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2019年9月17日(火)

消費税10% 被災地直撃

宮城・石巻 商店主ら怒り 中止こそ

複数税率対応レジ導入は無理

 東日本大震災で大きな被害を受け、復興途上でふんばる宮城県石巻市の立町・アイトピア通り商店街―。そこにのしかかろうとするのが消費税率10%への引き上げ、「複数税率」やポイント還元など複雑な制度変更です。「いま10%は厳しい」「増税は弱い者いじめだ」「複数税率に対応するのは難しい」。商店主たちからは混乱への不安と怒りの声が上がっています。消費税増税は中止するしかありません。(松浦裕輝)


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(写真)消費税増税の影響について話す(右から)「プロショップまるか」社長の佐々木正彦さんと共産党の三浦一敏県議=11日、宮城県石巻市

 旧北上川と並行した通りにある「プロショップまるか」。金華サバやサワラ、秋サケなど地元の市場で水揚げされた新鮮な海産物が並んでいます。「真ん中のサケが良いから見ていって」と、飲食店の仕入れや買い物、食事に訪れるお客さんと気さくに言葉を交わす社長の佐々木正彦さん(67)は「うちは地元でとれた季節の魚を大事にしている」と話します。

値上げできない

 刺し身定食や総菜、日替わり弁当なども販売しており、店内のスペースで食事をすることができます。佐々木さんにとって頭の痛い問題は「複数税率」です。食料品にかかる消費税は8%。店内での食事や宅配の送料には10%がかかります。レジでの対処は「難しい」と複数税率対応レジの導入は考えていません。「うちで食事をするのは昔からのお客さん。値上げもできない」。増税されても値段を据え置くことを決めました。

 日本商工会議所が5~6月に行った調査では、小規模な事業者ほど増税後の価格転嫁が難しく、複数税率対応レジの導入なども進んでいないことが明らかになっています。

収入減を“覚悟”

 「まるか」では震災当時、近くの旧北上川から押し寄せた津波が店舗の天井まで到達し、冷凍庫などが全て流されてしまいました。廃業も考えましたが、救援物資が届かない近隣住民のため3カ月後には店を再開。新たに借金をして設備をそろえ、毎日、仙台の市場へ向かいました。「『何でもいいから売ってくれ』という声に、何かしないといけないと思った」

 震災後、取引先の多くは廃業し、赤字が続いています。増税後の値段据え置きで収入減になることを“覚悟”。佐々木さんは「お客さんの迷惑にならないようにやれることはやる」と言います。

増税 商店から足遠のく

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(写真)数多くの商品はすべて内税で値札が貼ってあるため増税後は「貼り替えが必要」と語る社長の田代正夫さん=11日、宮城県石巻市

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(写真)商店街にはあちこちに石ノ森章太郎作品のモニュメントが並ぶ=11日、宮城県石巻市

 石巻駅から旧北上川へ向かう車道を挟み、衣料品店やかまぼこ屋などが立ち並ぶ立町・アイトピア通り商店街。旧北上川中瀬にある石ノ森章太郎の萬画館へ続く「石巻マンガロード」として「サイボーグ007」などのモニュメントが商店街のあちこちに設置してあります。

 復興住宅や商店を併設した大型マンションが新たに建設されています。一方、震災で廃業しさら地になった空き地や店舗の内外にはられた津波到達を示す標識が被害の大きさを物語っています。

レジ導入20万円

 「再開したときは外灯もなくて寂しかったけど、最近は整備されてきた」と話すのは、旧北上川近くで割烹(かっぽう)料理屋を営む井上隆夫さん(46)=仮名=。昼時には魚の焼ける良い匂いが店外に流れます。持ち帰りもある井上さんの店では、複数税率やキャッシュレス決済に対応したレジを導入。掛かった費用は約20万円。補助金があるとはいえ大きな出費です。

 井上さんは「(複数税率が)どういう場合に適用されるのか難しい。店内で会計した後に持ち帰るから2%返してと言われたら困るし…」と不安を口にします。空き時間をみてスタッフとともにレジ打ちの練習やお客さんとのやりとりのシミュレーションをしています。売り上げへの影響や税務処理など不安は尽きません。

店が手数料負担

 釣り具から日用品まで多数の商品を取り扱う「田代釣り具店」の社長の田代正夫さん(68)は、レジの買い替えや価格表示について「考えてはいるけど全然対応していない」と言います。津波でがれきや車が押し寄せ、商品がすべて流されましたが、「食べる魚を釣るため」にすぐに店頭で魚のエサの販売を再開。「最近また景気が悪くなってきた。そういうときに10%になるのは厳しい」

 安倍晋三首相が消費税増税への「十二分な対策」として打ち出す景気対策の一つが、キャッシュレス決済へのポイント還元です。来年6月までの期間限定で、中小店舗でクレジットカードや電子マネーで買い物をした決済額の5%分がポイントで還元されます。

 老舗洋服店の専務の女性(73)は「財布が固くてぜいたくできないから(ポイント還元は)関係ない」とばっさり。ポイント還元の申請やキャッシュレス決済の端末を変更する手続きは「非常に複雑で手間がかかる。クレジットカード決済では店側の手数料負担がある」と怒りをあらわにします。

 売り上げが震災前を超えることはないといいます。「仕入れ先を探すのもゼロから。お得意さんも苦労してつくってきた。(増税で)値引きするときのダメージが大きくなる。弱い者いじめだと思う」

 日本共産党の三浦一敏県議は「石巻は復興住宅やマンションが完成し、観光客も増えている。これからというときに増税では商店から足が遠のく。消費税10%増税は中止すべきだ」と話します。


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