して、東京と大阪で緊急開催。賛同や連帯の声が大きく広がりました。それ以後、デモは毎月11日に行われるようになり、行動は全国へと広がっています。

 毎月、開かれる都市が増え続けています。5月は3都市、6月は9都市、7月は14都市、8月は18都市、9月は21都市で呼びかけがありました。この他にも、ツイッター上では個人や少数でフラワーデモに取り組んだという報告がいくつもあがっています。

 フラワーデモの参加者は手に花を持ったり、花柄の服やアクセサリーを身に着けたりして性暴力は許さないとアピールしています。静かにスタンディングをしたり、参加者がマイクを握ってスピーチをしたりと、デモの様子は開催する場所によってさまざまです。

写真

(写真)仙台市で6月11日

 東京駅近くで行われているフラワーデモでは、集まったひとたちが輪になり、前方の人は座り込んで、小さい声で自身の性被害体験を告白する参加者の訴えをじっと聞いています。

 さまざまな立場の人も参加しています。日本で初めてのセクハラ訴訟を担当した弁護士の角田由紀子さんも7月に初めて参加。「若い人が多くて感動しています」とのべ、刑法改正はもちろん、法律の運用のされ方も見張っていきたいとスピーチしました。

 性犯罪に関する刑法をめぐっては2017年、性犯罪被害者や支援者などの声を受けて110年ぶりに改正されました。強姦(ごうかん)罪の構成要件の見直しをはじめ、性暴力のない社会へ向けて歩を進める内容が盛り込まれましたが、「暴行・脅迫」要件の撤廃は見送られるなどの課題も残されました。改正法には「3年後の見直し」が盛り込まれています。

 8月に行われた東京のフラワーデモでは、呼びかけ人の一人で作家の北原みのりさんのメッセージが紹介され、見直しを求めて引き続きフラワーデモを続けていくと表明しました。

自分の被害思い出す。でも私は一人でない

青森 弘前大4年の女性(23)

写真

(写真)弘前大4年の女性

 私は、数カ月前まで性暴力の無罪判決が続いていたことも、フラワーデモが全国に広がっていることもまったく知りませんでした。知った時も、デモはなんとなく怖いイメージがありましたが、手に花を持ってアピールしているので、想像しているよりも温かい場所なのかな、一度は見てみたいなくらいに思っていました。青森では呼びかけがなかったので、ネットでフラワーデモの様子を見ました。参加者の訴えを聞いていたら、私自身の性被害も思い出してしまい、体調を崩してしまいました。

 さらに衝撃を受けたのは、私は医学部なのですが、医療現場で2次被害にあってしまったという訴えを聞いたことです。いつか私も、無意識のうちに加害者になってしまうかもしれない。これはひとごとではないと考えました。

 思い切って8月に、仙台でのフラワーデモに参加しました。すごく元気と勇気をもらいました。青森でも、全国で同じ日に行動したい。たとえ一人でも行動しようと決めて呼びかけました。当日は、想像以上に来てくれてうれしかったです。

 アメリカにある大学の医学部へ留学していた時に、日本人学生からセクハラを受けました。そのことを留学先の先生に打ち明けたら、私が安全に過ごせる環境にすることを一番に考え、守ってくれました。被害を受けたことは悲しいことでしたが、日本とこんなにも対応が違うのかと驚く体験でした。

 日本も性や人権についての教育をしっかりしてほしい。いま振り返っても、性被害を受けた時に知っていればと思うことがたくさんあります。知識があれば、泣き寝入りせずに怒ることもできます。

 今も、フラワーデモを通じて性被害の実態を知ってほしいという気持ちと、知り合いが通らなければいいなという気持ちがぶつかっています。でも、私は一人ではないと分かったので、自信をもってやっていきます。フラワーデモは、絶望のなかの一筋の希望です。

つらい時もある。けど誰かが行動しないと

仙台 東北大2年の益子実香さん(19)

 性暴力に対する無罪判決が続いたころ、毎日がつらくて一人で泣いていました。しばらくしてから、東京などでフラワーデモというアクションが広がっていると知りました。すごく行きたかったけれど仙台からは遠かったし、近くでは呼びかけがなくて行けませんでした。

 東北で誰もやらないなら私がやろうと、6月にツイッターで呼びかけました。以前から社会問題には関心を持っていましたが、デモに参加したことは一度もありませんでした。

 最初は、デモを呼びかけるなんてハードルが高いし、やってどうなるのかな、という思いもありました。家族からも心配されましたが、誰かが行動しないと変わらないと思って決断しました。

 顔や名前を出して呼びかけたので、ネットなどである程度の批判を受ける覚悟をしていました。ところが、実際にやってみると応援や賛同の声をたくさんもらいました。友だちも「あなたがやるなら協力するよ」と参加してくれたし、SNSで拡散してくれました。

 フラワーデモを呼びかけた後、とても仲の良い友人から「私も実は…」と性被害を初めて打ち明けられました。身近に性被害にあった人がいたなんて知らなかった。あらためて、ぜったいに許せないと思いました。

 今も、フラワーデモの前後は食事がとれないくらい心が疲れてしまいます。それでも、同じ思いを持った全国の人たちとつながれてうれしい。デモはもちろん、さまざまな取り組みを通じて刑法の改正など社会を変えていきたいです。

 日本の性被害やジェンダーについての認識を世界と比べると、日本にいることがつらくなる時もあります。でも、どの国も行動した人がいたから変わったと思う。日本もきっとできる。みんなで頑張りましょう。


pageup