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2019年9月19日(木)

戦争法 強行から4年

「いずも」空母化で危険な段階へ

“中国シフト”に踏み出す

 4年前の2015年9月19日、圧倒的な国民の反対世論を踏みにじって強行された安保法制=戦争法は、「いずも」型護衛艦の「空母化」を中心に、“中国シフト”ともいえる危険な段階に入ろうとしています。

 1950年の朝鮮戦争以来、日米同盟強化・軍拡の口実になってきた「北朝鮮脅威」論。安倍政権はこれを最大限利用して、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」や安保法制を強行してきました。2017年から18年にかけて行われた米艦・航空機に対する「武器等防護」は、大半が北朝鮮の警戒・監視に従事していた米軍に対するものとみられます。

 しかし、昨年6月の歴史的な米朝首脳会談で情勢が激変。米軍も北朝鮮に対する常時警戒態勢を解いており、米韓合同演習も大幅に縮小しています。

脅威の口実崩れ

 「北朝鮮脅威」という最大の口実が崩れる一方、安保法制強行と同じ15年に就役したヘリ搭載型護衛艦「いずも」が危険な動きを強めています。

 防衛省は20年度概算要求に、F35Bステルス戦闘機の発着を可能にするための改修費31億円を計上。実質的な「攻撃型空母」への転換です。「いずも」は20年度、2番艦の「かが」は22年度の着工ですが、自衛隊へのF35B導入は24年度以降です。防衛省はその間、米軍のF35Bが先行使用する可能性を認めています。

 しかも、岩屋毅防衛相(当時)は日本共産党の宮本徹議員に対し、安保法制の発動要件である「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」で、「いずも」から米軍F35Bが空爆に出撃する可能性は「排除されない」と明言しました。(3月8日、衆院安保委員会)

 「いずも」は17年、南シナ海などインド洋へ2カ月以上におよぶ長期航海を実施。18年には「かが」、今年は「いずも」が実施しています。安倍政権が中国の海洋進出を念頭に打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」戦略の一環です。

悪循環を高める

 「いずも」はすでに南シナ海で米軍ヘリの発着訓練を行い、今年は「自衛隊版海兵隊」=水陸機動団を搭乗させて、米原子力空母ロナルド・レーガンとの共同訓練を行っています。今後は、インド洋へ定期的に展開している沖縄の第31海兵遠征隊(31MEU)と共同訓練を行い、同部隊の米海兵隊F35Bが発着する可能性は否定されません。

 これらは事実上、米軍が南シナ海などへの中国軍の進出をけん制するための「航行の自由」作戦の一端を担っており、「軍事対軍事」の悪循環を高めるものです。

米国からは“貢献足りない”

改憲で突破狙う首相

 安保法制=戦争法の本質は、集団的自衛権の行使容認で海外での武力行使を可能にするなど、「平時」から多国籍軍参加にいたるまで、あらゆる事態で「切れ目なく」、日本を米軍とともに「海外で戦争する」国にすることです。

図

 強行成立から4年、施行から3年半が経過した時点で、すでにいくつかの分野で具体化が進んでいます(表)。この中で、実際に任務付与されたのが、米艦や米軍機を「防護」する「武器等防護」です。17年は2件、18年は16件と急増。また、南スーダンPKO(国連平和維持活動)派兵では、襲撃された国連関係者などを救出する「駆け付け警護」などを任務付与。「正当防衛」から「任務遂行」へと武器使用の要件を大幅に拡大し、自衛隊が「殺し・殺される」危険が最も高まりました。安倍晋三首相は、安保法制に基づいて日米同盟における自衛隊の役割・任務分担や活動範囲が拡大したことで「日米同盟はかつてなく強固になった」と繰り返してきました。

 ところがトランプ大統領は6月30日、大阪市内での記者会見で、「日米安保条約は不平等だ」「安保を変えるべきだ。半年間、彼(安倍首相)にそう話してきた」と表明。これに先立ち、トランプ氏は「米国が攻撃されても、日本はソニーのテレビで見ているだけだ」などと述べ、日本政府に激震が走りました。

 首相は6月30日夜のインターネット番組で、「自衛隊と憲法との関係で日本は何ができるか、初めて会ったときから説明している。平和安全法制で日米は助け合うことができるようになった」と述べました。裏返せば、安保法制の“意義”を訴え続けてきたものの理解をえられず、「貢献度が全く足りない」と突き返されたことを意味します。同時に首相の発言は、憲法を変えれば、さらなる「貢献」が可能になることを示しています。

 安保法制は歴代政権が憲法上、禁じてきた集団的自衛権の行使を容認し、憲法上、一線を画してきた「戦闘地域」での活動も容認。戦後最悪の違憲立法ですが、それでも憲法9条の制約を完全には乗り越えることができませんでした。

 憲法を変えて、海外で自衛隊が米軍とともに「血を流す」国にするのか、野党連合政権の実現で安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻すのか―。重大な岐路に立っています。


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